31. 謎のカラスの続き
私生活の色々が、とりあえず落ち着きました…。
これからは、小説が読めそうです。
修行をするため、山にやってきた佳奈子たち…。
山頂の祠にも、お参りをすませ、拠点へ向かうと、すでに、化け猫のウタが、修行の為の準備をして待っていた…。
しかし、ウタは、佳奈子たちが来るまでの間に、凶暴なカラスに、しつこく襲われていたらしい…。
その、あまりにも、しつこい、カラスの攻撃に困ったウタは、そのカラスを捕まえて、なんと、物干しざおに、吊るしてしまっていた…。
しかし、その「カラスを捕まえる」…という行為が、犯罪になる可能性があると分かる…。
それを知った佳奈子は、「逮捕されるかもしれない…!」と、恐怖に震えるのだった…。
「いやだ…!いやだ!いやだ!いやだ~!逮捕されるなんて、いやだ~!…手錠こわいよ~!取り調べこわいよ~!刑務所こわいよ~!逮捕されるなんて、いやだ~!」
佳奈子は、すっかりパニックになって叫ぶ…。
しかも、そんな風に慌てているのは、佳奈子だけではない…。
この場にいる化け猫たち…、タマとウタも、アワアワとして、取り乱していたし…、佳奈子の祖母である絹代も、必死に手帳をめくっては、顧問弁護士の休みが明ける日を探していた…。
ただ…、ネコの社員たち…、ワサビとイクラ、メカブの3匹だけは、この事態を、よく分かっておらず、不思議そうに、慌てる人々を見ていた…。
そうして、人々がパニックになる中、最初に行動を起こしたのは、ウタだった…。
「はっ!そ、そうだわ~!この事を知っているのは、私たちだけ…。だから、まだ、きっと大丈夫よ~!今から、このカラスを逃がしちゃえば~、今まで、捕まえていたなんて、きっと誰にも気づかれないわ~!」
ウタは、そう、焦りながらも言う…。
すると、それを聞いた他の人々も…、
「!そ、そっか…!」
「それもそうだ…!」
「そうしましょう…!そうしましょう…!」
そう言って、ウタの話に賛成をする…。
しかし、焦っている人々とは違い、冷静なネコたちは…「えっ?!ソイツを逃がしちゃうの…?!そんな事したら、ソイツ、また襲ってくるんじゃない…?!ねぇ!」…そうネコ語で訴えて、ニャー!ニャー!と鳴いた…。
けれど…、ウタたちは、そのネコたちの呼びかけにも、カラスが再び襲ってくる可能性にも、まったく気づく事が出来ない…。
なぜなら…、人は、パニックになると、視野が狭くなり、判断力が低下してしまうのだ…。
なのでウタたちは、色んな事に気づかないまま、話を進める…。
「と、とにかく~、こんなところを、巡回してるスズメちゃんたちに、見られるわけには、いかないわ~!スズメちゃんたちに見つかる前に~、カラスを縛ってるロープを、切っちゃわないと~!」
ウタは、そう言って、焦ったまま、道具箱から、巨大なハサミを取り出した…。
そして…、「いざ…!証拠隠滅~!」と言いながら、カラスが吊るされているロープを、シャキン…!と切った…。
すると、ロープが切られた途端、吊るされていたカラスは、真下へと落下する…。
しかし、下には、大きな石があって…、
ゴチンッ…!
