好感度氷点下スタートですか?-1-
「おはようございます、リリアーヌお嬢様。」
「…は?」
いやいやいやおかしい。
私はリリアーヌなんて名前でもなければ、お嬢様なんて立場でもない。
というか目の前にいる金髪に藤色の瞳の美女は誰。
なんか見慣れないー画像とかでは見たことあるけど、実物は見たことがない英国式メイド服のように見える衣服を身に着けているのは何故。
「リリアーヌお嬢様?」
声をかけられているのはわかるのに、声がうまく出ない。
だって、違和感や、不思議なことよりも真っ先にこわい、と思う。
その美しい藤色の瞳がひどく、冷たい。
冷たいどころか、なんか、嫌われてるよりも重たい感情がそこにあるように見えるんだけど…。
え?この人何?誰なん?
「え…と…。……どちら様?」
「……。…メイドの名前など覚える必要もないと。」
「え!?」
ええええええ。え、そんな毒はくの!?メイドが?こっわ、怖!
「いかがしましたか?」
「…いえ。」
今、何も私は言ってませんよ、みたいな目で聞かれたけどばっちり聞こえてるから!
むしろこの距離感で聞こえないはずないから!
「メイドのマリアージュにございます。以後お見知りおきを。」
「あ、はい…。マリアージュさん、あの先ほどから人間違いしてませんか?」
「はぁ?」
初対面ではないみたいに言われてるけどこれたぶん人間違いだよね?
なんか声とかいろいろ違和感あるけどいくら何でも初対面でこうやって嫌味を言われるわけがないし。
私にそっくりな誰かのことが非情に嫌いってことしかわからん。
だから、向こうが喧嘩を売ってくるならこっちだって優しい対応なんて不要だろう。
「あの、リリアーヌお嬢様って誰のことですか。私リリアーヌでも、お嬢様でもないんですけど。」
「…は?」
何言ってんのあんたって顔されたけど、知らないものは知らないし。
冷たくそう言い放ってじっとマリアージュを睨みつける。
「一時退室させていただきます。」
そういってマリアージュが部屋から出て行った後、しばらく戻ってこないことを確認して、状況把握をするために、自分の体を見渡す。
さっきから違和感のあった声、まるで、子供みたいだった。それも幼い。
腕を見る。―子供の腕だ。
体を見る。―見慣れないワンピースのような寝間着を着ている子供の体だ。
嫌な感じがする。
「鏡、かがみは、…」
広すぎる大きなベッドや豪華すぎる部屋の装飾、低すぎる視界を見ないふりをしてふらふらと姿見の前に立つ。
見覚えのないきれいな顔立ちの4歳くらいの少女がそこにはいた。
黒髪、黒の瞳、そこは元とは変わらない、けれど白すぎるその肌の色は元の色とは異なるものだ。
元の私は、日本人で。肌の色は日焼けしやすかったから肌は焼けていた。
年齢は24歳だったけど甘えた世間知らず箱入りという感じで、
そして何より髪を染めてパーマもあてていた。
どう考えても髪の色も、人種も、年齢も、全くの別人だ。
あ、これ夢か!
「いっ…。」
試しに頬をつねってみたが、とても痛い、現実としか思えない。
「う、嘘だよね?夢じゃないとかないよね?」
その場に思わずへたりこむ、そしてそのまま複数の足音が自室に来るまで呆然としていた。




