第1話 奇襲
スタフィ城広場への扉をケンは開けた。
そこには99人の受験者と、近衛騎士がいた。
扉を開けたケンに全員の険しい視線が集まる。
「(うっ……思っていた以上に空気が重い。
だがここで折れるのは論外だ。)」
だが深呼吸し、一人一人をよく見れば、力量差を感じることはなかった。
ケンが最後の受験者だったので、一人紫髪の騎士が壇上に立った。
その騎士が現れた時、広場の空気に重圧がかかる。
騎士の名はレオン、シールド王国近衛騎士団の副団長だ。
「全員集まったことで、これより試験の説明をする!!」
近衛騎士団入団試験は最初に体力試験、そしてサバイバル試験、最後に決闘試験が行われる。
体力試験は、シンプルに基礎体力を問われる。
サバイバル試験は、二人一組で構成される。
一人が護衛役となり、もう一人は王族役を行う。
王族役は王冠を被り、その王冠を相手に取られると失格となる。
護衛役は相手の王冠を取ることは出来ないため、王族役が攻めなければならない。
なお、護衛役が再起不能となった場合、失格となる。
最後の決闘試験は、一対一の一騎打ちだ。
トーナメント形式で行われ、上位8名が合格となる。
試験の概要は以上の通りである。
そして、レオンの説明はまだ続く。
「なお、今回の入団試験は例年と違い、特別な試験となる。
今回の試験の目的は、シールド王国次期王女「アイリス姫様」の直属騎士を選出させることである!!」
実はこの時、シールド王国の王女の席は空白であり、アイリス姫が未成年だったため、戴冠していなかった。
そして、アイリス姫が今年、成人になった事で戴冠され、正式に王女の座に着かれる。
「アイリス姫様の騎士への条件は、最後の決闘試験の首席のみである!!
そして、失格となった不合格者には身分を剥奪し、奴隷とする!
以上で説明は終わりだ!!健闘を祈る。」
レオンの説明は終わり、いよいよ試験は始まる。――
――今回の試験で、ケンやジャックには特別招集として推薦枠で受験したため、体力試験は免除される。
よって、試験はサバイバル試験から始まるのである。
サバイバル試験は二人一組のペアだが、ケンのペアとして、一人の女性がやってきた。
彼女の名前はルイ、ボーイッシュな髪型をしたクール系の女性だ。
「私の名はルイ、よろしくなケン。」
ルイは握手をしようと手をさし出す、それに応えてケンも握る。
「僕の名はケン。護衛役は僕のようだね。」
「そのようだな、私には冠が配布されたからな。君の護衛を期待するよ。」
ジャックのような性格ではなく、信頼関係を築けやすそうだ。
だが彼女にはどこか、深い闇を感じる。
握手した時、ジャックのような力では無かったが、復讐心のような、敵討ちのために鍛えられたような静かな怒りの力を感じ取った。
「ルイ、足を引っ張らないように全力を尽くすことを約束するよ。」
「ああ、その方が助かる。」
サバイバル試験は入り組んだステージで行われる。
ケンはルイの背後に立ち、目の前の彼女から視線を外さないように行動した。
「相手の冠を取るのは私の仕事だ。君は私を守る事だけに集中すればいい。」
ルイは落ち着いている。やるべき事を把握しているのだ。ケンよりも頭は良さそうだ。
だが、相手がどこからやってくるのか分からない。
ジャックのような荒い性格だと、突然壁をぶち破って出てきそうだ。
そんな慎重に動くケン&ルイに、横から誰かが壁を破壊して襲ってきた。
「てめぇの首頂いたぜ!!」
「なっ!?言ったそばから……ジャック!!」
奇襲攻撃してきたのはジャックだった。
ケンは咄嗟に剣を抜き、ジャックの攻撃を受け止める。
「っ!!前より鍛えられてんな、てめぇ俺様に感化されて猛特訓したな?」
「ジャック……!!僕はお前のことが嫌いだ!容赦などしないぞ!!」
「あったりめえだ。冠を取られちゃあ奴隷行きだからな。こっちもてめぇのような雑魚を上には上がらせないために来たからな。」
対峙するケンとジャック、だがジャックの相方の姿が見当たらない。ルイはそれに気づいていた。
「気をつけろケン!!そいつを倒すのもいいが、最優先は私の護衛だ!!」
ルイの背後から何者かの気配を感じたルイはすぐに壁を背に動いた。
「ちっ、相方が隙だらけだったのをジャックが読んでいたのに、冠を取るのは甘くはねえなあ。」
ジャックのもう一人のペア、名前はラン。
「ラン!てめぇの冠が取られちまえば全てお終いだ!!死んでも離すんじゃねえぞ!!」
「ジャック!!試験が始まる前から僕をマークしていたな……!!」
「ったりめえだ。てめぇに俺様は倒せねぇよ。」
護衛役のケンとジャック、冠を奪い合うルイとラン、それぞれ対峙しサバイバル試験は開幕する。




