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星にネガイを  作者: シロクロウサギ
第二部:年跨ぎスターライト半月戦争
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第五十九話 対ルミナス制御戦[前編]

「…模擬戦?」


「そうそう。彦乃ちゃんとレナちゃんってすごく相性がいいと思うからさ」


「相性がいいですって…?」


 ここはいつものブリーフィングルーム。

 そこへ彦乃と桜、ヘレンにレジーナ、そして朱莉の5人が集まってこれから行う事のおさらいを行ってい

た。

 内容は言葉として表すだけならすごく簡単。

 彦乃とレジーナの一騎打ち形式での模擬戦を朱莉が提案したのだ。


「社長、ならなんで一騎打ちなんだよ? 相性いいって事は連携を見るんじゃねーの?」


「よくぞ聞いてくれました。ヘレンには後でお年玉をあげちゃおう!」


「サッカーボールみてーなチョコ渡されて「はい、お年玉」とかじゃねーだろうな?」


「ギクッ!なんで分かって…ハッ! まさかヘレンに超能力的な何かが目覚めて…」


「これで何度目だと思ってんだ! もうそんな手に引っ掛かるかっつーの!?」


 これまで何度、同じやりとりをしてきた事か。

 最近ではやる事も無くなってきてヘレンも油断していた。

 まさかこんなタイミングで蘇ってくるとは思いもしないだろう。


「しかも毎回その場で渡してきやがって…アレ処理すんの大変なんだからなぁ?!」


 思い出すだけでも寒気がする。

 食べても食べても減らないチョコレートの塊に翻弄されて、そのうち苦しくなってきてその場でチョコを粉々に砕く事しか頭に残らなくなってしまうあの感覚は、ヘレンからすれば拷問同然だ。

 女の子は皆甘い物が大好き?

 甘い物は別腹だからいくらでも入る?

