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星にネガイを  作者: シロクロウサギ
第三章 夏の思い出
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第四十三話 流星群 中編

「織姫、ブチかませ! 私が合わせる!」


「はいっ!」


 操の報せによって美波達二人が大型種に食べられたと聞き、ヘレンは織姫と操を引き連れて件の大型種を追いかけていた。

 今はと言えば、野良犬でも追いかけてきたのかバッタリと出くわした中型種を相手に準備運動の真っ最中だった。

 熊のような巨体がヘレンへ襲い掛かろうとするのを、操が迎撃する形で切り裂きあっと言う間に倒してしまう。

 織姫はと言えば、ライフルのマガジンを別の物へと切り替えていた。


「早い…流石はヘレンさん…」


 一瞬スコープから目を離していただけだと言うのに、ヘレンは何の躊躇もなく敵の群れへ一直線に突っ込んで行く。

 しかもその軌道は、急な坂道の多い山道とは思えない程に真っ直ぐだった。

 まるで彼女自身が一発の弾丸であるかのような。


「はぁ!…よし!」


 敵の一体に致命打を与えたヘレンは、その場で大きく飛び上がって後ろへ下がる。

 その間を、織姫は絶好のタイミングで引き金を引き弾丸をデブリの急所へ直撃させた。

 炸裂した弾丸は、高濃度に圧縮されたルミナスの作用によって大きな爆発を引き起こして撃ったデブリだけでなく周囲に居た個体も巻き込む形で爆発した。

 爆炎で山火事でも引き起こしてしまわないかと心配になるが、どうやら火は爆発する以外に飛び火しなかったようだ。

 直後に織姫の傍へ着地したヘレンの表情は、喜びに満ちていた。


「やっぱ織姫、お前とは合わせやすい! どんどん撃っていけよな、私がフォローするからよ!」


「は、はいっ!」


 ヘレンの言う通り、織姫がトリガーを引けない間はヘレンが攻撃に回り、マガジンの装填や照準の固定が終われば射線上から身を引いて弱点を織姫が撃ち抜く事を繰り返していく。

