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星にネガイを  作者: シロクロウサギ
第一章 序章
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第十一話 コンペイトウ

年末年始で忙しかったこともあり、なかなか執筆する事ができませんでした。


 あれからどれほどの距離を走っただろうか。

 案外、渋滞に捕まったりであまり動いていなかったような気もする。

 外を見れば見慣れない場所を走っていた。


「……結局、だいたいの事は車内で全て話してしまいましたわね」


「デブリ…それにスターライト……そう言えば、初めて会った時に青星さんも言ってた…」


「そうだったわね……確か、あの時が初陣とか言ってたわよね」


「あっ、雲類鷲さん。お菓子ど~ぞ?」


「わぁ輝ちゃんありがとー!……んぅ~!おいひぃ!」


 狭い車内が、なんとも姦しい物となっている。

 運転手は男性だからなのか、それとも話題に突っ込みたがらないタイプなのか、彦乃たちを乗せてからほとんど何も喋ろうとしない。

 単に乗っているのが自分以外は年端もいかぬ少女のみだから遠慮しているのかもしれない。


「ではおさらいと行きましょう。まずはデブリからですわね」


「デブリってあれですよね?私達が戦ってたあのロボットみたいな化け物…」


「ええ。姿かたちは多種多様ですが、どれも「デブリ」という括りでは同じな筈です。それではまず…」


 そこからは勉強会の始まりだ。

 デブリ、その現れ方が隕石のように見える事と監視衛星などから探知されにくい事から宇宙ゴミであるスペースデブリから名前を取って付けられた種類。

 宇宙人との見解が強いが、機械的な姿を持つ事と地球に生息する生物の姿を真似ている事から一時期はどこかの先進国の秘密兵器だと言われる時代もあった。

 それ故に一般的には認知されておらず、その存在を知っているのはデブリを破壊する事を目的として設立された「コンペイトウ」という組織の関係者のみ。

 被害者たちがその存在を知らないのは、別に金を握らせて黙秘させているような訳ではなく本当に知らないのだ。


「でも、空が夜になっても普通に逃げ回ったりしてましたよね?」


「はい。ここで問題になるのは被害者の側ではなく、それを取り巻いている場所にあるのです」


 通称、EF。エジェクターフィールドと呼ばれる力場を発生させ、内部に存在する生物の「楽しい思い出」「将来の夢」といったプラス感情を生物体内で凝縮・粒子化して表出させ吸い上げる。

 これらはデブリの原動力になるとされているが、討伐してもEFが解かれると共に姿を消す為に研究は遅々として進んでいない。

 なにしろサンプルの入手が困難なのだから。


「……あぁ、黒い粉ってそういう物だったんだぁ!」


「……なんですって?」


「え?だから黒い粉って…」


「あなた達にはそう見えてるんですの?!」


 驚いたように座席を立つ雪菜だったが、すぐに恥ずかしくなってそっと元の場所へ座り直す。


「…聞きますが、一人でもその「黒い粉」が出ていれば、それは見えるのですか?」


「え?はい……ねぇ、織姫ちゃん?」


「えっ…私はある程度集まってくれてないと見えないよ?」


 織姫の言葉に、雪菜はある種の驚きを示す。

 というよりは何かを思いついたかのような顔になる。


「……確かに、これは思わぬ発見をしてしまったようですわね」


「ね~?だから言ったでしょ~?この人たちすごいんだよ~」


 二人が何を話しているのかは、ひそひそと話していたから彦乃たちには分からない。

 ただ、ずっと走り続けていた車が徐々に速度を落とし、どこかトンネルのような場所へ入って行ったのが見えた。

 もしかすると高速道路にでも入っていたのだろうか?

