ASTONISHMENT
朝、再び庭に集合。
「お早うございます。今日は酒呑童子の所にバトルしに行きます。
同行は小梅と紫丹さんです、それ以外の人は屋敷で待機しつつ爺ちゃんと
婆ちゃんの護衛をよろしく。」
「あの、カエデ様、その人数で大丈夫でしょうか?」
「少数精鋭ってやつだよ。酒呑童子は鬼の頭みたいなものだから、部下の
鬼達はまるっと無視して直行しようと思ってさ。隠密に長けた人を
人選したんだよ。」
「カエデ様自ら戦うんですか?」
「そうだね、夕霧との約束もあるし、まあなんとかするよ。夕方には戻るよ。」
僕達は屋敷を出て、タチバナの隠密が調べ上げた酒呑のアジトへ向かった。
移動しながら作戦会議。
「小梅は茨木童子の相手をして。」
「うん。」
「童子切があれば楽なんだけど、今はないから、まずは話をしてみるよ。
紫丹さんは臨機応変に動いて下さい、光学迷彩は使えます?」
「ええ、使えます。」
「朧は?それと武器は?」
「朧も使えます。武器は長刀です。」
「了解です。光学迷彩と朧の併用で、完全に消える事ができます。」
「本当ですか?やってみます。」と言って、完全に消えた。
「できてますよ。」
姿を現し、「ちょっと、怖いですね。」
「そうですね、暗殺者に知られるとまずい方法ですので、いざという時
以外は使わないで下さい。今回は使いまくりますけど。」
「わかりました。」
アジトに着いた。「ミッションスタートです。」
僕達は光彩(改)を発動しアジトに踏み込む、いつも酒を飲んでるので匂いを
辿れば、あっという間に酒呑のいる広間だ。堂々と入っても誰も気づかない。
すげー光彩(改)。
予想通り茨木童子と、これは予想外紅葉までいる。
僕は酒呑の前で姿を晒し、片手を上げて挨拶。
「やあ、酒呑。久しぶりだ。」
突然、大剣を横にないだ。それをかわして夕霧で吹き飛ばす。
茨木と紅葉の間を通って壁にぶち当たる。
茨木は小梅に踏まれて、首に爪刃を突き付けられてるし、紅葉も紫丹さんに
長刀を首に当てられていて動けない。
「いてて・・。やるなクソガキ!」
酒呑の身体の赤色が濃くなった、パワーアップだ。ったく、これだから脳筋は!
マテバ、銀弾6発をくらえ!
「いてて!卑怯だぞ!飛び道具は!」
「うっさい!脳筋!」 なんか面倒になってきた。
「デル君。」
「イエス、マスター。」銀貨3枚チャージ。チュイーン。
「雷弾!」
「あばば・・。」
「睡眠弾!」ドンドンと茨木と紅葉を眠らせる。
おっ!酒呑が痺れてるのに動こうとしてる、さすが脳筋!
「小梅!」 梅ビヨの黒い雷は一味ちがうぜえ!
「あばばば・・・。」
「あはは、なんか骨が透けて見えたよ。」
プスプス煙を上げて酒呑が倒れる。この程度で死ぬタマじゃない。
念話で「いいかげん気づけよ!僕だ、斑鳩だ。」
酒呑は起き上がり胡坐をかいてって・・・雷2発でちょっと痺れた程度かよ!
