頼もしい味方:アレクサンダー
【僕は遅れていくから、先に向かっていて。Byレノンバルト】
屋敷からレノンバルトの魔法を持って、転移させられた先は森の中。
彼方此方から漂う殺気の満ちた獣の気配からして、此処が不可侵の森であることは間違いないだろう。
警戒に剣を抜き、此処がどのあたりに位置するのか確かめようとして―――そこでようやくアレクサンダーは、少年の不在に気付いた。
一体何処に。
と、思わず眉根を寄せたアレクサンダーの頭上へ。
ひらりとタイミングよく舞い落ちてきた一枚のメッセージカードに刻まれていたのが、先の一文であった。
「……先に行け。か」
目指すべき場所は、凡そではあるが推測出来ている。
この森を抜けた先にあるのは、四つの国とその中心に広がる精霊の湖。
馬がいるとはいえ、少女の足で隣国にもう辿り着いているとは思えない。
(何より、あの時。―――少女は、精霊の湖に反応していた。)
太陽の下に見えた影と少年が見せた反応も併せて考えれば、恐らく少女がいる場所は精霊の湖だと考えるのが妥当である。
「……問題は、ここから如何向かうかだな」
精霊たちを頼ろうにも、魔気に中てられたのか怯えた様子で服の中から出てこようとしないのだ。
空を見上げても、鬱蒼と生い繁った葉々に遮られてしまい、太陽どころか木漏れ日一筋さえ望むことは出来ず。
闇雲に動いたところで、ただ無駄に時間を消耗するだけで終わることは想像に容易い。しかし、ここで策が思い浮かぶまで悩む時間も煩わしい―――と、逡巡するアレクサンダーの耳に、一啼き。
聞き覚えのある馬の嘶きが、届いたのだった。
間を置かずして現れたのは、艶やかな栗毛を靡かせる一匹の若い雄馬。
ご丁寧に馬具を加えて走ってきたらしい彼は、それをアレクサンダーの足元に放ると、早く乗れと言わんばかりに片足で土を蹴ったのだ。
「―――恩に着る。」
手早く馬具を装着し、アレクサンダーが跨ったのを確認するや否や、合図を出さずとも駆け出す馬。
その行く手を阻もうとする魔獣は容赦なく切り捨てつつ、手綱を握り直すアレクサンダー。
やがて、彼の前に現れたのは、広大で美しい湖。その畔にある小さな村だった。




