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星にネガイを  作者: シロクロウサギ
第二部:年跨ぎスターライト半月戦争
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第八十四話 年末大掃除大作戦 粗大ゴミ編

 空の彼方へ打ち上げられていく彦乃たち。

 もうすっかり飛行機が足元のはるか下で飛んでいるような高さまでやってきていた。

 ここまでくるともう、ちょっとした宇宙旅行気分だ。


「わぁ……綺麗…」


 見渡す限り一面の星空が彦乃たちの頭上に広がっていた。

 輝く星たちは彦乃たちを迎えてくれているかのよう。

 だが今は旅行に来ている訳ではない。


「…っ!動いたっ!」


「方角だけ教えて? 後はヘレンと誰かを一緒に撃ち出すから」


「え、撃ち出す?」


 足元を見れば、朱莉もスターライトの姿へと変身していた。

 かつて彦乃が自分の力をコントロール出来ていなかった頃と同じ、天使のような羽衣を纏った姿だ。

 その手には大きな剣が握られていたが、あの剣で撃ち出すと言う事なのだろうか。


「次々来るよ? 早く!」


「あ、はいっ! 7時と5時の方角に二基来てます!」


「同時かぁ…考えたね」


 ニヤリと笑う朱莉だったが、その表情は焦りによるものなどではない。

 全然余裕だと言いたげな顔をしていた。


「位置的に徳島と三重かなぁ… 行ける、ヘレン?」


「社長のブーストありだろ? 余裕余裕。 それより撃ち出す時の射角間違うなよな?」


「誰に言ってるんだか… 何年スターライトやってると思ってるのさ」


 朱莉が構えた大剣の上にヘレンと美波が乗る。

 普通なら重さで二人を落としてしまいそうな物だが、これも朱莉の力なのだろうか、二人を乗せても彼女の腕は全くブレはしない。


「何秒で戻って来れそう?1分くらい?」


「到着に10秒、破壊に5秒、帰還に10秒 1秒たりともミスしねぇよ」


「上等。 さっすがヘレン 第一射、行くよっ!」


 まさかの25秒で帰ってくる宣言。

 いったい朱莉のブーストとはどんな威力を持っているのだろう。

 二人を、ラクロスにおけるスマッシュのような強烈な勢いで撃ち出して朱莉はすぐ次の発射体勢へ移る。


「今度は…操ちゃんどう?」


「はいな 任しといてください」


「すぐヘレンが戻ってくるから、上に乗って待ってて?」


「んなら失礼して…」


 朱莉が構える剣の上に、今度は操が乗る。


「織姫ちゃん、手伝ってくれる?」


「彦乃ちゃん? どうしたの?」


「鳥のデブリがいっぱいこっち向かって来てる!」


「迎撃よろしくねー」


 どこからともなく現れた鳥型のデブリたちが、まっすぐこちらへ向かってくるのを彦乃は捉えていた。

 普通、ユニットが地表に落ちてからでなければデブリは発生しないと思っていたのだが。

 だが状況を思い返してみれば、予想は出来る。

 空中にいる場合でもデブリが発生する事はあったではないか。


「…大型デブリ…?」


「だろうねー 近づいてきたら迎撃よろしく」


「……」


 巨大な鳥のデブリが、予想の一番中で一番現実味を帯びていた。

 これまでに何度となく大型デブリを倒してきた彦乃だったが、やはりこの大型デブリと戦うのは気が引ける。

 戦いたくないという訳ではない。

 戦わなければ、大きな被害が出る事は分かっているから。

 しかし彦乃にとっては厄介な敵である。


「…大丈夫、私もついてるよ。 だから彦乃ちゃんは索敵に集中してね」


「朱莉ちゃん…」


「帰ったぜ。 第二射行けっか?」


「とーぜんっ! 第二射も同タイムで帰って来てね。 発射ー!」


 朱莉が彦乃を勇気づけている間にも、ヘレンと美波が帰ってきた。

 本当に三十秒足らずで片付けて帰ってきたらしい。

 乱雑に抱えた美波を輝へ放り投げると、その投げた勢いのままに朱莉の剣へ飛び乗り、待機していた操と一緒に撃ち出されていく。


「ふいぃ、美波大丈夫?」


「はい、これくらいなら治せますから」


「さっすが輝」


 ヘレンに放り投げられた美波は、その両腕がボロボロになってしまっていた。

 一度に何度も、しかも何回も腕へ恐ろしい程の負荷が掛けられたかのように内側から筋肉ごとグチャグチャになっているらしい。

 けれど輝にとってはそれくらい朝飯前。

 両手のグローブにルミナスを巡らせて美波の傷付いた腕を撫でると、あっという間に傷が収まって行く。


「彦乃ちゃーん、ユニットの方はどう?」


「4時と8時と10時の方向に2つづつ出てきた! 多過ぎだよ!」


 彦乃の感知可能な範囲にも驚かされるが、その感知したユニットの数にも驚かされる。

 計6つも同時に現れるなど、この前の大型デブリの時の用だ。


「だーいじょうぶ、全ては数値で表せるんだよ? 例え化け物退治でもね」


「え、どういう… なにそれっ?!」


 余裕を一切崩さない朱莉。

 一体何をするのかと思いきや、朱莉の目の前にはルミナスで作ったモニターが表れていた。

 いくつもの数値が表れては消えて行きを繰り返していく。


「よっし修正完了っと 彦乃ちゃん、ちょっと痛いかもだけど頑張ってねー」


「えっそんな注射みたいな っ!……ホントだ」


 朱莉の言っていた通り、その変化はすぐに訪れた。

 頭に電撃でも通ったかのような痛みがほんの一瞬やってきたかと思うと、次の瞬間には彦乃のセンサー能力は格段に向上していた。