 なんて思っていると、子供のようにはしゃぐ者がいた。


「わぁ~!どこここ?!」


「ひ、彦乃ちゃん?!」


 そう、彦乃だ。

 元から神社住まいで旅行と言っても祖父の仕事絡みでついて行く程度だった彦乃にとって、遠出するという事だけでも彼女の心を輝かせるには十分だった。

 外を覗いてこそいたが、そこから見えるのはトンネル内によくある非常灯の列ばかり。

 普通ならそんなもの見ていても面白くは無いのだが、彦乃にとってはそれだけでもワクワクしているのだ。


「ふふっ……連れてきた甲斐がありましたわね?」


「あっ……す、すみません…」


「……!…お姉ちゃんも最初…」


「っ?!な、な~にを言い出すのかしらねこの子は~?!」


 他愛ない話に花を咲かせていると、どうやら到着したらしく車が完全に停止した。

 外を見ると、どうやら地下駐車場のようだ。

 他にもいくらか車が止まっているのだが、どう見ても高級そうな車ばかりが並んでいる。

 もしもこの場に車について詳しい人が居ればきっと目をキラキラとさせている事だろう。


「さっ、降りてくださいな?」


「は~い」


 ドライバーを務めていた男性が押したのだろうか、車の扉はタクシーについている自動開閉と同じように勝手に開いてくれた。

 そのまま車を降りようとした彦乃だったが、彼女の勘が告げてくる。

 「信用し過ぎるな」と。


「……?どうされたんですの…?」


「どうしたのよ?降りてくれなきゃ私たちが降りられないんだけれど…?」


「……うん、ごめんね」


 何かの間違いだろうと判断した彦乃が車から降りると、心の中で燻っていた警戒意識はどこかへ消え去っていた。

 だいたい、何を警戒する必要があったのだろうか。


「それでは参りましょうか」


「どこ行くんですか~?」


「我々のトップ、と言えばいいでしょうか…」


 それだけ言うと雪菜は踵を返して歩き始める。

 付いて行けば見えてきたのはエレベーターだ。

 最初からこの場で話すのではないだろうと思っていたが、言ってしまえば社長室へ案内されるような物なのだろうか。

 そう考えてみると心がワクワクしてくるのが、これまた彦乃だった。


=====


「こちらがそうですわ」


「……」


 いざエレベーターで上がって来てみれば、そこはなんてことは無い普通の会社と言った感じだった。

 まぁ、普通とは言っても大企業のエントランス部分なんかをイメージして貰えれば分かりやすいだろうか。

 スーツ姿の社員が行ったり来たり、インフォメーションでは女性スタッフが事務処理に対応に案内にと頑張っていたり、白衣姿の男女が数名、列となって歩いて行ったり、といった感じだ。


「…雲類鷲さん?何してるの?」


「ひゃぅ?!な、何でも無いよ…?」


 社内をぐるぐると見回していた彦乃が、美波に声を掛けられてその場で飛び跳ねてまで驚いた。

 きっとここ最近で一番強く驚いた事だろう。


「彦乃ちゃん、迷子にならないように手繋ごうね?」


「う、うん…ありがとう、織姫ちゃん…」


 扱いがまるで幼い子供に対する物のような気もするが、彦乃はそんな事などお構いなしに織姫の手を取る。

 二人がそうしている事が一番ベストな状態であるかのように、すんなりと二人は手を繋いで雪菜の後を追う。

 気が付けば無言で輝も美波の手をしっかりと握り歩くようになっていた。


「……そうですの?分かりましたわ…」


 途中ですれ違った黒スーツの男性と少し話していたらしい雪菜が残念そうな表情でこちらへ戻ってくる。

 対して話していた男性はいつの間にかその場から姿を消していた。


「会わせようと思っていた方が、急用で戻れなくなったそうですわ。なので、略式ではありますが私の方でテストをさせて貰います。よろしいですか?」


「テスト?」


「あっ…」


 向かう方向をすっかり変えて、エレベーター前でテストをすると伝えられた。

 では、これから向かう先はどこだと言うのだろうか?

