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前世安全管理者の異世界ホワイト戦記~死にたくないので安全部隊を作ったら、勘違いで不敗の魔導名将に。夜の放電メンテナンスを求められて困っています【R15】~  作者: トール
第九章:水上プラットフォーム編(海難ハザードと第一王女フィオナのOJT)

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第066話:風水魔術の無効化と、安全水槽でのOJT(実地研修)

 


 嵐が過ぎ去った南方の大河の河口には、穏やかな波の音が戻っていた。


 ルディ・フォン・バウムガルトが引き起こした海底隆起によって無残に転覆(セルフ労災)した偽装海賊船の残骸は、すでにバウムガルト軍の完璧な5S活動(整理整頓)によって手際よく引き上げられていた。巨大な石柱が次々と川底へ打ち込まれ、水上プラットフォームの建設は凄まじい活気とともに進められている。


 その日、海側から一隻の豪奢なガレオン船が、白い帆に風を受けて近づいてきた。


 船体に掲げられているのは、オルテンシア王国の紋章である。


「ルディ様。オルテンシアの第一王女、フィオナ殿下が特使としてお見えです。海賊討伐の労いと、今後の水上交易についての会談をご所望とのことですが」


 仮設の執務室で報告を受けたルディは、冷徹な管理者スマイルを浮かべた。


(海賊(刺客)を差し向けておいて、失敗したとたん直接交渉とはな。トップ自らがクレーム処理の火消しに走るとは、オルテンシアも相当なブラック体質らしい)


「通してくれ。応接の準備だ」


 執務室に通されたフィオナ・フォン・オルテンシアは、息を呑むほど美しかった。


 波打つ銀糸の髪に、海のように深く冷たい青の瞳。身に纏った青色のドレスは彼女の高貴さを際立たせ、歩くたびにえも言われぬ甘い香りが部屋を満たしていく。


「お初にお目にかかります、バウムガルト卿。この度は我が国の海域を荒らす海賊を討伐していただき、心より感謝申し上げますわ」


 優雅に一礼するフィオナの背後で、護衛の騎士たちが退室していく。彼女はあえて二人きりの密室状況を作り出したのだ。


「卿の建設されるこの素晴らしい港。ぜひ、我がオルテンシアにも協力させていただきたいのです」


 甘く、とろけるような声。


 フィオナはゆっくりとルディに近づき、その青い瞳で彼をじっと見つめた。


 彼女の放つ香りと声には、オルテンシア王家に伝わる高度な「風水魔術」が込められていた。大気中の魔力を操り、対象の精神に直接干渉して魅了し、絶対的な服従を強いる恐るべき術。これまで、いかなる屈強な将軍も、老獪な貴族も、この瞳に見つめられて抗えた者はいなかった。


「私の瞳をご覧になって。そして……私にすべてを捧げると、誓ってくださるわね?」


 勝利を確信したフィオナの唇が、妖艶な弧を描く。


 だが。


「……却下だ。労働環境における不適切な香料や、精神に作用する化学物質の散布は、作業環境測定の基準値を大幅に超えている。明らかなコンプライアンス違反だぞ」


「え……?」


 フィオナの笑みが凍りついた。


 目の前の少年は、魅了されるどころか、まるで面倒な書類を突き返された役人のように冷たい目をしている。


 ルディの網膜に展開された【ガス・温度検知ディテクター】は、部屋の空気中に混入した『魅了のフェロモン(有害化学物質)』と、ルディの脳波への『異常干渉(精神ハザード)』を真っ赤な警告ログとして捉えていた。


(精神的ハザードによるマインドコントロール(洗脳)か。ブラック企業特有の悪質なパワハラだな。だが、俺の防毒フィルターと、ディテクターによる脳波の逆位相キャンセリング(ノイズ除去)の前には無意味だ)


「どういうこと……? なぜ、私の魔術が効かないの!?」


 フィオナは取り乱し、後ずさった。彼女の絶対的な武器であった魔術が、この少年の前ではまるで児戯のように通用しないのだ。


「有害物質に曝露した作業員は、直ちに除染しなければならない。……お前のそのガチガチに凝り固まった傲慢なプライドというバグを、今すぐデバッグ(調律)してやる」


 ルディは有無を言わさぬ力でフィオナの細い手首を掴むと、執務室の奥にある扉を開け放った。


 そこは、水上作業員たちの疲労回復のためにルディが急造した「導電水槽」――ハーブを浮かべた温水の満ちる、巨大な浴室であった。


「な、何をなさるおつもり!? 離しなさい、私はオルテンシアの王女よ!」


「肩書きは関係ない。安全管理者の前では、すべての作業員は平等にヘルスケアを受ける義務がある。入れ」


 ザバーン!と水しぶきが上がり、フィオナは美しいドレスごと温かい水槽の中へと突き落とされた。


「きゃああっ!」


 水に濡れて透けたドレスが、彼女の豊かな肢体にぴったりと張り付く。水面から顔を出して激しく咳き込むフィオナに対し、ルディは導電性のハーブバームを手にたっぷりと塗り込みながら歩み寄った。