 現実そんなに甘くは無い。

 チョコだけに。


「そんな事言っちゃってー、欲しいクセにー。ホラ、もう用意してあるんだよ?」


「やーっぱり持って来てるんじゃねぇか?!」


「んっんんーっ!!」


 きゃっきゃと騒ぎ散らす朱莉を見ていて怒りのボルテージが急上昇してきたレナは喉が痛くなりそうな程に大きな咳払いをしてみせた。

 明らかにイライラしているというのが、人の機微には疎いであろう桜ですらハッキリ分かる。

 それくらいに分かり易い表現でレナはイライラしているのだろう。

 まあ、おかげで朱莉は静まり返ってくれた訳だが。


「…それで、どうしてその子と私の相性がいいのか、説明していただける?」


「はいはーい。 とは言っても至極簡単。そこな彦乃ちゃん、リソースの海にございます」


「……はい?」


 レナの驚きは言っている事が分からないというよりは、そんなものが存在するのかという方に傾いているように思える。

 というか彦乃本人ですらあまり良く分かっていないようにも思えた。

 いきなり自分をリソースの海とか言われても良く分からないだろう。


「彦乃ちゃん、モード切替で装甲からルミナスがブワァーってなるじゃない?」


「え…うん、確かにそうだけど…」


 光を取り込んでからと言う物、彦乃にはある変化が表れていた。

 ロボットで言うと「OSを取り替えた」ように、彦乃のスターライトとしての性質が変化していたのだ。

 今の彦乃はスターライト時にルミナスの精製と放出を抑えたノーマルモードに加え、ルミナスを爆発的に精製し同時に放出し戦闘能力を大幅に高めたモードが存在している。

 ルミナスの爆発的な増加で言えばシューティングスターモードがそれにあたるのだが、彦乃はシューティングスターモードになる事無くそれを行えるようになっていた。


「革新的ね…そして貴女が何を言いたいかも分かったわ」


「レナは本当に賢くて助かるねー」


 お互いの頭の中で会話しているようなレナと朱莉に対し、当事者である筈の彦乃はあまり事態を呑み込めないでいた。

 首を捻る彦乃に二人は「すぐに分かる」と言うと部屋を移動し始める。

 移動した先というのが…


=====


「……うん、模擬戦って言ってたもんね…」


 コンペイトウの地下にあるスターライトの為の訓練空間へ来ていた。

 既に地形情報は入力済みらしく、部屋の至る所で機械が動いて部隊を造り始めていた。

 いつ見ても子供心に火を付けそうな建築風景だ。

 真っ白な空間の中に見る見るうちに建物がいくつも造られていくその光景は、それこそ最初桜を連れてきた時もワクワクした目で出来上がっていく様子を眺めていたものだ。


「うはぁ~…彦乃、彦乃っ!」


「うん、どしたの?」


「アレ、彦乃?」


 桜がいきなり何を言い出すのかと思えば、作られていく銅像のような物を指さしてはしゃいでいる。

 軽く相槌でも打って流そうとしていた彦乃だったが、その言葉は喉から出そうになった所で詰まってしまう。


「あ、桜ちゃん気付いた? いいでしょー、私作の彦乃ちゃん像!」


「あほらし……それより、今回の模擬戦についておさらいするぞ?」


「…あ、はい!」


 ドヤ顔で胸を張っている朱莉は置いておくとして、ヘレンが今回の模擬戦についての説明に入る。

 桜は話を全く聞いていないようだが、どうせ観客側なのだから何も問題は無い。


「まず、二人ともメテオーブを起動しな」


「はい」


「分かったわ。先にさせて貰うわね?」


 指示を受けた二人は互いにヘレンから数歩離れてある程度の距離を取ってから変身準備にかかる。

 先に変身を始めたのは、宣言した通りレナだった。


「天に煌めく三つ子の魂、今此処に顕現せよ…フォーマルハウト、start up!」


 左手の袖に付けられた装飾の中心に取り付けられた宝石を軽く叩き、零れ出したルミナスにレナの全身が光の球体に包まれる。

 どこからともなく現れたローブに袖を通し、降りてきた大きな三角帽子を被って準備は完了。

 最後に軽くフィンガースナップで指を鳴らすと、近未来的な形状をした杖状のロッドと銀色の表紙をした一冊の大き目の本が表れレナがそれらを掴むと彼女を包んでいた輝きが霧散して変身完了となる。


「おぉ! こう、魔女って感じだ!」

 

