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122-3

 立派な人だな、ホライゾンさんは。

 彼の抱く理想を聞いた俺は彼に大きな信頼を抱いたのだった。


 それから俺たちは帰還派を説得するべく次なる行動に――出なかった。

 では、なにをしているかというと、モニターと呼ばれる、端末を大きくしたような長方形の物体の前に座っている。

 モニターには剣を持った勇者が映っていて魔物と戦っている。


「すごい! すごいのじゃ!」


 スセリが喚起しながら手元のコントローラーなる道具を操ってモニターに映る勇者を操作している。

 つまり、ゲームで遊んでいるのだ。

 旧人類の最新鋭のゲームにスセリは夢中になっていた。


 それも仕方ない、ふだん端末で遊んでいるゲームとは比べ物にならないくらいこのゲームは写実的で、まるで本物の世界を冒険しているかのようだ。

 とはいえ、魔物との戦いならいつも嫌というくらいしているのだがな……。

 勇者は剣と魔法を巧みに操って魔物と戦っているが、正直、スセリ本人のほうがよほど強いだろう。この屈強な牛頭の怪物も彼女が「炎よ」と唱えた瞬間、消し炭と化すのは間違いない。


「スセリさま、時間になりましたわよ。プリシラに交代してくださいまし」

「い、今いいところなのじゃよ」

「あはは……」


 プリシラが苦笑いしていた。


 旧人類の生活は娯楽が充実していた。

 なんとゲームは1000も2000も種類があり、一生かかっても遊びきれない。

 ゲームだけではない。読書や運動、料理、ギャンブルなど、人々の人生を充実させる趣味が『アガステア』には山ほどあった。


「科学が発達した僕たちは多くの仕事を機械に任せられるようになって余暇が増えた。その持て余した時間をどう活用するかが新たな課題になってたのさ」

「うらやましいですね」

「けれど、あまりにも個人の生活が充実しすぎて、社会への帰属意識が薄れてしまったのは大きな問題になったよ。『未来のため』『国のため』なんて口にしたら、すっかり笑われる風潮になってしまったんだ。それどころか、思想の偏った危険人物扱いだよ」


 ホライゾンさんが皮肉っぽく肩をすくめる。

 豊かになったらなったで、新たな問題が生まれるのか。

 ゲームのほうに視線を戻すと、ようやくスセリがコントローラーをプリシラに渡したところだった。


「スセリちゃん、ありがとう」


 ホライゾンさんがスセリに礼を言う。


「僕のゲームを毎日遊んでくれて」

「うむ、なかなか面白いのじゃ。ワシも1000年前に生まれたかったのう」

「ホライゾンさんはどうして旧人類が地上から滅んでもゲームの運営を続けていたんですか?」

「それは……」


 しばらく言いよどんだ後、彼は続ける。


「贖罪、かもね」

「罪滅ぼしですか」

「キミたちは1000年前、僕たちが宇宙に旅発つときに置き去りにした被差別階級の子孫。そんな彼らにせめてもの楽しみを、という理念のもと、何度も運営者の代替わりを繰り返しながらゲームを存続させ続けてきたんだ」

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