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# プロローグ
白い光が消えた。
道路を挟んだ向かいのアパート。その二階の外廊下から白さが引いていくのを見届けて、男はようやく息を吐いた。
「危なかったな」
声は、自分で思ったより平坦だった。
ついさっきまであれほど慌ただしく動いていたのに、夕暮れの住宅街はもう静まり返っている。
助手席に置いていたファイルを取り上げた。
何枚かめくり、一枚戻して手を止める。
上から順に、指でなぞっていく。いくつか過ぎたところで、指が止まった。
朝倉朔也。
胸ポケットからペンを抜き、その名前に一本、横線を引いた。
それだけでファイルを閉じる。
少しだけ口元を緩めて助手席へ戻すと、そのまま車を出す。
低いエンジン音が住宅街を抜け、やがて遠ざかっていった。