「水を通じた全身アース(除染)だ。お前の自律神経にこびりついた支配欲コリを、俺の電気で芯から洗い流してやる」


 ルディの手のひらが、水面に浸かったフィオナの白く滑らかな肩へと触れた。


 バチバチバチッ!!!


「ひゃあああああああっっっ!?」


 水槽の水全体を媒介にして、ルディの指先から放たれた【微弱放電】がフィオナの全身を貫いた。


 それは決して痛みを与えるものではない。強張りきった筋肉の緊張を解き、脳髄の奥深くに直接、極上の電撃パルス(快感)を送り込むための徹底した物理療法であった。


「あ、あつ……熱いわっ! なにこれ、身体の奥が……痺れて……っ!」


「深呼吸してリラックスしろ。魔力対流の異常な高まりを、水中にベント(放電)しているだけだ」


 ルディの指先が、濡れたドレス越しにフィオナの背中から腰のくびれ、そしてむっちりとした太ももの内側へと容赦なく滑っていく。


 彼女の魔術による精神支配の術式は、この緻密に計算された電気の快感の前に、あっけなく崩壊していった。


「だめ……っ、そんなところ……っ、あぁっ!」


 フィオナの冷たい青の瞳が、みるみるうちに熱を帯び、蕩けていく。


 誇り高き王女としての自尊心というバグが、ルディの指先が動くたびに、心地よいデトックスの汗となって水に溶け出していく。


「あはぁっ! 溶ける……っ、私の魔術が、誇りが……全部、あなたの電気で流されてしまうわ……っ!」


「いいぞ。その調子でコンプライアンス(服従)を身体に刻み込め。お前のすべてを、俺のシステムにインポートしろ」


 ルディが経絡の集中する太ももの深奥へと電流を集中させた瞬間、フィオナは水しぶきを上げて身体を大きく弓なりに反らせた。


「あはぁぁっ! あなたの電気で……私、自律神経が完全に強制オフ(シャットダウン)されてしまいますわぁぁっ!」


 水面が激しく波打ち、フィオナは極限のリラクゼーションによる絶頂を迎えて、ぐったりとルディの胸に倒れ込んだ。


 銀糸の髪は濡れて肌に張り付き、彼女はもう、逆らう意志など微塵も残っていない、完全に蕩けた忠犬の瞳でルディを見上げている。


「はぁ……はぁ……っ。あなたの……あなたのものになりますわ、ルディ様……」


(よし、新規リソースの採用(完全屈服)、ヨシだ。……だが、こいつを俺の直属にすると、また夜間操業(残業)の負担が増えすぎる)


 ルディは自身の腰椎を守るため冷徹な判断を下し、浴室の扉へ向かって声をかけた。


「ヴィクトリア、入ってくれ」


「はい、ルディ様。お待ちしておりましたわ」


 扉が開き、優雅な足取りで現れたのは、元・カストル帝国の『鉄血の女帝』ヴィクトリアであった。


 かつての過労と薬物による隈は消え去り、ルディの圧倒的なホワイト待遇(寵愛)を受けた女特有の艶やかな色気を放っている。彼女は水槽の中で蕩けているフィオナを見下ろし、優しく微笑んだ。


「お前は絶対的支配のプロだ。この王女のメンタルケアと実務指導の『OJT』は、お前に丸投げ(デリゲーション)する。……彼女に我が陣営のコンプライアンス(絶対服従)研修を徹底してくれ」


「ふふ、お任せくださいませ。オルテンシアの誇り高き王女殿下を、ルディ様に従順な優秀な外交使節として立派に育て上げてみせますわ。ルディ様の『安全の教義』の甘美さを、一から丁寧に教えて差し上げます」


 ヴィクトリアの言葉に、フィオナは恍惚とした表情のまま、小さく頷いた。


 こうして、水上物流を脅かそうとしたオルテンシア王国の陰謀は、ルディの圧倒的な安全管理ロジックと、極上の調律、そして有能な部下への見事なタスク丸投げによって完全に無害化されたのである。




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