クロとハロウィン
十月も今日で終わり。つまり今日はハロウィンだ。
日本で祝うべき行事かはとても微妙だ。少なくとも、子供のいない独身の社会人としては、あまり縁の深い行事ではない。
だが、今年は犬飼家もハロウィンに参戦する。
今日の特別メニューは、カボチャを切って、フライパンで焼いたものだ。
……手抜きじゃない。手抜きじゃないんだ。
私の料理の腕と、クロがどれぐらいまで特殊な食べ物を許容するか分からない事を考慮に入れると、一般的な犬へあげるご飯の範囲が鉄板だという結論に達した。
失敗する方が難しい。強いて言えば、冷ましてからあげるぐらいか。
幸い、クロは美味しそうに食べている。この子が私の出したものを美味しそうに食べなかった事などないのだが。
そのクロは、いつもと恰好が違う。
黒いケープマントを羽織り、同じく黒の中折れのとんがり帽子をかぶっている。つまり、古式ゆかしいハロウィンの魔女スタイルだ。
料理と同じく、ド下手ではないが人様に自慢できるほどではない、割と平均的な裁縫技術を駆使しての自作。マントと帽子自体は自慢できるものではないが、これを着たクロが、私の中でベストハロウィン賞に輝くのは間違いない。
とうとう、一年に一回しか使わないアイテムを作ったりするようになってしまった。着々と犬馬鹿が進行中だ。
最初は市販の物を見繕うつもりだったのだが、クロのサイズがあまりに大きすぎて断念したという経緯もある。
しかし、作るのが簡単だから魔女(魔法使い)のコスチュームにしたし、似合っているのだが、それはそれとしてこれでいいのだろうかという疑問もある。
この行事、化け物の仮装をする理由には諸説ある。代表的なのは、化け物に仲間と思わせるためとか、逆に驚かすためとか、そういうものだ。
仮装とか必要だったのだろうか?
この子が素で化け物のよーな気もするのだが。
ふと我に返ると、皿に盛ったカボチャを食べ終わったクロが、こちらを見つめていた。
トリック・オア・トリート? 両方だ! 両方に決まっている!
お菓子をくれなきゃイタズラするぞ、というハロウィンの伝統を実に都合良く、お菓子をあげたらイタズラしてもいいと脳内翻訳し、クロの首筋に抱きついた。
うちのクロが一番可愛い! この子が化け物でも構うもんか!
「はー……」
ひとしきりじゃれあって遊び倒した所で、私の息が切れて、ごろん、と一緒に横になった。
この時期に汗をかくとか、本気で遊びすぎだ。
私の頬を鼻面でつついてくるクロ。
上半身を起こして、手を伸ばした。ずれていた帽子をクロの頭から取り上げて、自分でかぶる。
笑いかけた。
「お揃いだね」
――この子は、きっと化け物の側。
なら、私も化け物なら、よかったのかな。
それとも、私が人間だから、クロは私の隣にいてくれるのかな。
今日が終われば、十月も終わる。
もうそろそろ、クロが我が家に来た日だ。