カラスは、石に、強く頭をぶつけてしまった…。
すると、それまで暴れていたカラスは、急に、泡を吹いて、静かになる…。
途端に、シーン…となる現場…。
その様子に、佳奈子たちは異変を感じる…。
「あ、あれ…?なんかカラス、大人しくなっちゃった…?…まさか…、頭を打って、死んじゃったとか…?!ど、どうしよう~?!」
佳奈子は、そう言って、さらに慌てる…。
しかし、絹代は…、
「…いや…、足がピクピク動いているから、死んじゃあ、いないよ…。たぶん、頭を打って、気絶したんだろう…」
そう、推測を言う…。
すると、それを聞いたウタは…、
「!気絶…!それなら、好都合だわ~!今のうちに~、残りのロープも、切っちゃいましょう~!」
そう言って、カラスの足と、嘴を縛っているロープを、素早く切った…。
「…ふぅ~!これでロープは、ぜ~んぶ切ったわ~!これなら、もう、このカラスを縛って、吊るしていた~なんて、雀ちゃんたちに、バレる心配は、ないわよね~!」
ウタは、そう言って、額の汗をぬぐう…。
すると、それを見ていた、タマと佳奈子も…、
「そ、そうですよね…!もう、なんの証拠もないですもん…!きっと、バレたりしませんよ…!」
「う、うん…!きっと大丈夫だよ…!きっと…!」
そう、自分に言い聞かせるように言い、少しだけ冷静さを取り戻した…。
すると、冷静になって、視野が戻った佳奈子は、ある事に気がつく…。
「…あ、あれ…?…今、思い出したんだけどさ…、そのカラス、気絶しても、すぐに、起きるんじゃなかったっけ…?」
「!そ、そういえば…!」
ウタも、それを思い出し、はっ…!とする…。
「でも…、そのカラス、まだ、目を覚まさないよ…?…大丈夫かな…?…もしかして…、このまま死んじゃったりして…」
「そ、そんな、まさか~!きっと大丈夫よ~!だって、さっきまで、あんなに暴れていたのよ~?!今回だって、そのうち、目を覚ますわよ~!」
「そっか…。そうだよね…」
佳奈子は、ウタの言葉に安堵をし、カラスの目覚めを願った…。
一方…、すでに絹代は、冷静さを取り戻し、しゃがみ込んで、カラスの観察をしていた…。
そして…、
「…やっぱり、そうだ…」
絹代は、そう、難しい顔で言う…。
「?なにが、やっぱりなの…?おばあちゃん」
佳奈子は、不思議に思い、祖母に聞く…。
すると…、
「…ほら、見てごらん、カラスのここ…」
絹代は、そう言って、横向きに倒れている、カラスの肩あたりを指でさす…。
「?」
佳奈子は、なんだろう?と思いながら、身をかがめて、カラスを見た…。
すると…、
「…あれっ?なんか、そこだけ羽が赤い…?」
佳奈子は、すぐに気がついた…。
すると、同じく、身をかがめたタマが…、
「!いえ…!羽の内側にも、赤い所がありますよ…!」
そう言って驚く…。
「あ、ほんとだ…。さっきまでは暴れていたから、全然、気づかなかったよ…。けど、それって…、血の色…とは、ちょっと違う感じだね…。じゃあ…、ペンキでも、ついてるのかな…?」
佳奈子には、そんな風に見えた…。
しかし、絹代は…、
「いや…。この色は、血でも、ペンキでもないね…。自然の色だ…。きっと、こういう羽の色なんだろう…」
そう推測を言う…。
すると、その話に、ウタが驚き…、
「ええっ…?!自然の色…?!赤いテープが、ついてるんじゃなくて…?!」
そう言って、慌て出す…。
「ああ。テープなんか、ついちゃいないよ。ほら、よく見てごらん」
言われたウタは、すぐにカラスを確認した…。
そして…、
「…ほ、ほんとだわ…。この色は、自然の色だわ…。てっきり、登山道の、マーキングのテープをイタズラして、羽にテープがついたんだわ~って、思っていたのに…」
ウタは、そう言って、青ざめる…。
「なるほどね…。ステッカーの件で、思い込みをしたのかい…」
「…でもさ…、一部だけとはいえ、こんなに赤い羽があるカラスなんて、見た事ないよ…?よく見かけるカラスって、まっ黒だよね…?」
佳奈子は、普段見かける、カラスの姿を思い出す…。
「ああ。この辺で見かけるカラスには、赤い羽なんかないよ…。というか、こんな羽色のカラス、アタシも今まで見たことがない…。ひょっとしたら、こいつは、カラスじゃあ、ないのかもしれないね…」
絹代は、そう言って、考える…。
「えっ…?!カラスじゃないって、どういう事…?!」
「ん?だから、たとえば…、ムクドリとか、オウムとか…、そういう、他の鳥なのかもしれない、って事さ…」
「ああ、なるほど…。じゃあ、その鳥は、何の鳥かも、まだ分からないし…、「謎の鳥」…って事だね…」
「ああ」
「…でも…、羽の一部が、赤いのを除けば、まるっきりカラスですよね…。形も大きさも…」
タマが、そう、「謎の鳥」を見ながら言う…。
「…たしかに…」
「ああ…。どう見てもカラスだ…」
「…そう見えるわよね~。鳴き声だって~、カラスと、おんなじだったのよ~?」
佳奈子たちは、「謎の鳥」を囲んで、話し合う…。
すると、その時、突然、上空から…、「カァ~!!!」という、カラスの、けたたましい鳴き声が聞こえてきたのだ…。
「?!」
しかも、そのカラスは、なんと、佳奈子たちに、襲い掛かってきたのである…!
