いつも通り
ブックマークありがとうございます!頑張って書きますね…
曇天、まるで自分の心情を表したかのような空だ、昨日のことを考えると当たり前のことかもしれないが。
克也と凛が一緒に買い物をしていた、二人にはほとんど接点は無かったはず、なのに凛の顔は生き生きとしていた。俺と出かけたときとは大違いだ。
二人は両想いなのだろうか、俺に秘密で付き合っているのだろうか、グルグルと頭の中で反響する自分の女々しい考え。
仕方ないじゃないか、好きな人が一番の親友と浮気しているかもしれないというのに。
そもそも俺と付き合ってくれてるのが不自然なんだ、まだ克也に近づきたかったから嫌な気持ちを押さえつけて付き合ってくれていたのだろう。
こんな男か女か分からない容姿のやつに夢を与えてくれたんだ、怒ってはいない。ただ、悲しかった。
そんなことを考えながら登校する、何故か今日は克也と会わない、まさか凛と登校してるのだろうか。
教室に入ったら克也におめでとうって言おう、あいつは俺とは違って良い奴でスポーツも勉強も気配りも何でも出来るやつなんだ、素直に応援してやろう。
自分に言い聞かせるように考えを反復させる。虚しい気持ちと激情に封をするように。
学校に着いた、いつもより早く着いた気がする、いつも通り靴箱で靴を履き替え、いつも通り階段を登る、そこに悲しみは無い、あるのは虚無感。
思っていたより堪えていたようだ、いつも通りの挨拶をするためにいつも通り教室のドアを開ける。
そこには、凛と克也が一緒に笑いながら話している姿が見えた。
それを見た俺の《いつも通り》は容易く砕け散った。
「おっ!昴おはよう!」
「おめでとう!」
笑顔で、笑顔で言う。そうしないと酷いことをいってしまうから。
「何言って...」
「凛もおめでとう!克也とだなんて全然知らなかったよ!」
「え...」
「ちょっとお前本当に何言ってん...」
克也が焦ったように言う、別に焦らなくてもいいのに、もう、諦めてるから。克也なら仕方ないって。
「昨日見たんだ、一緒に買い物してるとこ、楽しそうだって思ったよ、純粋に。俺との買い物のときにはあんな顔してなかった凛がまさかなぁ…」
「違う!昴、聞け!」
「うん!違うの!」
「はは、わかってるって、ていうか凛のそんな顔初めて見たよ、俺」
本当のことを言ってくれていいのに、何で誤魔化すんだよ、俺は何でこんな悲しいんだよ、嫉妬しないっていつも通りって決めたのに。大丈夫、いつも通り耐えるだけ。
「俺、そんな気がしてたんだ、いつかこんな日が来るって、そりゃそうだよな、俺がこんな可愛い子に好かれてるなんて万が一にも、億が一にも無いことなんて少し考えれば分かるのに!」
ああ、言ってしまった。克也達は何も悪くないのに、悪いのは俺だ、凛を引き止められるだけの魅力が無かった俺にあるんだ。もう嫌だな、こんなことになるなら俺だけ違う世界に生まれれば良かった。
そうすればもう少しだけマシな人間になれてただろうか。
そんな俺達の足元に妖しく光る魔法陣が現れた。
このときほど世界を恨んだことはないだろう、世界というか異世界だが。ここから始まったんだ、俺の勘違いで、世界を巻き込んだ復讐劇が。