アプレンティス・リリィ⑤
千晶達の住む街の郊外にある、とある洋館。
そこは、魔王復活の為に活動をしている女幹部と人外の魔物達の拠点となっていた。
「夜分遅くにお集まり頂き、感謝します」
その洋館の最も広い部屋……元々食堂だった部屋に集まった魔物達に、一人の女の子が恭しく言葉を発する。
女の子は黒い髪に全身を黒いワンピースを着ていて、まるで夜の闇から抜け出したかのような存在だった。彼女の正体は白石優里香……先程千晶達と一緒に偽リリィを目撃した女の子である。
「構わぬ。我らにとって昼や夜などあってないようなものだ」
女の子……ブラックリリィの言葉に部屋の中央の椅子に座った金色の鎧を着たリザードマン……ガラムが答える。
そして、ガラムの傍には軽装ながらただならぬ雰囲気を醸し出すリザードマン……ガガが黙って立っていた。
「それより……封印の鍵を見つけたと聞いたが、真か?」
ガラムは早速本題に入る。
ブラックリリィが彼等を集めたのは、先程の偽リリィが持っているであろう封印の鍵についてである。
「はい。先日、私の使い魔であるクロウが私に似た気配を感じたと言うのがきっかけでして……」
そう言うとブラックリリィはそばに控えているカラス……クロウを見やる。
この中で一番地位の低いクロウは丁寧に説明を始める。
「ご存知かと存じますが、ブラックリリィ様はあの方から|力を授かっております。それが、街の方から微弱ながら感じたのでおかしいなとは思って」
「調べてみたら鍵を持った奴がいたと」
クロウの言葉を引き継ぐようにガラムが答える。
「はい。そこで今日、私が作った一番最弱な魔物をけしかけました。まぁ……あんなあっさり倒されるとは思っていませんでしたけど」
肩をすくめながらブラックリリィは答える。
その口調からは魔物を倒された悲壮感などまるでなかった。
「………一つ疑問があるのだが?」
すると今まで黙っていたガガが口を開く。しかし出過ぎた真似をしたかと思ったのか、彼は主人であるガラムを見る。
「良い、発言を許可する」
「ありがとうございます……ブラックリリィよ、お主はどうしてその者が鍵を持っていると分かったのだ?我の知る所によると、そこのクロウが鍵を持っているはずだが?」
(意外と鋭いわね……)
内心でガガに感心しながらブラックリリィは思考を巡らせる。
今現在、封印の鍵を持っているのはフラワーナイト・リリィと偽リリィ……そして、ブラックリリィなのだが、ガガの言う通り彼女の鍵はクロウに渡してある。彼女はフラワーナイト・リリィの正体……千晶の事をガラム達に話していなかったのだ。
そして、彼女は今でもリリィの正体を話す気など毛頭ないのだ。
「どうなのだ?ブラックリリィよ」
ガラムは鋭い視線をブラックリリィに送る。その視線は嘘は許さないと言わんばかりだった。
そんな視線を受けながら、ブラックリリィは語り出す。
「……私は自身で生み出した魔物、特にクロウとは視覚を共有する事が出来ます」
「ほう。それで……」
「あの時はクロウに魔物を使役してもらう為、近くにクロウを配置しておきました。そこからクロウの目を通して彼女の事を知りました」
ブラックリリィの言葉にガラムは顎に手を当てて考え込む。そして納得したのか一人頷く。
「…………成る程な。それで我に頼みというのは?」
ガラムは一応納得したようでブラックリリィに問いかける。
「かの者の鍵を奪う際にもしかしたらリリィちゃ……フラワーナイト・リリィの邪魔が入るかと思われます。そこで、ガガ様のお力をお借りできればと思っております」
そう言ってブラックリリィはガガを見つめる。
一方のガガは表情一つ変えずに佇んでいた。
「ほう?お主一人では事足りぬと申すか?」
ブラックリリィの言葉に、ガラムは何処か小馬鹿にしたように問いかける。
一方のブラックリリィは笑顔を絶やさずに答える。
「…………どう思って頂いても構いません。ですが、フラワーナイト・リリィは手強いです。万全を期す為なら私はあらゆる努力を惜しみません」
そう言ってブラックリリィはガガの方を向く。ガガはガラムに伺いをたてるようにガラムの方を向く。
「……良かろう。ガガよ……ブラックリリィと協力して封印の鍵を奪い取ってこい!」
「かしこまりました」
(フラワーナイト・リリィよ……今度こそこの間の決着をつけてくれようぞ!)
ガラムの言葉にガガは神妙に頷きながら、内心で来たるべき戦いに思いを馳せる。
そして、ブラックリリィがその場を締めるように一回手を叩く。
「ありがとうございます。ですが、私も準備がありますので決行はまた後日でよろしくお願いします」
ブラックリリィの言葉にガラム達は黙って頷くのだった。