「んっ?斑鳩だと?どこだ!斑鳩!」とキョロキョロしてる。
僕は自分を、指差した。
「ぶっ、ぶわっははは、ぎゃはははは、なんだそれは!ぐわっははは!」
笑い転げている、なんか頭にきてグレイスFJ弾を6発お見舞いする。
「いててて、悪かった悪かったって!」
やっと、落ち着いて話ができる。料理長に用意してもらった酒を渡す。
「昨日、夏月に会ってきたよ。元気そうだった。」
「そうか、あいつも封印、解かれてたのか・・。」と言って酒をあおる。
「うめえな、これ!」
茨木と紅葉にも渡す。あと、おつまみもだす。
茨木は鬼なのだけど、パッと見は僧侶かなにかに見える優男で、湯豆腐が
大好きなので渡すと喜んでいた。紅葉にはプリンを、甘い物が好きなので
喜んでたし、子供が大好きで僕を膝の上に座らせ頬ずりしてる。
ここにも・・・ドミニク3号だ。
「斑鳩、一人できたのか?」と今更な事を聞いてきた。
「いや相方の小梅と、タチバナに仕えている紫丹さんとだ。」
酒呑は盃を落とし、ワナワナ震えだした。
「どうした、酒呑?」
突然立ち上がり、紫丹さんの前へ行くと、片膝をついて右手を差出し
「ずっと前から好きでした、必ず幸せにします。ぼっぼくと結婚して下さい。」
とプロポーズ・・ああ、こういう奴だったよ、だから零さんと百合子さんを
連れてこれなかったんだ。紫丹さんは顔を真っ赤にしてる。そりゃ怒るだろ、
初対面で結婚を申し込むなんて・・普通はまずは友達からとかなんとか
段階をふんでだな・・
「・・・はい、喜んで・・。」
「「「えっー!」」」 これには全員驚いた。
「いやいやいや、紫丹さん。酒呑は悪い奴じゃないけど見ての通り脳筋で
脳みそ筋肉だよ!しかも赤いし!」
「あの・・カエデ様、一目惚れです・・・。」
僕と茨木と紅葉は、両膝と両手をついた。OZである。
もう、これはしょうがい。ここは、一肌脱ぐしか・・・。
「酒呑、おまえ本気で紫丹さんを幸せにできるのか?異種族だ守れるか?」
「まかせろ!俺も一目惚れだが、命にかえても幸せにして見せる!」
ああ~こいつ馬鹿だけど、こういう所はちゃんとしてるんだよなあ・・・。
よし!わかった。タチバナへの説明は僕がする。斑鳩が昔使ってた屋敷が神楽に
ある。いろいろ細工してある屋敷だから酒呑と紫丹さんが住むには丁度いい。
茨木は?お寺がほしいって?まじ僧侶。紅葉は?日本舞踏を教えたい?
ああ、本職だもんね。茨木のお寺はタチバナと話して用意する。
紅葉は、僕の屋敷がまだあるから、それを使うといい。舞踏を教える場所は
道場を改装する。そうと決まれば、全員いっしょにタチバナに行くぞ!
僕は半分ヤケになり、爺ちゃん達に斑鳩の事を告白する覚悟をした。
3人には人間に変化してもらい、タチバナに戻った。執務室に直行だ。
もう、勢いで押し通すしかない。
「ただいま。」
「お帰り。信じていたけど無事、戻ってきてくれてホッとしてるよ。」
意識が戻った爺ちゃんがホッとした表情で座っていた。
悪いね爺ちゃん、また気絶するかも・・・。
「報告するね。まず、こちらにいる3人なんだけど、酒呑童子、茨木童子。
そして紅葉です。」
「だろうと思いました・・・。」と婆ちゃん。そして、酒呑が爆弾を投下。
「お父さん、お母さん。紫丹さんを僕にください。必ず幸せにします。」
紫丹さんも酒呑といっしょに、頭を下げる。
「爺ちゃん、気を失いそうだよ。カエデ。」
「婆ちゃんもです。カエデ。」 ですよねー。
「酒呑からの一方的なものなら、もちろん止めるけど、紫丹さんも酒呑に
一目惚れしちゃったんだ。そうなると、もう応援するしかないかなって・・。」
「紫丹、本当にいいのですね?異種族との婚姻は、茨の道ですよ。」
「はい、覚悟しております。」
「ふぅ・・。わかりました。あなた、わたしはこの2人の婚姻を許可します。」
「ツムギ・・いいのかい?」
「もちろん、打算もあります。紫丹は娘も同然、その娘が酒呑童子と夫婦に
なるのです。つまり酒呑童子は身内、いや息子です。いろいろ、タチバナ
を手伝ってもらいます。」
さっすが婆ちゃん、切り替えが早いわ。
「酒呑、それでも紫丹といっしょになりたいですか?」
「もちろんだ、です。紫丹といっしょになれるならなんでもする。」
「はぁ~、前代未聞だよ。爺ちゃん、胃に穴があくよ。」ごめんて、爺ちゃん。
