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星にネガイを  作者: シロクロウサギ
第一章 序章
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第十三話 覚悟の流れ星

 またしても現れたデブリは、再びこの場所に現れようとしていた。

 今日だけで二度と言うハイペースに驚いたのはきっと彦乃たちだけではないだろう。


「…そういや、説明の中に「デブリに殺されたりした人も戦いが終われば元通り」って言っとったけど…」


「え?うーんと…あ、あの人」


「ん?…あー、鈴木さんやったっけ?どないしたん?」


 彦乃の視線の先には、同じ高校の制服を着た一人の女性がその場にへたり込んでいた。

 操はいまいち覚えていないような反応だったが、彼女は操と同じクラスの生徒だ。

 先刻、彦乃が校舎で戦ったカンガルー型のデブリによって殺された人々のうちの一人だった事もしっかりと覚えている。


「間違いじゃなかったら、私の目の前で死んだよ。グチャァって潰されて…」


「もうええよ。それにしたって…鈴木、死んだ筈じゃ…」


「残念、トリックですよ……なんて言ってる場合じゃないでしょ二人とも…」


 目の前では闇が広がって行き、次第に空気中を黒い粉のような流れが海流のように形作られていく。

 見れば建物などからも同じように粉のような物が舞い上がって行くのが見えている。

 一体どんな状態になっているのだろうか、なんて考えている暇はない。


「それより早くへ…変身して」


『あ~、早速で悪いけど周防先生からの宿題その1で~す』


「す、周防さん?!何やっとんねん!」


 みんなしてポケットに入れていたスマホからきっと最大音量に設定していたのであろう声が大音量で聞こえてくる。

 ちょっと耳が痛いと思ったほどだ。

 それを知ってか知らずか、朱莉はどこかニヤニヤとした笑いを浮かべている。

 いや、これは確信犯なのだろう。


『みんな、渡したアイテムはちゃんと身に着けてるー?』


「あのキーと指輪とヘアピンですかー?」


『そうそう。身に着けてるみたいねー、それじゃ……覚悟は出来てる?』


 明らかに最後の言葉だけが違って聞こえた。

 笑い交じりに話す事の多い朱莉から笑みが消え、真剣な表情と眼差しを向けて真剣な声で覚悟の真意を説いてくる。


『これからやる事は、遊びやスポーツじゃない…戦争だよ。君達が勝てなきゃ私達が駆けつけるまでにEFを破壊しないと、フィールド内に居た人々は皆殺しにされるしリセットもできない。失敗は許されないよ?それでもやれる?』


「やらなきゃダメじゃないですかそんなの!やらない訳がないですよ!!」


「そーですよ。しかもウチのリーダー、エンジン掛かったみたいやし……」


「私は彦乃ちゃんと共に行きます!というか別行動命じてたら暴れてます」


 返答はそれぞれではあったが、その覚悟は本物だった。

 しかし、朱莉の念押しはそれだけには留まらなかった。

 なんせ重要な役割なのだ、途中で逃げ出されてはかなわない。


『……瀬川:45秒・三島:40秒…』


「なんですか?それ」


『戦闘開始から生体反応をロストするまでに掛かった時間データ。元・デルタ隊のね……結月:72秒・鶴間:86秒・北斗:92秒……あぁ、こうやって見るとあのトリオ結構残ってたんだねー。そしてリーダーの結城が100秒ジャスト、と』


