第10話エマと給料日②
【エマと給料日②】
普段乗っているのとは違う予備のトラックで帰ってきた俺達は車を取りに行く為メインのトラックで戻ってきた。
【あのちっちゃいトラックがエマのだからなあれも持っていくぞ】
『わたしの?』
【そうだあれは前に俺が乗ってたやつなんだけどな】
『わたしのトラック……? あんなに格好いいものが、本当に私のものなのですの……!?』
エマはパッと顔を輝かせ、予備車置き場の端に停められている。かつて俺が相棒として乗り回していた2トントラックを穴があくほど見つめた。
「ああ、そうだ。公道を走るのは免許を取ってからだが、敷地内なら練習し放題だからな。後で運転を教えるよみっちりな」
『まぁ……! 達吉さん、ご冗談ではなくて!?』
「これが鍵だ冗談じゃないぞ早く免許取って乗れる様なってドライバーとしても仕事してくれよ」
俺はメインのトラックから降り、キーホルダーのついた鍵をエマへ手渡した。
受け取ったエマは、まるで価値ある宝玉でも扱うかのように両手で大事そうにそれを抱え込み、胸にぎゅっと押し当てた。
『うふふ……私の……私だけの……トラックですのね……!』
「よし、じゃあ車の後ろについてこい……と言いたいところだが、お前は助手席な。乗用車の方は俺が後で取りに来るから、まずはこの2トントラックを俺たちの家まで持っていくぞ」
『はいっ! 喜んでお供いたしますわ!』
先ほどまで教習所で落ち込んでいた様子はどこへやら、慣れた手つきで助手席のドアを開けて乗り込んだ。
「よし、じゃあエンジンかけるぞ」
俺が運転席に乗り込み、キーを回すと、かつての相棒だった2トントラックのエンジンが「ビトビトン!」と快音を立てて目を覚ました。
『きゃ……! メインのトラックとはまた違う、少し軽やかで心地よい振動ですわね!』
「だろ? こいつは小回りが利くし、扱いやすいんだ。エマが練習するには持ってこいだぞ」
『ふふん、任せておきなさい! すぐに乗りこなしてみせますわ!』
得意げに胸を張るエマを横目に見ながら、俺はギアを入れ、ゆっくりとアクセルを踏み込んだ。
街並みを、小さめの相棒とともに自宅の屋敷へと向かって走らせる。助手席で嬉しそうに窓の外を眺めるエマの横顔は、すっかり機嫌を取り戻していた。




