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1 過去からやってきたワクワクするもの(1)

 まだ眠いのに、容赦なく鳴り出す目覚ましアラーム。

 ここは夢。アラームは現実からのお迎えの音。

 こんなにも甲高い嫌なノイズだけで、連れ戻されるなんて。

「ガイ、今日も目覚ましの設定を、学校ギリギリまで移したでしょ!」

 はいはい、分かりました。毎晩毎晩、俺が目覚ましの設定を動かしてます。

 母さんが階段を2階まで上りきって、ドアを開けるまでの間に起きればいいんでしょ。

 17歳になったんだから、タイミングも分かっているさ。

「いま起きた」

 ここでようやく目を開く俺。そして普段通り飛び込んでくる朝の景色を目にする。

 あぁ、いつも見る朝日が部屋を照らす光景。


 いつもの景色じゃない。


「な……、なんだよ、これ!」

 朝日が差し込むはずの俺の部屋に、日陰ができていた。

 窓の外に、見慣れない「建物」が「建って」いる。たしか、寝るときにはなかったはずだ。

「ガイ、どうしたの?……!」

 俺の母さん、レイ・バトルウィンが勢いよく部屋のドアを開けて、腰を抜かした。

 なんてことない、俺の部屋の窓から見える視界を、そいつが全部遮っているんだから。

「母さん、さっきから俺の家にこんなの建ってるんだけど、知らない?」

「頼んだ覚えなんかないわよ」

「じゃあ、いったい俺の家の前に何が建ってるんだよ……」

 おそるおそる、窓に額を近づけてみる。


 上を見る。屋根かと思ったら、目っぽいものや口っぽいものがついてる。

 居場所を確認しているのだろうか。首がゆっくりと左右に動いている。


 下を見る。2本の足で、庭をしっかりと踏みしめている。

 この場所から飛び立ちたいのだろうか。足に力が入っている。


 少し回り込んで脇を見る。いろいろな武器が格納されている。

 中身までは分からないけど、明らかに何か強そうなものが格納されている。


 嘘だろ……。これ、ロボットじゃん!

 てか、これだけ大きいんだったらスーパーロボット決定!

 身を乗り出して、俺の仮説が当たっていることを確かめる。

「母さん、スーパーロボット!スーパーロボットだよ、これ!」

「嘘でしょ!」

 信じていない母さんに、両手のジェスチャーで必死にアピールする俺。

「嘘じゃないよ、これ!……俺が夢でも見てるんじゃない限り」

「本当に?」

 母さんが俺の横に立って、俺と同じような首の動きをする。

 嘘だと否定したはずの母さんも、すっかり口を閉ざしてしまった。

「ガイの言う通りだわ……。でも、どうしてここにいるの?」

「俺にも分からない……。ちょっと、もう一度確認してくる」


 スーパーロボット。

 それは、俺のいるノースステイトからは、7年前にいなくなったはずの存在。

 このコロニーの南側を支配するサウスステイトに、1機残らず全て破壊されたはずだ。

 今や、スーパーロボットと言えば、「敵国」を示す「S」の記号が入っているものだけだ。

 もしこれがスーパーロボットなら、何故俺の家を攻撃してこない?

 どうしてずっと突っ立っている?


 ロボットを刺激しないように、低い姿勢でロボットの肩を見る。

 ついているのは、Nの記号だった。ノースステイトのものだ。


 思わず口に手を当てて、母さんに振り向く俺。

「母さんNだ……!ノースステイトの、Nだ!」

「すごい……!じゃあ、このステイトでもスーパーロボットの製造が再開されたってことよね……!」

「それは分からない……。てか、何のためにここにいるのかを、俺ちょっと聞いてくる」


 期待100%で階段を駆け下りる。

 何と言っても、俺は「Rヒューマン」の生き残りだからさ。

 スーパーロボットの操縦に特化されている人種で、DNAがそう改造されている、と親から聞いている。

 もちろん、会話だって出来る。

 「Rヒューマン」は、スーパーロボットと共生していくために生きている。

 だから、こんなにも俺がそれであることを喜べる瞬間なんてない。


 緑の芝が生い茂る庭に出て、突然舞い降りたスーパーロボットの前に立つ。

 すると、オートで動いているのか、ロボットの顔が俺の方を向き、その細い目から熱い視線を俺に注いでいる。

 すぐさま、低い声で俺に言った。


 ――そこにいるのは誰だ?


 スーパーロボット特有の、クールで機械的な声。

 久しぶりに聞いただけで、体が一瞬震え上がる。

 俺だって負けちゃいけないさ!