 さっきまでは感知する事の出来ない程遠くにいたデブリも今では感知する事が出来る。


「ね? スゴいでしょ?」


「うん…けどどうやって…」


「かーんたーん 敵と味方がいるでしょ? 敵を不利に、味方を有利にしてるだけだよー」


 さらって言っているが、それってかなりすごいのではないだろうか。

 そしてなるほどとも思った。

 確かにそれは反則と言っていたのも頷ける。

 目の前のモニターを弄るだけで戦局が大きく変わってしまうなど本物の反則ではないか。


「さってと…そろろそかな?」


「今戻ったぜ 社長、連続で行かせてくれ」


「いいの?」


「あったりまえよ。 操のやつ、一発で仕留めるんだからよ」


 朱莉が予想していた通り、ヘレンと操が飛んで帰ってきた。

 美波の時と違って、操はまだまだ余裕と言った感じのようだ。


「サクッと刺したら終わりやからね」


「社長もだがコイツも相当にチートくせぇぞ というかアレだ、デルタ隊そのものがチート集団みたいに見えてきたよ私は」


 この世のきっとどんなレーダーよりも高性能な彦乃、本気を出せば文字通り一撃で終わらせられる操、人間離れした射撃能力を持つ織姫、どんな傷も治してしまう輝。

 美波に限っては、そういったぶっちぎりの性能は無いように思えるが、きっと彼女はバランス型なのだ。


「次行くよ次」


「はいな」


「いっけぇ!」


 またしても剣の上に二人を乗せた朱莉は、また違う角度で二人を撃ち出していった。

 本来はこういう使い方じゃないんだけどなぁ…と呟く声が聞こえるが、そこは気にしない。


「ふぅ…今度も一発サクッとやって終わらせてくるだろうから、もう一回行かせるか…」


「その次は、私に行かせてくださいね」


「おっ、もう大丈夫なの?」


「はい、もう行けます!」


 さっきまで両腕がボロボロだった筈の美波は、もう輝の治癒が完了したらしい。

 両腕は垂れ流されていた血まで含めて完治している。

 片手づつを開いて閉じてと繰り返すが異変もないようだ。


「大丈夫なの? 数値ちょっと下げようか?」


「いえ、もうあんなヘマはしません! だからそのままでお願いします!」


 復帰した美波の表情は、やる気に満ち溢れていた。

 輝に治癒してもらっている間に何かあったのだろうか。


「ほい、それじゃ次は美波が行って来てね」


「了解っ!」


 朱莉が差し出す大剣の上に、美波は乗ってヘレンが帰ってくるのを待つ。


「……彦乃ちゃん、大丈夫?」


「え? 何が?」


「何か…顔色悪いよ?」


 彦乃の傍に居なかろうがその程度の異変は織姫にはしっかりと見て分かる。

 いつものように元気に振る舞ってこそいるが、どこか心此処に在らずと言った感じなようだ。

 それに引っ張られるようにして顔色も悪くなっている。


「そうかな……桜ちゃんの事、気になっちゃって」


 実は、この場に桜の姿は無い。

 コンペイトウの守備を任せているのもあるのだが、そもそも不向きなのだ、この戦い方には。


「あぁー…細かく調節したら行けるだろうけど、効率悪いからねー桜ちゃんの場合は…」


「そこはしょうがないよ…桜ちゃんも含めて護り切るんだって思おう? ね、彦乃ちゃん」


「うん…そうだよね……っ?! また増えたっ!」


 桜の心配もそこそこに、彦乃はまたしてもデブリの反応を捉える。

 捉える、というよりはいきなり増えたと言う方が正しいだろうか。

 まるでワープか何かでもしてきたかのように、いきなり現れた。


「数は分かる?」


「えぇと……9個?! 多いっ!」


「方角は?」


「方角は……」


 デブリの飛来する方角を確認した彦乃は言葉に詰まる。

 どの方角かが分からなくなっている訳ではない。

 どの方角にもあてはまらないのだ。


「…彦乃ちゃん?」


「真上…」


「えっ?」


「新しく出てきたデブリ、みんなこの真上にいるよっ!」


 さっきまで実働部隊であるヘレンたちをあっちだこっちだと飛ばしていたのに、今になってこれである。

 まるでテニスの試合でも見ているかのような流れだ。

 あっちへこっちへと走り回らされて、疲れた所へ強烈な一撃が襲い掛かる。

 デブリながら良い戦術だ。


「距離は?」


「えっと…」


「よっし、それじゃ後回し!」


 彦乃の見せた一瞬の焦りを、朱莉は巧妙に利用してみせた。

 言葉に詰まると言う事はそれだけ離れていると言う事。

 空を見上げてもそれらしい塊なんていっぱいあるのだから判別は不能。

 ならば向こうがこちらの見える範囲まで突っ込んで来てくれるのを待つだけだ。


「社長、次行けるぜ!」


「おかえり、操と美波を交代させてすぐ行くよ!」


 ようやく帰ってきた二人は、まだまだ平気なようだ。

 だがそれ以上に美波はやる気まんまん。

 これを使わない程、朱莉は無能ではない。

 美波自身の心の炎を存分に燃え上がらせるのもそうだし、操にも休息は必要だろう。


「今度はちょっと遠いよーっ!」


 そう言って朱莉はもう一度、美波とヘレンをまた違う方向へと撃ち出して行った。

 はるか頭上からやってくるデブリが到着するまで、まだ余裕はある。

 ならば一刻も早く各地へ飛び込もうとしているデブリのユニットたちを阻止しなくては。

彦乃の負担にもなってしまうだろうが、そこは彼女の仕事、彼女にしか出来ない事だ。

替わりなんてここにいる誰にも務まらないのだから。


続く

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