「……たったそれだけしか…」


『そう。たったの100秒で全滅。ええとあの時は…まぁいいや。で、今度は君達三人に、これらの時間データを思いっきり更新してもらうよ?』


「100秒て……二分足らずで6人全滅かいな…」


「そんな…そんな危険な事してたんだ、私達…」


 朱莉によってもたらされた、戦いの厳しさというものは彦乃たちにプレッシャーを与えるには十分すぎた。

 プレッシャーから逃げ出してしまうのではないかという心配もあるかもしれないが、もしそうなら見当違いだったと言うだけの話だ。

 それに、その程度のプレッシャーで三人が潰れるなどと朱莉は全く思っていない。


「……周防さん」


『おっ……朱莉でいいよ?特別に彦乃ちゃんには許してあげちゃう!』


「なら……朱莉ちゃん、別に時間を掛けて戦う必要はないんですよね?」


 彦乃の眼に、朱莉は満足げな顔をして名前呼びを許可した。

 そして彦乃の意見を聞くためにと黙り込む。


「……速攻で終わらせます!皆と一緒に!」


『まさかのちゃん付けだったよ……宜しい。覚悟は100%完了してると見た。これなら使いこなせるんじゃないかな?「シューティングスターモード」をさ…』


「シューティングスターモード…?」


『なったら分かるよ…あ、あと無理はしちゃダメだよ?それじゃ頑張ってー』


 説明もほどほどに、朱莉は一方的に通信を切ってしまう。

 だがそれでいい。

 あまりに多くの情報を一気に叩き込んでしまうと余計な混乱を招きかねない。

 例えば、先程のシューティングスターモードが諸刃の剣だったとしたら、使用を躊躇っている内に囲まれて終わるだろう。

 そうならない為にも、あえて通信を早めに切っておく。

 まぁ、彦乃たちがそんな考えまで理解しているとは思えなかったが。

 だが三人に芽生えた覚悟は、確かに本物のソレだ。


「……行くよ、アルタイル!」


 ブレスレットに提げられた二つのアミュレットのどちらにも触れて名を呼び光に包まれる。

 ここまではいつも通りの変身だったのだが、感覚の研ぎ澄まされている彦乃にはハッキリとした違和感を感じていた。

 不快な感覚ではなく、寧ろ心を後押ししてくれるような強く煌めく炎のような光であるそれは、彦乃へ新たな力を貸す。

 包み込んでいた光が収まっていき、中から現れた彦乃は以前の姿とは少し違っていた。


「…っ?!何これ…ヘッドセット…?カチューシャ…?」


 いつもの巫女風の装備に加え、カチューシャのようなヘッドセットが装備されていた。

 巫女服装備の方にしても、いくらか派手さが増しているような気がする。

 その瞬間、彦乃に異変が起きた。


「っ!?!……っ~…あ…あぁぁ~~っ!!?…」


 アルタイルの力を手に入れるまでにも彦乃は、妙に勘が良いと思える事は確かに何度もあった。

 3軒隣の家でボヤ騒ぎがあった事があったが、火事になる前に彦乃が様子を見に行った事がきっかけでボヤ騒ぎで済んだこともある程だ。

 だが、これはそんな物の比ではない。

 周囲のどれほどか分からない程広範囲の音や怯える人のものであろう気配、見ても居ない筈なのに頭の中に入ってくる景色のイメージが、彦乃のありとあらゆる感覚を占拠して訴えかけてくる。

 ここが危ない、ここは安全、ここに行こう、ここで戦え、それらの意志やイメージが言葉も無く彦乃の頭の中を駆け巡っては消えていく。

 頭が内側から破裂してしまいそうな程の激痛を伴いながら、だ。

 その場に頭を抱えて蹲りそうになったのを織姫がすぐに気付いて彦乃を支える。


「彦乃ちゃん?!彦乃ちゃんしっかり!?」


「彦乃!どないしたっ?!彦乃ぉ!」


「んぅっ!!……お、おりひめちゃん…みさおちゃん…」


 二人に支えられては居るが、彦乃の状態は悪くなる一方だ。

 織姫に支えられた途端に、艶っぽい声が出ていたりしたが、織姫は珍しくその声にも反応を示さない。

 そりゃ、苦しそうに悶えているのに悠長な事を言いながら妄想など出来るはずもない。


「こん……なのぉ…」


『もしもし、言い忘れて…あ~、やっぱりか』


「社長さん!何がどうなっとんねん!彦乃は…」


『大丈夫大丈夫……彦乃ちゃん、集中してごらん。なんでもいい、落ちて来てるユニットを探すのでもいいし、そこの二人の赤裸々な思いでを探るのでも良い。とりあえず集中してごらん?』


「ちょっ?!」


 茶化す意味合いがもし無かったとしても、その引き合いはどうなのだろうか?

 織姫が何言ってんだコイツはと言いたそうな顔をする横で、彦乃の顔色が一気によくなったのが見て取れる。


「っ!……見えます、すっごい良く見える!ありがと、もう大丈夫だよ織姫ちゃん、操ちゃんも心配してくれてありがとう…もう大丈夫だから!」


 自分の意志で、周りのどうしても拾ってしまう雑音を無視し、空の彼方で煌めきながら迫ってくるデブリを集中して文字通り「見る」。

 比較対象が付近に無い為、正確な大きさは分からないがだいたい5メートル前後の鉄塊が大気圏での摩擦で焼かれてなのか真っ赤に燃え上がりながらこちらへ向かって突っ込んでくる。