「カァ!カァ!」
バサバサバサ…!
嘴や爪で、佳奈子たちを攻撃してくる、一羽のカラス…。
「うわっ…!なに、このカラス…!」
「きゃ~っ!!!」
佳奈子たちは、カラスに頭を攻撃されて、パニックになる…。
しかし、絹代は…、
「くっ…!」
すぐに態勢を立て直し、羽衣を身構えた…。
しかし、絹代が、羽衣を使う前に…、
ガシッ…!
なんと、カラスは、気絶している「謎の鳥」を足で捕まえ、そのまま、飛び去ってしまったのである…。
…バサッ…!バサッ…!バサッ…!
カラスによって、連れ去られていく、謎の鳥…。
「………」
佳奈子たちは、この展開に驚き、口を開けて、カラスたちを見送った…。
そうして、カラスたちは、あっという間に、見えなくなる…。
「………。…謎の鳥…、連れていかれちゃったね…」
佳奈子は、呆然として言う…。
「ええ…。さっき現れたカラスは、「謎の鳥」のお友達だったのかもしれませんね…。お友達を助けるために、私たちを、襲ってきたのかも…」
「うん…。そうだね…」
佳奈子は、タマの話に同意をする…。
一方、絹代は…、
「…ふぅ…。まったく、人騒がせなカラスどもだ…」
そう言って、羽衣をしまった…。
「でも~、面倒事を持って行ってくれて、助かったわ~!すっかり忘れていたけど~、あの「謎の鳥」って、起きると、すぐに、襲ってくるのよ~」
「あっ、そういえば、そう言ってたね…」
「でも~、今はお役所の許可をもらってないし~、あの「謎の鳥」を捕まえる事も、殺すことも出来ないわ~。それなのに、また襲ってこられたら~、と~っても面倒よ~?だから~、さっきのカラスが、お仲間を連れ帰ってくれて~、ホント助かったわ~」
「そっか…」
「ま、とにかく~、これにて、一件落着ね~!もう問題は、な~んにもないわ~!」
ウタは、そう言って、満面の笑顔で笑う…。
すると、絹代とタマも…、
「ああ!これで心置きなく、修行が出来るね…!さっ…!修行の準備だ…!」
「はい…!」
絹代たちは、そう言って、荷物を運び始める…。
しかし、佳奈子は…、
「えっ?!みんな、切り替え早っ…!」
そう言って、戸惑う…。
すると、絹代が…、
「ん?何を驚いているんだい?佳奈子。お前も早く荷物を運んで、修行の準備をしな…!準備できしだい、すぐに修行を始めるよ…!」
そう、活を入れる…。
「…修行の準備…?あ、そっか…、これから私、すっ裸にならなくちゃいけないんだ…。…はぁ~。気が重いな~。…けど、やるしかないよね…。絶対に、力を制御できるようにならなくちゃ…。…よしっ…!やるぞ~!…あ、ねぇ!着替えって、どこですればいいの~?!」
佳奈子は、周りにいる家族たちに呼びかける…。
すると…、
「ああ~、それなら~、あのテントを使って~」
そう、ウタが、テントを指さす…。
「あ、うん、わかった~。じゃあ、あそこ、使わせてもらうね~」
佳奈子は、そう言って、テントへ向かう…。
しかし…、
「あ、まって~!佳奈ちゃん~!はい!これ~!持っていって~!」
そう言って、ウタが、なぜか、キャベツを手渡してきた…。
「?…キャベツ…?なんで、キャベツなんか…?」
佳奈子は、わけが分からない…。
すると、ウタが…、
「そのキャベツを~、体に貼って~!」
そう笑顔で言う…。
「…は…?」
佳奈子は、言われた意味が分からない…。
