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前世安全管理者の異世界ホワイト戦記~死にたくないので安全部隊を作ったら、勘違いで不敗の魔導名将に。夜の放電メンテナンスを求められて困っています【R15】~  作者: トール
第一章:春の嵐と50人の「退却戦」

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第012話:遺体処理の5Sと、ロベルト領回収ガントチャート

 


 嵐の過ぎ去った翌朝。


 国境地帯の険しい山岳には、昨夜の地獄のような豪雨が嘘のように、春の澄み切った陽光が差し込んでいた。


 バウムガルト隊の指揮官天幕の中。


 魔導温風機アースヒーターがふんわりと暖めている天幕の寝台ベッドで、ルディ・フォン・バウムガルトは、両腕を心地よい「たわわな肉の重み」に支配されながら目を覚ました。


「う、ぅ……。若君様……。朝、でございますか……?」


 ルディの右腕にすっぽりと抱きかかえられ、白首をすり寄せてきたのは、テレーゼ・フォン・ベルンハルトだった。


 ミリーたちの手によって全身を綺麗に洗い流され、スノー・ロプの綿毛を仕込んだ清潔で温かい寝間着をまとった彼女は、昨夜、ルディの凄まじい【微弱放電】を這わせたメンタルヘルスケア(自律神経の強制アース)によって、脳の芯から強張りを解きほぐされ、極上の熟睡デトックスを与えられていた。


 丸眼鏡を外した彼女の知的な素顔は、朝の光を浴びて、健康的な血色を取り戻し、艶やかに紅潮している。ルディが少し身体を動かすだけで、昨夜ひたすらに快感の電撃パルスを注ぎ込まれて流した、心地よいデトックスの汗とハーブの香りがふわりと立ち上った。


「ふふ、若君。テレーゼさん、昨夜はあんなに『肩の奥がビリビリして蕩けちゃうぅっ』て泣いていらしたのに、朝からもう若君にぴったり張り付いているのですね」


 ルディの左腕に豊かな胸を押し当て、いたずらっぽく微笑んだのは、昨夜ボイラーを強制冷却(放電リラクゼーション)された超高熱線魔術師エルザだった。


 彼女もまた、ルディの「数値管理による過保護」にバグ的な狂信を抱き、すっかりコンプライアンス(服従)をインストールされた穏やかな顔をしている。


 さらに、天幕の隅では――。


 昨夜、泥濘から回収され、ルディの指先一つでトロトロの「専属探知機」に再起動リブートされたオルテンシアの山岳猟兵セシルが、首元にルディの所有物であることを示す「魔力伝導パス(青白い放電痕)」を刻まれた健康的なシュミーズ姿で、じっとルディを見つめていた。


 セシルは、ルディが起き上がったのを見るや、自発的にベッドの足元へと従順に這い寄り、その美しいつま先に額を擦り付けた。


「お、おめでとうございます……若君様。バウムガルト隊の猟犬セシル、前方危険探知の任務、いつでも稼働ヨシできます……っ。だから……今朝も、あのビリビリする気持ちいい電気、ください……っ」


「おいおい、朝からみんな元気だな。……ガントチャートの進捗はすこぶる良好のようだが、管理者の朝は早い。これより本日の朝礼(TBM)を行うぞ」


 ルディは、すっかり蕩けきったテレーゼの、心地よい汗で張り付いた背中をぽんぽんと優しく叩いて朝の挨拶バイタルチェックを施し、彼女たちを満足そうにベッドから立ち上がらせた。


 天幕の外へ出ると、そこではすでに、老騎士ハンスがバウムガルト兵たちを統率し、戦場の片付け――徹底した「現場の5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)」を執行していた。


 ミリーやサシャたち「炊事班(古参ヒロイン)」は、すでに給養馬車の前に大きな大釜を設置し、兵たちに温かい麦茶とスープを配る朝礼の準備を完璧に整えていた。


 そこへ、ルディを先頭にして、寝室からよちよちとしたおぼつかない足取りで出てきた新規ヒロインたち――テレーゼ、エルザ、セシルが姿を現した。


 テレーゼは極上のリラクゼーションの余韻で頬を朱に染め、エルザは腰をさすり、首に放電痕のあるセシルはルディの影に隠れるようにしておどおどしている。三人とも、昨夜のルディの「容赦なき安全管理(極上の低周波マッサージ)」の凄まじい快感パルスによって、完全に腰を砕かれ、骨抜きにされていた。


 その無残に蕩けきった新入りの姿を、スープをお玉でかき混ぜていたミリーと、パンを切り分けていたサシャ、リタ、ニナたちが、大人の余裕に満ちた妖艶な微笑みを浮かべて見つめた。