 傍から見れば、ずっと一緒に戦ってきたパートナーであるかのように息がピッタリだ。

 敵からの攻撃もヘレンからすれば単調で鈍重な物ばかり。

 それを防げない程衰えてはいない。

 ルミナスの壁を作って受け止めた所へ反撃を見舞っていた。


「っと、中型種だぁ? 一丁前に通せんぼのつもりかよ!」


 かつて美波達が苦戦していた、蠍のデブリがヘレン達の進行を妨げるように3匹立ち塞がる。

 アレを親とする子機が背景に溶け込んでいくらか隠れ潜んでいる筈だ。

 初見なら苦戦していたかも知れないが、この種類と戦うのは初めてと言う訳ではない。

 ならば勝算は十分にある訳だ。


「…こんな時、彦乃ちゃんが居てくれたら…」


 索敵能力の高い彦乃であれば、隠れている子機などあっと言う間に見つけてくれるだろう。

 しかしここに彦乃は居ない。

 それに居たとしても戦闘などさせる訳には行かない訳で。


「ううん、彦乃ちゃんは戦い過ぎてるからお休みさせてって…最初に提案したの私なのにっ!」


 そう、織姫がこの作戦が始まる前に彦乃を出撃メンバーから外させるよう朱莉に進言していたのだ。

 その場にいた誰もが、不思議とエコ贔屓だの不平等だとは思わなかったし思いもしていない。

 確かに彦乃は出撃の頻度が他のメンバーと比べて多かった筈だ。

 しかも相手にするのは中型種や大型種ばかり。

 あんなにボロボロになるまで戦い続けていたのに、自分だけその後ろでのうのうとトリガーを引いている訳にはいかない。

 だからこそ、神出鬼没なデブリの対策にと桜を傍に付けて安全な場所で休んでもらっている。

 それを自分がピンチだからと言って助けを乞うのはお門違いという物だ。


「負けられない…彦乃ちゃんの為にもっ!」


 気合を入れ直し、狙いを絞ってトリガーを引いていく。

 一発、また一発とサソリ型のガードを崩すように間髪入れず弾丸を叩き込んでいく。

 そのおかげか、ヘレンは何の苦もなく透明化している子機が放つ毒針を壁で弾き、親機の急所ごとコアを貫いた。


「その息だぞ織姫ぇ! このまま残りの奴らも片付けるぞ!」


「はいっ!」


「ウチの事、忘れんなやぁ!」


 見事なコンビネーションによって、三人は次から次へとデブリを倒していく。

 鉄くずが山のように積まれていく中で、少しづつだがハッキリと美波達を食ったという大型種へ近づいている手ごたえをそれぞれ感じていた。


====


「はぁ! やっ…だぁぁ!」


 一方、囚われている美波達にはある変化が起きていた。


「壊れろ、壊れろ…壊れなさいってのぉ!!」


 力を取り戻していた美波は、力いっぱいに柵を殴りつけていた。

 その姿は、いつもの彼女の姿とは少し違っていた。

 少なくとも腰に大きな装置を提げてなどいなかった筈だ。


「っ?! くっ…」


 尚も攻撃を続けていた美波だったが、背後からの気配に気づいて攻撃を止めると後ろを振り返る。

 振り返ったのとほぼ同時に、美波は反射的に腕を前に出して防御態勢を取っていた。

 次の瞬間には両腕に叩きつけるような衝撃が伝わって来て、美波はその場で呻く。


「…ふん、上等じゃない…まだまだそんなんじゃ足りないわよっ!」


 背後に迫っていたのは、大量の触手たちだった。

 どれもこれも、先端がハンマーやら鞭やらの形状をしている所を見るに、対象を拘束するのが目的ではなさそうだ。

 拘束する前に攻撃して弱らせておこうとかそんな所だろうか。

 ただ、美波が挑発したのはちょっと悪手だったかもしれない。


「うわ、増えた…」


 挑発したからか、触手の数が明らかに増えている。

 いずれも拘束する為の物ではなく攻撃する為の物のようだ。

 美波にとってそれは好都合という物。


「……ふん、かかってきなさいな!」


 何も見栄を張っている訳ではない。

 必要なのだ、『敵からの攻撃』が。


「っ! くぅ…」


 両腕の篭手に備わる装甲をバックラーのようにして、触手からの攻撃を受け止め続ける。

 何度となく攻撃を受け続けている内に、だんだんと武器と腰にある装置とがルミナスの管で繋がっているのがハッキリと見えてくる。

 二つを繋ぐルミナスの輝きは、攻撃を受ける毎に強く輝きを増していく。

 何度となく叩かれ続けている美波にとっては『充電』を終えるのにそう時間は必要としない。

 あっと言う間に充電が終わると篭手の装甲がスライドして白銀に輝くルミナスが溢れ出してくる。


「もう我慢の限界よ……堪忍袋の緒が切れたわぁっ!!」


 右腕に力を込め始めた美波は、触手からの攻撃を受けるのではなく避けるのへと切り替える。

 と同時に、すぐ背後の鳥籠めがけて渾身の一撃を叩き込む。

 爆弾でも爆発したかのような衝撃が響き、その後には人一人など余裕で通れるような大穴が口を開けていた。


「今っ!」


 開いた大きな穴に、美波はすかさず飛び込む事でやっと脱出する事が出来た。

 外へ出てみると今まで自分たちを捕えていたデブリのなんと大きなことか。


「てぇぇぇるぅぅぅぅぅ!!!」


 地面に着地するや否や、その衝撃を吸収と同時に吐き出して美波は高くジャンプしてデブリの胸元へ戻っていく。

 何も檻へ戻ろうと言う訳ではない。

 もう一方の檻に囚われている妹を救う為だ。


「だぁりゃぁぁ!!!」


 檻を破った拳の一撃を、今度は内側ではなく外側から叩き込む。

 またしても爆発のような衝撃が起きたかと思えば、檻の柵は粉々に吹き飛んでいく。

