コミック3巻 発売記念SS 眠り姫
『婚約破棄された無表情令嬢が幸せになるまで〜勤務先の天然たらし騎士団長様がとろっとろに甘やかして溺愛してくるのですが!?〜③』
講談社KCx様より08/28日に発売しました!ぜひお手に取ってくださいね♡
↓に表紙とコミックの公式様のリンクが貼ってあります!
心地よい陽気に包まれた午後。
休暇をもらったセリスは、騎士団内の中庭にあるベンチに腰掛けながら、買ったばかりの本を読んでいた。
(うーん、眠い……)
手元にあるのは、巷で人気の恋愛小説だ。
内容は大変面白い。
しかし、昨夜は団員たちに夜食を作り、そのせいで寝不足に至ってしまったセリスの眠気は限界だった。
(こんなところで寝ちゃダメなのに……)
栞を挟む間もなく、本をパタンと閉じたセリスは抗えようのない眠気に目を閉じる。
(小説の主人公の想い人、とても素敵な人だった、な……。優しくて格好良くて、少し意地悪で、まるで、ジェドさん、みたい……)
昨夜にも顔を合わせたはずなのに、彼を思い浮かべると、もう会いたくなってくる。
(ジェドさん……)
しかし、そんな願いとは反して、心地よい気温と肌を撫ぜるようなそよ風に誘われるように、セリスはゆっくりと眠りに落ちていった。
◇◇◇
(私、あのまま寝ちゃってた……? )
ぼんやりとした思考のまま目を薄っすらと開いたセリスだったが、次の瞬間、自身の身体が横に倒れていることに気が付いた。
(あれ? 私ベンチに座ったまま寝てたんじゃあ)
しかも、自身の頭の下には、硬いもののベンチとは違う感触を感じる。
どういうことだろうと顔の向きを真上に向けると、そこには思いもよらない人物の顔があった。
「お、起きたのかセリス。おはよ」
「ジェ、ジェドさん!?」
驚きのあまりセリスは勢いよく体を起こす。
どうやら、気づかぬうちにジェドに膝枕をされていたらしい。
「はは、慌て過ぎだろ」
「あっ、慌てないほうがおかしいです! それよりどういう状況ですか!? どうしてジェドさんが私に膝枕を!?」
「訓練の後に偶然ここを通ったらセリスがベンチでうたた寝してたから、このままじゃあ首痛めるだろうなと思って体を倒した。んで、そのままじゃ寝づらいだろうなと思って膝を貸した。納得したか?」
ニヤッと笑いながら説明するジェドに、セリスの赤く染まっていた顔はみるみるうちに青くなっていく。
膝枕をしてもらい、また寝顔も見られてしまったという羞恥よりも、迷惑をかけてしまったという申し訳なさが上回ったからだ。
「すみません! なんて多大な迷惑を……」
「いや、俺が勝手にしただけだから気にすんなよ。けど、こんなところで寝るのは関心しねぇな。風邪を引くかもしれねぇし、それにいくら良い奴らばかりとはいえ、ここは男所帯だから。分かったか?」
「はい。以後気を付けます……」
「ん、ならいい」
ジェドはそう言うと、おもむろに立ち上がり、凝り固まった体をほぐすように両手を伸ばす。
それから、その手でセリスの頭をひと撫ですると、今度は腰を丸めて顔を近付けた。
「それに、良いもん見れたからな」
「? 良いもの?」
「寝言で俺の名前を呼ぶ可愛いセリス」
「へ!? う、うそっ」
「ほんと。何回も俺の名前呼んでた」
今度はまたもや、かあっと顔が赤くなる。
眠る直前、ジェドのことを思い浮かべていたことははっきり覚えているが、まさか寝言でさえ彼の名を口にしているなんて夢にも思わなかったから。
「いや、それはその」
しどろもどろになり、うまく話せないでいるセリスに、ジェドはふっと柔らかく笑う。
そして、彼女の耳元に顔を近付けて囁いた。
「寝言で俺の名前呼ぶぐらい、俺に会いたかったのか?」
「〜〜っ」
「ふ、可愛い奴。……ちなみに、俺はいつでもセリスに会いたいよ」
「もも、もうご勘弁を……!」
「はは」
その日以来、セリスはしばらくの間、そのベンチに近づくこともなかった。
ベンチを遠目に見るたびに過剰に反応し、顔を赤くするセリスを見て、ジェドは密かに口角を上げ楽しんでいたとかいないとか。
お読みいただきありがとうございました!
ぜひ書籍版&コミックスもよろしくお願いいたします(*´ω`*)