 答えは乗ったエレベーターから降りればすぐに分かる事となる。

 青星姉妹が揃って何か気まずそうな顔をしていたが、何かを聞けるような雰囲気ではない。

 無言のままエレベーターがどんどん下へ降りて行き目的の場所へ到着した。


「さあ、ここがテストの場。私達スターライト用の訓練棟ですわ」


「わぁ…ひろーーーーーい!!」


「あ、彦乃ちゃん元気でた?」


「うん!私は元気だよ?!」


 五人が降りてきた場所。

 それは、学校にあるような体育館よりもずっと広いであろう大きな空間だった。

 横には控室らしきモノもあって、中からこの場所の様子を一望できるようだ。


「さて……おいでませ、カノープス…」


 胸のブローチに手を当ててそう呟くと、雪菜は光に包まれる。

 その後すぐに現れた雪菜の姿は、先程までの制服姿では無かった。

 戦国時代の武者甲冑と言えば少しはイメージ出来るだろうか。

 白を主体とした鎧に身を包み、手には薙刀を持つ。

 鎧とは言っても、動き易さを重視した上に女性用の物という事もあり本物の武者甲冑よりは軽装だ。

 とはいえ何も布切れと言う訳ではない。

 回避と言う点においては問題が残るが、身体を守るという点においては最適解と言えるかもしれない。

 まぁ、女性用とは言え無骨なデザインだとは思うが。


「さぁ、貴女方もメテオーブの展開をなさってくださいな?」


「え?どうして?」


「……そういう事ですか……分かりました…ベガ、お願い」


 雪菜の意図をいち早く理解したのは織姫だった。

 ベガを呼び、スターライトとしての姿へと己を変える。

 それと同時に「では…」と言って雪菜があっと言う間に彦乃を捕まえてしまう。

 軽装とはいえ甲冑姿からは想像も出来ないような素早さで、だった。

 そのまま彦乃の首へ腕を回して思いっきり締め付ける。


「ぁぐ……ゆ…きなさ……くるし…」


「っ?!竜天寺さん?!一体何を…」


「あなた方はそこで見ていなさい!」


 いきなりの事に驚いた美波が、首のチョーカーに手を掛けようとした所で雪菜と輝から同時に止められる。


「お姉ちゃん、私達はあっちで見てよう?」


「輝……分かった…分かったから」


 輝はそのまま美波を連れてその場の端っこの方へと引っ張って行った。

 心なしか輝がワクワクしているのを理解した美波は、もう彼女たちに従うしかない。

 ちょっとやり過ぎな気はしたものの、美波には止める事も出来なければ止めようとする事も出来なかった。


「さあ、琴羽さん?大好きな彼女を守るため、その力を振るって見なさい!」


「やめ……くるひ……あ、でもなんかいいかおりが…」


「彦乃ちゃんっ?!」


 織姫の驚きは、一体何に対しての驚きだったのか。

 彦乃が苦しんでいる事への驚きなのか?

 それとも、雪菜の「いいにおい」に釣られている事への怒りなのか?