「あらあら……。新入りの子たち、若君の『安全指導(お仕置き)』の激しさに、すっかり自律神経をオフにされてますね。よちよち歩きで、とっても可愛いこと」


 ミリーはサシャと目を合わせ、クスクスと甘い笑い声を漏らした。


「本当にね、ミリー姉様。ロベルト領のお堅い文官令嬢も、オルテンシアの生意気な猟兵さんも、若君の手にかかれば一晩で蕩けた蜜蜂さんになっちゃうんだから。……でも」


 サシャは、ルディがこちらへ歩み寄ってくるのを見つめ、豊満な胸を強調するように小さく胸を張ると、テレーゼたちに聞こえるように、誇らしげに囁きかけた。


「若君の一番好みのボルト数(調律の強さ)を知っていて、一番長くあの方を裏から支えているのは、私たち『下請け炊事班』ですからね」


「ふふ、そうね。今夜は私たちが、あの子たちに『バウムガルト隊の夜間操業マニュアル(肩こりほぐしの極意)』をたっぷりと教えて、早く現場に馴染めるように躾けてあげましょう」


 ミリーたちは、新入りヒロインたちを冷酷に排除するどころか、圧倒的な「古参の余裕」とマウントを誇示しつつ、完全なホワイト職場セーフティネットの新たな共犯者として優雅に迎え入れる体制を整えていた。


 テレーゼやセシルは、その古参炊事班たちの放つ、洗練された「メンタルケア受容のプロフェッショナル」としての圧倒的なオーラに、小さく「う、ぅ……」と身を縮め、改めてルディの作り上げたこのバウムガルト隊という組織の、甘美な異常性と底知れぬ魅力に、深く脳髄を支配されていくのだった。


「ハンス、状況を報告しろ。ロベルト隊の『遺体(不要物)』の処理はどうなっている?」


 ルディがハンスに声をかけると、老騎士はガシャリと平伏した。


「ハッ! 若君! 昨夜、泥濘の檻にてスタックしたオルテンシア兵、および戦闘不能となったロベルト隊の『5S』を完了いたしました!


 スタックした敵兵のうち、反抗の兆候を示した「残存ハザード」十五名は、指示通りに泥濘の深層へと押し込み無効化。生存した捕虜二十二名は完全に武装解除(整理)し、ミリーたちの沸かしたHACCP(衛生基準)適合水のみを与えておとなしく隔離(整頓)しております。……しかし、若君」


 ハンスは、少し声を潜めて、前方の泥から引き上げられた「ロベルト子爵」の無残な遺体、およびその騎士たちの骸を指差した。


「泥の中で首の骨を折り、窒息死(墜落・激突による重大労災)したロベルト子爵の遺体ですが……。このまま辺境伯様の本隊へ引き渡せば、『戦場での無謀な自滅』として、ロベルト家は領地没収(お家断絶)となるでしょう。……なにより、この大量の遺体を放置することは、この暖かくなりかけた春の山岳において、最悪の『疫病コレラ・ハザード』の発生源となります。いかに処分すべきでしょうか?」


 中世の戦場において、遺体の放置は「生物学的感染災害」を引き起こす最大のハザード。


 だが、前世の「リスクマネジメント」に長けたルディの脳内スプレッドシートは、これを単なる「廃棄物」ではなく、「将来、ロベルト領をバウムガルト(ルディ)の私的な本拠点としてノーリスクで乗っ取るための、最強の政治的トリアージ(名誉の戦死偽装)」の材料として処理することを弾き出した。


(実家の貧乏男爵領じゃ、俺の有給生活サボりの隠れ家としては狭すぎるし、父親の領地を奪うわけにもいかない。……なら、今回のロベルトの「自滅(労災死)」を逆用して、あの豊かなロベルト領を、俺の完全な独立出発点本拠地として丸ごと帰順させるための「広報ハザード・コントロール」を仕掛ける!)


 ルディは、テレーゼの細い肩を抱き寄せ、ハンスに向けて冷徹に、しかし明瞭に指示を下した。


「ハンス、テレーゼ。これより『ロベルト隊・被災事故報告書』の数値を改ざん(トリアージ)する。――ロベルト子爵は、オルテンシア軍の卑劣な不意打ち(ハザード)から、部下の文官テレーゼや、我がバウムガルト隊を逃がすための『しんがり』を買って出、武士の誉れ高く、壮絶に名誉の戦死を遂げた。……そういうことにしろ」


「えっ……っ!?」


 テレーゼが、驚愕に丸眼鏡を少しずらしてルディを見上げた。


「ロ、ルディ様……、あのような、私に酷いパワハラをし、兵を使い捨てにした下劣な男を、英雄にするというのですか……?」


「そうだ。テレーゼ、ロジスティクスの観点から物事を見ろ」


 ルディは、テレーゼの頬をそっと指先で撫でながら、優しく語りかけた。


「ロベルトを『無能な自滅者』として死なせれば、彼の領地は辺境伯に没収されるか、他の有力貴族に分配されて、お前たち領民は再び別の暴君に不当搾取(ブラック労働)される。……だが、彼が『名誉の戦死』を遂げたことにしてやれば、ロベルト家の名誉は守られ、辺境伯はバウムガルト家に大きな恩理を感じる。そして何より――」


