ガイアさんじゅうごさい
「……ガイア、どういうことですか」
休み時間になった瞬間、ルーナは反射的にガイアに詰め寄った。何故かシルバーフレームの眼鏡をかけているガイアは上品に笑う。
「学園でのお嬢様の補助のために編入させていただきました。従者枠での編入です」
「き、聞いてませんわ!! 」
〈ええ、聞いてないわよぉ! おのれセバスチャン……!〉
眼鏡をかけても滲み出るイケメンオーラに他の女子がざわついているが、ルーナが問い詰めているせいか近寄れないようだ。ミアとリズは流石にそばに来たが、あくまで主人であるルーナを優先している。
「今まで従者がいなくてもなんとかなりました。貴方の手を借りる必要は」
「それが、異常なんですよ。お嬢様ほどの高位貴族なら従者がいるはずなんです、本来なら。王宮からの指示とはいえ。なので今回私が派遣されました。ほら、背格好も近いですし」
丁寧に一礼する姿は確かに執事らしい。だが、リズがぼそっと呟いた。
「……でも、中身はもっと年上なんですよね。この前の話からすると。実際のところ何歳なんですか?」
「……ガイアさん、じゅうごさいですよ」
それは十五ではなく、三十五ではないか。半分目を逸らしながらにこやかに告げるガイアに意味が分かる三人はぞっとした。未来から精神だけこちらに来たから実際は年上だと思っていたがやはり。
〈ガイアさんじゅうごさい……うわぁ、一気に犯罪臭がしてきたわ……鳥肌立ってきた〉
元々整っている大人びた美貌だが、それはそれ。反射的に一歩後ずさると、アレクサンダーとブレイクがこちらにやってきた。
「ルーナ、その男はその様子だと貴女の所の使用人なのか?」
「……えぇ、セバスチャンの息子で新しく私につくことになった執事になります」
そしてガイアのことを上から下までジロジロ見つめ、やがてボソッと気に食わないように呟いた。
「……貴女はこんな胡散臭そうなのが好みなのか」
「いえ、誤解ですわ。護衛に美醜など求めません」
〈そうよぉ、だってこいつ、未来のアンタを殺そうとするやつよ? 過激派テロリストよ。ついこの間もミア・ベネットを暗殺しようとしてきた二代目天誅男よ〉
即座に否定したルーナにオネエが被せる。聞こえてきた物騒な言葉にブレイクの顔が青くなったが、オネエからすれば未来のお前も反体制側だから同類だぞ、という認識だ。
「その……そんな男に護衛をさせるとか、正気か?」
「ブレイク様、私も、そう思います。思いますが……セレスティア家のお考えですので……くっ……」
「ミア、さりげなく失礼ですわよ」
そして随分二人も遠慮がなくなってきたな、と思いつつ、ガイアの様子を伺う。さて、未来でのターゲットが目の前に来た訳だが、この男はどう動くのか。と、にこにこしていたガイアが不意に眼鏡を外した。そして流し目でアレクサンダーを見据える。
「これで少しは胡散臭さは消せますでしょうか?」
あっ、確信犯だ。
眼鏡を外した瞬間、周りの女子生徒の様子が豹変した。黄色い悲鳴をあげるだけならまだいい、中には気絶する者までいる。あまりに異様な様子に流石のアレクサンダーですら言葉を失う。ふぅ、と色気を垂れ流しながら再び眼鏡をかけ直したガイアは首を振る。
「この眼鏡は自動的に俺の魔力の一部を使って日常生活を送れる程度の認識阻害を発動させるものなので、この通り気軽に外せないんですよね……胡散臭いのは許してください、殿下」
「……ルーナ、本当にこの男に護衛をさせるのか?」
改めて確認され、少しばかり自分の決意が揺らいだ。
「あっ、これは売れる……殿下とガイアの嫉妬から始まる泥沼恋模様……イケメンとイケメンの絡み……!」
そしてリズは通常運転だった。