「酒呑と紫丹のインパクトが強すぎてあれですけど、茨木童子と紅葉
はどうするのですか?」
「うん、それなんだけど紅葉は舞の達人なんだ。それを教えたいらしいから、
屋敷と稽古場を用意しようと思ってるよ。茨木は元々、僧侶だから寺院を
建立してそこに。2人ともいざって時は酒呑のバックアップしてくれるし。」
「成る程、それを用意しろと・・。」
「いや、茨木の寺院だけお願いしたいんだ。酒呑と紫丹さんの屋敷と
紅葉の屋敷は僕が用意するから。」
「どういう事だい?カエデ。」
「うん、別に秘密っていう訳でもないからあれだけど、僕は神楽に屋敷を
持ってるんだ。」
「ますます、わかりませんよ?」
「そうだよね。とりあえずそこに行こうよ。」
タチバナから実はけっこう近い。懐かしの我が家、と言ってもほとんどは
「箱庭」にいたから、たいして思い入れもないんだけどね。
屋敷には結界が張られており、斑鳩の魔力で解ける。封魔のブレスをはずし
門に近づくと、結界が解け、「おかえりなさい、主。」
この屋敷自体がIAだ。カモナの巨大版って感じ。
「久しぶり、ルミナ。管理してくれてありがとう。」
リビングに着いた瞬間、爺ちゃんと婆ちゃんが膝まずく。
「斑鳩様・・・カエデが斑鳩様の生まれかわり・・。」
「お久しぶりです、斑鳩様。」 婆ちゃん、泣くな。
「詳しい話はあとで3人でしよう。今はまだ、全て解決してないからね。」
「必ずですよ。」 だから、婆ちゃん泣かないで。
「ルミナ、主が変わるから手続きして、それとマルタに連絡して。」
「かしこまりました。新しい主はどちらですか?」
「酒呑と紫丹さんだ。」
「では、承認手続きをしますので別室へ。」
2人は指示に従って出て行った。
「マルタです、主。」
「久しぶりマルタ。主が変わるから手続きをして、それと道場を稽古場に
改装してほしんだけど。紅葉、手続きと改装の希望を伝えて。」
「どこにあるの?」
「この屋敷のお向かいさんだよ。」
「あら、そうなの。じゃあ行ってくるわ。マルタ、よろしくね。」
「かしこまりました。」紅葉も出て行った。
「爺ちゃん、寺院を建立できそうな場所ある?」
「はい、ちょうど教会の跡地があって、そこがいいかと。」
なんか爺ちゃんに敬語を使われるのは嫌だな、あとで話そう。
「茨城は寺院ができるまで、というか自分で設計すれば?好きだったよね?」
「ありがたい、設計は趣味だ。」
「じゃあ、寺院が完成するまで、ここに居候させてもらって。無駄に部屋数
あるから。」
「そうする。なんか、いろいろありがとな、斑鳩・・・。」
「好きにあばれまわるのも楽しいかもだけど、好きな事で皆の役に立つのも
悪くないよ。」
「・・・そうかもな。」
「みんなが戻ってきたら、タチバナにきてよ。みんなで夕食にしよう。」
「わかった。」
僕と爺ちゃん、婆ちゃんは屋敷の執務室に戻った。
「昨日からいろいろありすぎて混乱してますが、事情をお聞かせください。」
2人に、なぜ転生したのかを説明した。
「そういう事だったんですね・・。神にならなかったのは斑鳩様らしい。」
「まだまだ『箱庭』は使えないんだ。だから、朱雀も鈴音もスリープ中。」
「でも、いずれ師匠達に会えるのですね・・。」
朱雀は爺ちゃんの鈴音は婆ちゃんの師匠だった。僕自身は2人にはほとんど
会った事はなかったんだけど。
「会えるよ。」 婆ちゃんは、また泣き出した。
「泣かないで婆ちゃん。僕は元イカルがであって今はちゃんとカエデ・ガーネット
だし、爺ちゃんと婆ちゃんの孫だ。だから、今まで通りカエデとして接して
ほしいかな。」
夕食は、酒呑と紫丹さんの婚約発表でお祭り騒ぎになった。そりゃそうだ。
夏月もさすがに驚いていた。
紫丹さんのおかげで、なんだか酒呑の件も解決できたようだ。わけわからん。
まわりが盛り上がってるなか、僕は明日の事を考えていた。
神楽最終日でぬらりひょんと紅桜の件を解決しなくては・・。
ああ・・スローライフ・・・。
今更なのだけど、今回の件どうにもひっかかっていて、ひっかかりすぎて
わかっちゃったよ。「謎は全て解けた。」っていうやつだ。
婆ちゃんを捕まえて別の部屋へ。
「婆ちゃん、謎は全て解けたよ。犯人がわかった。」
「犯人はぬらりひょんではないのですか?」
「おそらくひょんで間違いないよ。でもさ、やり方が稚拙だと思わない?