「ほら~、佳奈ちゃんは、これから修行で、すっ裸になるんでしょ~?けど~、昨日の夜、皆で、その話をしたらね~、そんな、すっ裸、ずっと見せられるのは、キツイよね~、って話になったのよ~。そんなの、ただ見せられても、全然、面白くもないし~。だから~、佳奈ちゃんには~、キャベツを体に張り付けてもらおう~!って事になったのよ~。どう?名案でしょ~?うふっ!」
ウタは、そう、自信満々に言う…。
しかし、佳奈子は、激しい衝撃を受ける…。
「はぁ?!それのどこが名案…?!なんでキャベツ…?!というか、すっ裸を、見せられるって、なに…?!見せられるって…!私だって、そんな格好、見せたくないよ…!何かを身に着けてもいいんなら、キャベツなんかじゃなくて、服を着せてよ…!服を…!」
佳奈子は、そう言って怒る…。
しかし、ウタは…、
「あ、服はダメよ~?だって~、これから、自然の力を感じ取る修行をするのに~、人工物の服は、邪魔になるかもしれないでしょ~?」
「そ、それは…。…あっ!でも、絹や木綿の服なら、天然繊維で作られてるし…、それだったら、修行の邪魔にはならないんじゃ…?!」
「ううん~、ダメダメ~。だって~、今回は、羽衣の必要性に気づくのも、修行の内なんでしょ~?服はないけど~、羽衣があって良かった~って~。それに、ああいう服って~、加工をされ過ぎているわ~。あれは、もう、人間界の人工物よ~。あんなのは、自然界には、ないでしょ~?」
「…そ、それは、たしかに…」
「でも~、キャベツは、ただの葉っぱだわ~。自然界にも、普通にあるでしょ~?つまり~、キャベツだったら~、修行で、自然の力を感じ取るのに~、全然、邪魔に、ならないはずなの~。ね?キャベツは、すっごい、名案でしょ~?」
「………」
「ねっ?」
「………」
「ねっ?」
「………」
「ね~?」
「…ふっ…。…なるほどね…。…わかったよ…。キャベツなら、いいんだね…。キャベツなら…。…ふふっ…、そうだね…、な~んにも着ないよりかは、はるかにマシだよ…。…キャベツを体に貼った方がね…。ふふっ…、ふふふふふっ…」
佳奈子は、もう自棄になり、暗い顔で笑った…。
その体からは、明らかに、黒いオーラが出ている…。
そうして、佳奈子は、キャベツを抱えて、笑いながら、フラフラとテントへと向かった…。
そんな佳奈子に、ウタは…、
「いってらっしゃ~い…!」
そう、明るく声をかけ、笑顔で見送ったのだった…。
一方、そのころ…、「謎の鳥」を連れ去った、あのカラスは…、山の開けた場所に、降りようとしていた…。
カラスは、まず先に、気絶している「謎の鳥」を、ゆっくりと地面に降ろす…。
そして、そのあとに、自分も、地面へと降り立った…。
しかし、その時…、なんと、カラスは、パッ…!と、人の姿に変身してしまったのである…!
その姿は、まるで、山伏の格好をした、少年のようであった…。
そして、その少年は…、
「ああ、アニキ…!なんで、こんなに弱って…!一体、何があったんです…?!さっきのヤツらに、やられたんですか…?!ねぇ…!起きてください…!アニキ~!」
少年は、そう言って、気絶している謎の鳥を掴み、ガクガク!と揺らす…。
すると、揺すられ過ぎて、具合が悪くなったのだろう…、謎の鳥は、口から、また泡をふく…。
「あ、あれ…?!なんか、さっきよりも弱って…?し、しっかりしてください…!アニキ~!」
そうして少年は、アニキと呼ぶ「謎の鳥」を、さらに激しく揺するのだった…。