「でしょう? さあ、貴女も変身なさい?」


「はい! 行くよ、アルタイル!」


 右手のブレスレットに触れ、輝きに包まれて変身が始まる。

 とは言っても、いつもと変わりがない訳だが。

 篭手が表れ輝くルミナスが巫女装束を造り出し、その上から装甲たるジャケットを着て完了。

 ルミナスの輝きを払い飛び出して来れば巫女姿の彦乃の完成である。


「お待たせしましたー」


「なかなかのタイムね。私ほどじゃないけれど」


 スターライトへの変身にもだいぶ慣れてきた彦乃は、変身するのにかかる時間も大幅に短くなっていた。

 それこそ瞬く間に変身出来ているのだ。


「へぇ…これが世に聞く巫女服ね?」


「うーん…まぁ、だいたいそうですね」


「あら、違うの?」


 そりゃ、普通の巫女服である訳がない。

 スターライトとしての姿であるからというのもあるが、篭手を付けるだけでなく装甲のベストまで着込む巫女服など聞いた事も無い。

 更にここから牛頭と共に近未来的な装置と言える馬頭まで腰に付くのだから巫女服である訳がない。

 とは言っても、それを長々と説明している時間など無いが。


「よし、それじゃ彦乃、アレやってくれ」


「はい! ……よっし!」


 心の中で一つ覚悟を決めて、槍を構えて祈祷を行う。

 篭手やベスト、馬頭の装甲がスライドして大量のルミナスを放出し始めた。

 これが話していた例のモードである。


「…できました!」


「なるほど…確かにこれは私にとっては油田のような子、と言う訳ね」


 絶えずルミナスを噴き出すその姿は、なんとも神秘的に思える。

 レナの表情もどこか彦乃を認めているような物へと変わっていた。


「ギャラクシーモードの部分展開を確認っと…」


「ギャラクシーモード…?」


「そのモードの事だよ。いんk…セレスがそう名付けてた」


 彦乃の新しい力は、いつの間にかそう呼ばれていたようだ。

 これまで何度かコンペイトウへは来ていたが、今それを知らされた彦乃からしてみれば興味深々だろう。

 だが今は、子供のようにキャッキャとはしゃぐ時ではない。


「さて、二人の準備が済んだ事だし…審判さん?」


「はいはい審判さんですよっと…それじゃルールの説明を始めるぞ」


 と言いながら、ヘレンはポケットから二本の鎖を取り出した。

 鎖とは言っても長さはほんの短く、巻けても二人の首輪程度にしかならない。

 というかそうする為の鎖であった。

 南京錠もちゃんとある。


「これから二人にこのチェーンを首に付けて貰う。 このチェーンが破壊された方の負け…シンプルでいいだろ?」


「なるほど…チェーン・デスマッチですか…」


「…え? いやチェーン・デスマッチってそういう意味じゃねーぞ?」


「え?そうなんですか?」


 そんな二人の会話を聞いて、不意にレナが笑い出した。

 どうやらこの手の話には弱いようだ。


「あっはっはっは!! もうそれでいいじゃない! 情け無用のチェーン・デスマッチ!」


『面白いねー、それ採用! いやー、彦乃ちゃんシャレ効いてるわー!』


「……ほら見ろ、社長まで悪ノリし始めたぞ…」


 やれやれとため息を吐きながら、彦乃の首へチェーンを巻いて南京錠で固定する。

 結構しっかりと固定されているからか、あまり音を立てて揺れたりする事はなさそうだ。

 続けてレナの首にも同じように巻き付けていく。


「後コレな」


 続けて取り出したのは、いつも耳に付けている通信機だった。

 二人ともすぐに受け取るとそれを耳に付ける。

 これで準備完了となった。


「よーし、二人ともつけたな? それじゃルールの再確認だ」


「はーい」


「一つ、その首に巻いたチェーンを攻撃で破壊する 二つ、相手の変身状態を解く 三つ、降参する このいずれかを満たしたらその時点で今回の模擬戦は終了だ」


 単純ではあるが、それ故に分かり易く伝わり易い。

 その上、安全にも気を配って居る辺り流石と言える。


「それじゃ、彦乃の目算で100m離れた場所で1分後くらいに開始の合図を出す。 そしたら試合開始だ。 


以上、解散!」


「はい!」


 説明役を終えたヘレンはすぐにその場を立ち去っていく。

 これで残されたのは、これから試合を行う彦乃とレナの二人のみとなった。


「ここからだと……あのへんかな…」


「ふぅん…やっぱりレーダー型は便利なのね」


 どうやら彦乃がレーダータイプな事まで知っているようだ。

 おそらくは朱莉が教えていたのだろう。

 何も悪いことでは無いし、逆に知っていなければフェアじゃないからと彦乃が教えていた。


「アンテナ、矛、そして今度は補給船? 忙しくなりそうよね」


「あっはは…でも、その分誰かを助けられるって事ですから!」


 その言葉に、瞳に嘘は無い。

 レナもそれを分かったからかそれ以上の口出しはしなかった。


「それじゃ、宜しくお願いします!」


「ええ、宜しく」


 互いに向きあい、一礼。

 そして彦乃はそのまま指示された距離を開ける為にその場から牛頭に乗って飛んでいく。

 スタート地点にされている以上、レナはその場を動ける道理も無かった。


「…いい眼をするじゃない、あの子…」


 そう小さくつぶやいたレナは開始の合図を待つ体勢に入る。

朱莉の認める者同士が、互いの力をぶつけ合おうとしていた。


続く

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