それに、ひょんは夏月や酒呑の本質を知ってるんだよ。封印を解いても
あまり陽動にならない事はわかっていたはずなんだ。」
「陽動にならなかったのは、カエデが最短で解決したからでは?」
「時間が無かったから僕が介入しただけで、婆ちゃんが夏月とあってたら
紫丹さんが酒呑とあってたら、一日ではなかったかもだけど結果は同じ
だったと思うよ。シュリ叔父さんやタケル兄を呼ぶほどの事には
ならなかったと思うんだ。」
「たらればかもですが、確かにそうですね。」
「それにひょんは、あまり知られちゃいけないかもだけど、将軍家の剣術指南役
をしてるんだよ。刀術のみで戦ったら斑鳩といい勝負なんだ。新陰流の創設者
だしね。」
「えっ!将軍家の・・藤家ですか?」
「たぶん、それ。」
「婆ちゃん、新事実にびっくりです。」
「その藤家に僕と同じくらいの子がいない?吉華様といっしょに来てるはず。」
「います!リクオ様が来ています。」
「やはりね、ひょんは『祢々切丸』という妖刀を使ってるから紅桜なんて必要
ないはずなんだよね。でも、そのリクオ君が爺さんに認められたくて、あるいは
強くなりたくて・・・どっかで聞いた話だね。」
「・・・シュリ。」
「吉華様はおそらく、リクオ君に肩入れしてるんだろうね。紅桜がどういうものか
も知らないだろうね。」
「どうしますか?」
「タチバナは、紅桜が必要なの?」
「いえ、まったく。むしろお荷物です。爺ちゃんも若くはないですから、
村正と童子切を2人に持ってもらって少しは楽になったと言ってましたが
妖刀は増えていく一方で・・。」
「じゃあさ、あげちゃおう。吉華様のお願いを聞きました、妖刀の危険性も
説明しました。それでも、という事なので差し上げます、てさ。」
「危険では?」
「危険ではあるんだけど、都まで馬車で2日位でしょ。爺ちゃんの封印だったら
その位は大丈夫じゃない。あとは将軍家と藤家がなんとかするでしょ。」
「わかりました。では、爺ちゃんに将軍家と藤家宛てに書状を
2通書いてもらいます。」
「うん、そうして。紅桜は危ないから僕が運ぶし、渡すよ。2人には帝都の学園で
会いそうで嫌なんだけど、今回はしょうがない。2人には金輪際、関わらない
ようにするよ。」
「カエデが危なくないですか?」
「大丈夫だよ。こっちに来る途中で龍神に会って『龍神刀』もらったから、
なんかあっても即、制圧だよ。」
「龍神に『龍神刀』・・婆ちゃん、この2日間驚きっぱなしで
10歳老けました。」
なに言っておる、これから夏月の所でどんどん若返って行くのに・・・。
「明日は午前中に済ましちゃおうよ。そしたら、午後は目一杯ラスト神楽を
楽しめるから。」
「そうですね、嫌な事はとっととですね。」
準備は2人に任せて、お子様の僕は明日に備えて寝る。午前中はクソ餓鬼どもの
相手だ。そんなものはサクッと終わらせ、午後かエンジョイだ。まず、みんなで
鴨蕎麦を食いにいこう。そうしよう。
おやすみなさい。