 しかしそんな事を考えている猶予は無い。

 織姫は即座にベガを握って即座にトリガーを引いた。


「条件は一つ。私を倒して雲類鷲さんを助け出す事です。始めっ!」


 条件を提示しながらも、雪菜は織姫の銃弾を的確に薙刀で弾き飛ばしていた。

 時折美波たちの方へ飛んでいく事もあったが、美波たちの前で防弾ガラスに防がれて無力化されていたので流れ弾の心配はない。


「う……ぎぎ…」


「あぁ、もう!暴れないでくださいまし!」


 なんとかして拘束から逃れようともがく彦乃だったが、鎧へ肘打ちしてみても自分の方が怪我を負うばかりで効果は無い。

 蹴ろうにも身体が密着していて狙いがどうにも定まらない。

 頭突こうにも首から締め上げられているのでロクに届く場所も無いし、ヘタに動かすと首へのダメージが酷くなると自覚していた。

 こうなればと身体をジタバタさせてみるが、それがどうにもいけなかったようだ。


「っ!……ぁ……ぁぁあ!!」


「っ……いい加減に…っ!?」


 ブンブンと振り回していた腕が、弾丸を弾くために振り回していた雪菜の薙刀に掠った。

 ほんの少し掠った程度だったがあと少しタイミングがズレていたらきっと彦乃の腕はなくなっていただろう。

 そして彦乃へ注意が向いていた次の瞬間、雪菜の顔のすぐ横を弾丸が通り過ぎて行く。


「ナイス、彦乃ちゃん…彦乃ちゃん?!」


「うん……やった…よ…」


「なっ……まだ終わっては…」


 雪菜がテストを続けようとしたその時だった。

 広場全体に伝わるよう設置されているスピーカー全部から、雪菜や美波たちにとっては聞き慣れた声が聞こえてきた。


「おーい!ゆ・き・な!!なーーーーにやってるかーーーーー?!」


「っ!?」


 その声が聞こえると同時に、雪菜は彦乃を捕える手を緩め彦乃を解放していた。

 同時に身体が光に包まれ普段の制服へと戻る。

 織姫も銃を下ろしていつもの姿へと戻っていた。

 どこから見ていたのかと思っていたが、声の主はどうやら上の階にある管制ルームから見ていたようだ。

 暫くするとその声の主は、ある人物を従えて降りてきたのだった。

 その人物と言うのが…


「ケホ……うぅ、跡残りs…操ちゃん?!」


「鵠戸先輩?!どうしてここに…」


「なぁに、知り合いだったんだー?そ・れ・よ・り・もー?」


「っ!?」


「私が居ないのになーに一人で仕切っちゃってるのかなー?雪菜ちゃーん?」


 銀髪の長い髪を適当に流し赤い瞳を持った、見た感じ小学生の少女が雪菜の前に立ち頬を膨らませて怒っている。

 どうやら立場は雪菜よりも上らしく、雪菜はその場で頭を下げていた。


「申し開きもございません。私個人での採用審査を行ってしまった事は本来ならば…」


「あーもー!そういう事言ってるんじゃ…ないんだよっと!」


「んひゃう!す、周防社長?や、やめ…んぅっ…」


 やってしまったという感情に気がめり込むほどに滅入っていたであろう雪菜だったが、それも少女の手だけで全てが解決してしまう。

 少女の手が、雪菜の起伏に乏しいその胸を、鷲掴みにして思いっきり揉みしだいた。

 まるでパン生地でも捏ねるかのように執拗に行われる出来事に、雪菜はその場へヘタリと座り込んでしまう。


「なんで審査なんてしてるのさー?私と顔合わせてスターライトだったら即採用!いっつもそうやってきたでしょー?って言っても、まだ日の浅めな雪菜ちゃんにはちょっと分からなかったかな?」


「あ~!やっぱり朱莉ちゃんだ~!」


「ん?って…てーるー!私の事は朱莉ちゃんじゃなくて周防社長と呼べと言ってるでしょうがー!」


「きゃ~!朱莉ちゃんが怒った~!助けてお姉ちゃーん!」


「ふぇ?!あ、あの社長?」


 一通り雪菜へのお仕置きが済んだのか、朱莉と呼ばれた少女は悪戯っぽく笑うと輝へのお仕置きへとシフトした。

 その頃にもなると雪菜は息も絶え絶えになって乙女がしていてはいけないだろうという程に蕩けきった顔になっていたが、そっとしておくのが一番だろう。

 「私は栄えあるα隊のメンバーで…誇り高い…」とかそんな感じの事をブツブツと言っているがここで声を掛けるのは酷というものだ。

 朱莉に追い回されている輝はというと、美波へ助けを求めるべく彼女の背後へ隠れていた。


「ふっふっふー、追い詰めてやったぞ小娘めー!」


「お姉ちゃん助けてよー!朱莉ちゃんに捕まったらあ~んな事やこ~んな事されちゃうよ~…」


「ちょ、て、輝っ?!どこでそんな言葉…ふぁ!ちゃ、ちゃちょー!?」


 と、まぁそこから色々な事がありまして…だいたいはお見せできません。

 文章にするとどこからともなく削除命令とか出されそうなので。


「しっかし……大変やったみたいやな…」


「って、そうだ。操ちゃんはどうしてここに?」


 もうすっかり回復した彦乃が操の元へ駆け寄って彼女の状況を聞いてみる。

 少し前のメールが正しい物だとするならば、大学のキャンパス筈ではないのか。


「おん?大学の見学?あぁ、終わった後にそこのチビちゃんに…」


「周防!」


「…周防社長に声掛けられてな。「世界を救ってみたくはないか?」ってな?」


 未だに青星姉妹を弄り倒している(襲い掛かっているとも)朱莉が、まるで全部聞いているかのように操の言葉をリアルタイムで注意してきた。

 彼女が跨っているのは椅子などではなく、顔を紅く染めて息も絶え絶えになって悶えている美波だった。

 涙目になって輝と朱莉から執拗に身体中を弄られているのが見て取れる。

 どこから取り出したのか、羽ペンやねこじゃらし、マジックハンドなんかが床に転がっているのも見えた。

 何をされているのか大体これで察する事が出来るだろう。

 彦乃は頭に「?」を浮かべていたが。


「…っと、挨拶がまだだったね。私は彼女たちの…まぁ、先生みたいな物かな。周防朱莉、この会社の社長やってます!わが社へようこそ、雲類鷲彦乃さん?琴羽織姫さん?」


 こうして、彦乃たちは荒れ狂う波のような場の流れに巻き込まれながら、気が付けば会社の一員になってしまっていた。

 一体全体、どういう事なの…?  続く

今までは気ままに書いてましたが、個人的見解から期間を設けた方が執筆も捗ると分かったため、【毎週水曜日更新】とする事としました。更新されてなかったらまぁ…書けてるけど欠けてるんだなとでも思っておいて貰えると恐縮です。

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