 視覚的には見えるかもしれないが、それにしたって点でしかないのに、彦乃は正確な形状を見出すことが出来ていた。


『よっし、美波ちゃんの報告の中で気になった事もあったから心配だったけど、これでもう安心かな…集中を途切れさせちゃダメだからね?はい、それじゃ他の二人もやっちゃってー』


「やっちゃってーって…彦乃ちゃんみたいな事にならないんですか?」


『大丈夫だよー?彦乃ちゃんのは性能の種類的に負担が大きめのだったってだけー。他の二人は大丈夫だよ、無理さえしなけりゃね』


「んなら大丈夫やろ。やるで、織姫」


「うーん…彦乃ちゃん、もし危なくなっちゃったらよろしくね?」


 すぐに彦乃は返事を返し、近づくデブリへ意識を戻す。

 なおも速度を落とさずまっすぐにこちらへ突っ込んできている。


「さってと……行くでぇ、デネブ!」


「お願いね、ベガ!」


 二人が同時に光の中へと包まれ、すぐに姿を現した。

 操も織姫も、そこまで以前の姿とは変わらないものの、確かにバージョンアップしたと言えるような容姿の変更が成されていた。


「おっ…?なかなかいい感じの得物んなってくれとる…なぁ……って、はずいわぁ!?」


 操の腰に提げられていたのは、ドスというよりは脇差といった感じの長さをした刀だ。

 侍がよく二つ刀を提げているのを見るが、それの短い方、と言えば分かりやすいだろうか。

 普通に持つ事ももちろん可能だが、逆手に持って流すように切り裂いていく事に特化した形を取っているようだ。

 衣装の方はと言うと、ただでさえマンガに出てくるようなくのいち衣装だったというのに、布面積が減っているような気がする。

 デザイン性を重視し過ぎているだろうと思うような露出っぷりに、操は顔を真っ赤にして両腕で胸を隠す。

 胸は隠せているが、スカートと言うより腰布と呼べるんじゃないかと言う程短い下半身の方が露出度で言えば強烈だ。


「えぇっと………なんなのこれ…?」


 織姫の前バージョンだと、手足の如く使えていた衣が、今となっては更に派手さを増し本数も8本へ増えていた。

 これではまるでたこ足だ。

 だが不思議と織姫は、これら全ての使い方をまるで最初から知っていたかのように熟知していた。

 それら全てが手となり足となり武器となるのだ。

 衣装はと言えば、露出度のより高まった操とは真逆で布面積はむしろ多くなったと言える。

 元から貴族か王族の姫のような絢爛な衣装だったというのに、更に飾りが多くなっているように思える。

 だが重さなどは一切感じず、強いて言えばスカート丈が長い故にもたつく事もあるがその辺りは問題ないだろう。

 何故なら…


「…あ、これはいいかも…」


 衣の内の二本を触手のように足へ纏い、足の延長のように持って行く。

 すると先端部が細かく解け縺れ合ったかと思えば、あっという間にローラーシューズの出来上がり。

 使い方も走り心地もローラーシューズそのものだ。

 これならば機動性での問題はないだろう。


「おぉ!二人ともカッコいい!!」


「彦乃ちゃん!集中…」


「大丈夫みたいだよ?要はあっちこっち見てなかったら大丈夫みたいだから」


「なるほどなー……目移りしとったらあかんでー?…っと、来よったな」


 三人でお喋りしている間に、デブリは遂に墜落してきた。

 大通り沿いに立ち並ぶ住宅街の一つを呑み込むように衝突する。

 だが、衝突による爆発音や爆風なんかは全くない。

 それがまた、奇妙な感覚にさせるがそんな事を考えている場合ではない。


「へぇ……ああやって出てくるんだ…」


「他にも出てき方あるみたいやけどな」


 ユニットがめくれるようにして開き、それが下り坂の役割を果たし上をいくつもの「何か」が歩いて降りてくる。

 いくらか転がって落ちてくるのもいるようだが、大半は歩いているようだ。

 操が聞く限りだと、他にもデブリを撃ち出してくるタイプやユニットが分裂するようにしてデブリとなる物も存在するんだとか。

 まぁ写真とか見せて貰ったわけではないから確かな情報ではないが、どれも朱莉から聞いた話なので確実性は高いだろう。


「二人とも、準備良い?」


「もっちろん!!」


「ウチもええで?」


 三人とも、準備は万全だ。

 変身も済ませ、武器も手に持っている。


「スターライト・デルタ隊…出撃っ!」


『了解っ!』


 彦乃の号令により、この場所を、この街を守る為の戦いが再び始まった。   続く

何かご要望等ございましたら感想の方で書いて貰えると助かります

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