「俺は、ガイ・バトルウィン!スーパーロボットを操れる『Rヒューマン』だ!」


 ――ガイ・バトルウィン……か。俺の記憶にない「Rヒューマン」だな。


 記憶にない……だと?そんなバカなことあるわけない。

 ロボットの頭脳には、最初に遺伝子改造された人から数えて全ての「Rヒューマン」の情報が叩き込まれているはずだ。

 勿論、俺の名前だって17年前に生まれたときに、一斉アップロードでインストールされているはずだ。

 データがないとなると、少なくとも17年間はデータが更新されていないことになる。

「インストールされていないのか。分かった。じゃあ、せっかく出会った仲なんだ。そっちも名前教えてくれ」

 俺のほうがデータベースで見たことのある名前のロボットか。否か。

 さぁ、どっちだ。


 ――俺の名は、ビクトリーバーサス。「AERO」第11戦闘ロボットだ。


 ビクトリー……?バーサス……?

 いや、確かにその名前のロボットを見たことはあるんだ。

 「AERO」というスーパーロボット専門の軍隊も勿論知っている。

 ただ、俺の知っているのが第70戦闘ロボットとかそのあたり。

 そう考えると、第11戦闘ロボットはあまりにも昔のロボットだ。

 記憶している限り、たぶん120年ぐらい前の……。


 明らかに時代が違いすぎだ。

 おかしい。あまりにもおかしい。

 悩み悩んで、ビクトリーバーサスに聞いてみた。

「ビクトリーバーサス。その名前は知っている。けれど、どうしてここにいる……?」

 俺、すごく声が小さくなってきた……。緊張している。

「どうして……、昔のロボットなのに、俺の前に立ってるのか……」


 ――昔……?俺の方こそ、どういうことか知りたい。


 ビクトリーバーサスだって、分かっていないようだ。

 どっちも、状況に混乱している様子だ。

 でもここは、俺の方が落ち着くしかない。

「今、俺がいるのは、ASC159年のノースステイト。きっと、ビクトリーバーサスは、未来の世界にやって来てしまったんだ!」


 ――ここは、ASC37年の世界ではないのか……。


 あぁ、やっぱりそうだ!

 ビクトリーバーサスは、やっぱり122年前の世界のロボットだった。

 考えられるとしたら、122年間ずっと破壊されることなく生き延びてきたか、それとも過去の世界から何かしらの方法でやって来たか。

 それは、今の俺には分からない。ビクトリーバーサスだって、分かっていない。

 やっと出会えたスーパーロボットなのに、次にどう返せばいいかすら分からない。


 しばらく悩んでいるうちに、ビクトリーバーサスの口がゆっくりと開く。


 ――ガイ・バトルウィン、教えて欲しい。「AERO」はどこだ。


 めっちゃ答えづらい質問が、キラーパスでやって来た。

 いや、当然尋ねられる質問だろうとは思っていたが、俺にはどうすることもできない。

 かと言って、ビクトリーバーサスにこのまま黙り続けたり、背を向けたりすることなんて俺のプライドが許さない。

 言うしかなかった。

「ごめん、もうないんだ!」


 ――「AERO」はどこに行った。俺の帰る場所なんだ。


 スーパーロボットのくせに、というのは失礼かも知れない。けれど、目の前で俺と話しているこのビクトリーバーサスが、どうにも納得していない様子だ。

 俺は、軽く下を向いた後、勢いよく首を上げる。

「聞いてくれよ、ビクトリーバーサス。今のノースステイトには『AERO』なんてものはないんだ!」


 ――「AERO」がない……。なら、自力で探すしかないようだ。


 ビクトリーバーサスの両足にグッと力が入り、足裏にあるスラスターが今にも機体をはるか上空にまで突き上げそうな勢いで燃え上がり始めた。

 でも、これはないんじゃないか。

 ビクトリーバーサスの頭から足まで一気に見下ろす間に、明らかに敵の攻撃を受けた跡のようなものが、何ヵ所、いや何十ヵ所も見つかっている。

 もちろん、空へと舞い上がろうとしているその足さえも震えていた。


「いまこの状態で飛び立つのは危険だよ!ビクトリーバーサス!」


 こんな言葉なのに、すごく大きな声で言ってしまった。

 言ってもムダかも知れないけど。


 ――なら、ガイ・バトルウィン。「AERO」ではないこの場所で何が出来る。


 飛び立とうとしていたビクトリーバーサスが、足の動きを止めて俺を見つめていた。

 これが正真正銘、最後のチャンスだ。

 俺は、うなずいた。

「俺が、お前を修理してやるよ!簡単な修理しかできないけど、戦える体にはしてやる!それに、もし望むなら、『AERO』に帰るあてを探してやるよ!」


 ――分かった。


 こうして、俺とビクトリーバーサスの「伝説」は始まった。

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