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十一話 フクロウの宿り木

「この宿は比較的きれいで、食事もまずまずといったところですね」


「ほほう」


 俺は今、アルベルトさんの案内で本日の宿を探していた。

 今の時間帯は正午をだいぶ過ぎたところで、夕方にはちょっと早い午後4時頃じゃないかと思う。

 俺がしばらく滞在する場所として選んだのは、アルベルトさんおすすめの宿を何軒か紹介してもらったなかのひとつ、【フクロウの宿り木】だった。


「おひとり様かね?」


「はい」


「1人部屋は一泊大銀貨2枚だよ。期間はどうする?」


「ではとりあえず、1ヶ月で」


 一泊大銀貨2枚は日本円でいうと、2000円といったところか。カプセルホテル並の値段だ。相場よりはほんの少し高いらしいが、少ししか変わらないなら飯が美味い方がいい。ここの女将さんはアルベルトさんの知り合いでもあるようだったしな。

 1ヶ月分の宿代をまとめて受付にいた女将さんに支払うと、部屋へと案内してもらった。


「お客さん、運が良かったね」


 女将さん曰く、昨日までは満室だったけど今朝突然街を出る事になった冒険者が居たらしい。

 案内してもらった部屋は4畳半ほどの広さで、決して広くはないがベッドをロフトタイプにすることで空間をうまく利用しているようだった。


「風呂は別料金で一回銀貨2枚。食事代は部屋代に入っているから時間内に食べに来な。 あと、厠は外にあるからね、くれぐれも酔っ払ってその辺にしないように」


 たいして酒が飲めない俺には縁遠い話だが、中にはそんな奴もいるんだろうな。トイレが外にあるのは難点だが。

 風呂代はその度に徴収するらしいのでとりあえずそのままで良しとして、アルベルトさんの店で買った替えの下着と服を数着、あとはさっきまで着ていた寝巻きも取り出しておく。


「ちょっとごわごわするけど、まぁいいや」


 アルベルトさんがお安く売ってくれた服は若干動きにくくちょっと独特な肌触りだったが、妥協範囲内だ。

 俺の手荷物はそれくらいなので、荷物チェックはこれで終わった。


「はぁ、眠くなってきたな」


 本当ならもっと状況確認とか、色々やるべきことがあるのかもしれない。けどもう今日は色々あり過ぎてちょっと疲れてしまった。

 居酒屋も兼業しているこの宿では夕飯も結構遅くまで食えるみたいだし、ちょっとひと眠りする事にしよう。


 本来であれば、今頃は買っただけで結局やれていなかった積みゲーを消費しているか、もしくはテレビや漫画といった娯楽を自宅で一日中満喫していたはずだった。

 それが何の説明もなくこんなところに連れて来られて、神様って奴はよっぽど俺をニートにしたくないらしい。


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