 あっと言う間に人が余裕で通れそうな大穴が完成した訳だ。


「輝っ! しっかりして!」


 檻の中で横たわる輝を美波は必死に呼びかける。

 変身は解けていない所を見ると、まだ力は残っているようだ。

 そっと輝の首に付けられた首輪へ拳を向けると、腕を動かさず衝撃だけを首輪へ走らせる。

 するとあっと言う間に首輪は粉々になって砕け散っていく。


「これでっ…輝、ほんとはもう起きてるんでしょ? ねえってば!」


「…」


 何度呼びかけようと、輝からの返事は無い。

 肩を何度も揺すろうが、名前を何度も呼ぼうが起きる気配が全くないのだ。

 だが、美波には分かる。

 これはただの狸根入り。

 本当は輝はちゃんと起きている事を。


「……なんでまだルミナス吸われてるのよ」


「あ、しまったっ?!」


 忘れてたと顔に書いてあるかのような驚きっぷりで、自分の首を掴みながら輝が飛び起きて自分の状態を確認する。

 勿論、もう首輪は壊したのだからルミナスを吸収されている訳がない。

 嘘を吐くのならもうちょっとバレにくい内容にするべきだった。

 それならもっと上手く騙せていたかもしれないのだから。


「全く、何考えてるのよ」


「えっへへ…お姉ちゃんが困ってる顔が見たくて…」


 理由が俗っぽいだけでなくかなり不純だった。

 しかもそれをニヤニヤしつつ悪びれる事も無く言うのだから本当なのだろう。


「はぁ?! 何よそれ…とにかく出るわよ?」


「はぁい! すぐ倒して変身解かないと、そろそろリミットだもんね」


 輝に指摘されて、美波もあっと声を上げる。

 セレスから指定されていた、シューティングスターモードで戦っていられる限界時間。

 その上限が、もうそろそろという所まで迫っていたのだから。


「輝が遊んだりしてるからでしょうがーっ!!」


「わーっ! お姉ちゃんが怒ったーっ!」


 結果的に、輝は美波に追いかけられる形で檻からの脱出を成功させた。

 因みに一緒に囚われていた小動物たちはとっくに逃げ出している。

 同じ穴から出入りしていたからなのか、かなり動物臭いがこの際気にしては居られない。


「ソッコーで片付けるわよっ!」


「はぁい、お姉ちゃんがんばれー!」


 二人とも外へ脱出して、大型デブリと対峙する。

 やはり大型なだけあってかなりの巨体がどんどん迫ってくるのが分かる。

 大きすぎてスローモーションのように動いているかのようだ。


「ふんっ! コアが丸見えじゃないの! あれを潰して今日も快勝よっ!」


 大型デブリの胸部には、赤い球体状のコアがしっかりと浮かび上がっているのが見えた。

 もしアレがコアに擬態したただのコブだとか言われでもしたらお笑いものだが、そんな事は無い筈だ。


「チャージ完了! ぶっ飛びなさいっ!」


 巨体な分、動きは鈍い。

 故に、美波が懐に入っても迎撃が間に合うはず等ない。

 あっと言う間にゼロ距離まで接近し、左の拳をコアへ押し当てる。

 殴ると言うよりはグリグリと拳を押し付ける感じと言えばいいだろうか。


「…インパクトぉ!」


 押し付けていた拳の篭手が、スライドしてガチンと噛みあう。

 次の瞬間、叩きつけた場所から順に衝撃が内部を伝い連鎖的に破壊していくのが視覚的に分かった。

 内側で泡が急激に膨れていくようなボゴボゴとした歪みがあちこちに伝播し、拳を離すとそれらが一気に爆発したのだ。


「やったわ! 輝、見てたでしょ?」


「うん、見てた! すっごい無意味だって事が分かったよ、お姉ちゃん!」


 デブリを殴りその衝撃で輝の居る元までジャンプする要領で戻ってきた美波に対する輝の評価は、以外にも辛辣だった。

 まぁ、目の前でコアを潰されたデブリの様子を見ていればその意味も分かるという物だったが。


「はぁ?! ちょっと酷くない?」


「だってホントの事だもん。 後ろ見てみてよ」


「何よ、デブリが居るだけ…っ?!」


 二人が見たもの。

 それは、叩きつぶした筈のコアが瞬時に再生していく様子だった。

 壊れた箇所を無かったかのようにして、元の形へと戻っていく。

 しかもそれだけではない。


「っ! 輝、離れるわよ?!」


「うんっ!」


 危機を察知した二人は急いで大型デブリからなるべく距離を取るようにする。

 見てしまったのだ。

 デブリが、まるでフィルムを土台から剥がすようにベリベリと分離していく姿を。

 美波達がある程度の距離を取った所で、大型デブリは完全に分離して二体に増えた。


「増えちゃった~…」


「赤色と青色…黄色とか出てこないでしょうね…」


 苦笑いしながらその様子を見ていた美波だったが、冗談でもそんな事言う物ではない。

 本当に増えたらどうするのだ。


「……お姉ちゃん…」


「…何?」


「あんな感じの敵キャラ、昔のアニメに居たよー」


 輝が何の事を言っているのかについては、これを読んでいる方々にお任せするとしよう。


「………そうね、輝…その敵キャラの特徴教えてくれるかしら?」


「うん、了解ー! えっとねー…」


 意外にも美波は輝の考えを読んでくれていたようだ。

 昔のアニメに出てきた敵と同じ方法でのアプローチを試みる。

 そう美波の頭の中で閃いたのだった。

 これが吉と出るか凶と出るか。


つづく

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