 ルディは、不敵な笑みを浮かべた。


「ロベルト子爵の直系の跡継ぎはいない。……名誉の戦死を遂げた英雄の遺志を継ぎ、その財務の全てを握る文官テレーゼ(お前)が、隣領の信頼できる若君である『俺』を後見人(事実上の領主)として指名し、領地管理の権限を完全移譲デリゲーションする。……このストーリーを辺境伯に承認させれば、ロベルト領の全税収、全資産、そして兵士たちは、バウムガルト家を刺激することなく、俺の『完全な安全本拠地(ホワイト職場)』として丸ごと手に入るんだよ。……お前も、俺の完璧な管理下で、一生俺の庇護を受けて暮らしたいだろ?」


「あ……、あぁ……っ! ルディ様、ルディ様……っ!」


 テレーゼの、知的な脳髄が、ルディのあまりにも完璧で、圧倒的に合理的で、何より自分への過保護な愛に満ちた「乗っ取りガントチャート」に、再び甘く蕩けきった。


「はいっ……! ロベルトは、我が領民を守るために、神聖な戦死を遂げました! ロベルト子爵は直系血族を残しておらず、他の親族も先の突撃に巻き込まれて全員泥の中で全滅いたしました。問題なく、その実権は、すべてルディ様に差し上げます! 領地の金庫の鍵も、すべての納税台帳も、すべて、すべてあなた様のシステムにインポートいたしますぅっ!」


「よし、ヨシだ、テレーゼ。……ハンス、そういうわけだ。ロベルト隊の生き残り(敗残兵たち)を、すぐにここに集めろ。彼らの『雇用契約(装備と給養)』の更新を行う」


 数分後。


 低体温症と赤痢(集団食中毒)に震え、領主の自滅によって戦場に打ち捨てられていたロベルト隊の生き残り兵(約四十名)と、それに加えて飯炊き女たちが、バウムガルト天幕の前に集められた。


 彼らは一様に、凍え、疲れ果て、自分たちも処分されるのを待つ捕虜のような暗い表情を浮かべていた。


 だが、彼らの前に、ルディの指示によって運ばれてきたのは、ミリーたち炊事班がHACCP基準で徹底して煮沸消毒した、湯気を立てる温かいコンソメスープと、おろしたての清潔な「防寒ハイブリッドベスト(予備分)」だった。


「お前たち、よく耐えたな」


 ルディは、スープの椀を自ら兵士の一人に手渡しながら、温かく、しかし威厳に満ちた声で告げた。


「お前たちの領主ロベルトは、お前たちを守るために名誉の戦死を遂げた。……だが、俺はお前たちを、これ以上あの極寒の泥の中で震えさせるような不安全行動(ブラック労働)はさせない。これより、我がバウムガルト隊への『移籍(新規雇用契約)』を執行する。温かいスープを飲み、このスノー・ロプのダウンベストを着用しろ。これからは俺が、お前たちの命と健康を完璧に管理(保障)してやる!」


 兵士たちは、温かいスープを啜り、驚くほど軽くて温かいダウンベストを身にまとった瞬間――。


 その身体を突き抜けた、異次元の温もりと「ホワイトな待遇」に、一斉に涙を流してその場に平伏した。


「お、おおお……っ! 暖かい、暖かいぃぃっ!」


「ロベルト様は、俺たちを見捨てて突撃したのに……、バウムガルトの若君は、俺たちの命をこんなにも大切にしてくれる……っ!」


「ルディ様万歳! 我が新たな主君、ルディ様万歳!!! 安全第一、ヨシ!!!」


 ロベルトの生き残り兵たちは、瞬時にルディの「完全な狂信者」へと書き換えられ、その戦闘力はバウムガルト隊の「ロベルト分遣隊」として完璧に吸収された。


 ――そして、数時間後。


 春の澄み切った陽光が照らす渡し場に、ゼーフェルト辺境伯の率いる主力軍(三千人)が、悠然と到着した。


 辺境伯は、最前線でオルテンシアの急襲を受け、壊滅したであろう男爵領の小規模な五十人隊を「全滅したか」と心配しながら進軍してきたのだ。


 だが、合流地点で、辺境伯ゼーフェルトが目にしたのは――。


 擦り傷一つ負わず、ツヤツヤとした健康な顔立ちで、ダウンベストの紐を締め、一糸乱れぬ規律で「指差し呼称」を行う、ピカピカのバウムガルト隊。


 さらには、完全に武装解除され、静かに一箇所に「整理整頓」されたオルテンシアの精鋭軽騎兵の捕虜たち。


 そして、ロベルト領の全秘密をルディに差し出し、彼の横に熱い視線で寄り添う文官令嬢テレーゼの姿だった。


「……な、何なのだ、これは……!?」


 辺境伯ゼーフェルトは、馬上で口をアングリと開け、驚愕のあまり完全に思考をスタック(フリーズ)させていた。


 ルディは、前世の「プロの営業スマイル」を浮かべながら、優雅に一礼して進み出た。


「ゼーフェルト辺境伯様。バウムガルト隊、および名誉の戦死を遂げたロベルト子爵の遺志を継いだロベルト分遣隊、合計百名。……完全無災害(労災ゼロ)、ヨシ! これより、辺境伯様の本隊へと合流(納品)いたします!」


「「「バウムガルトの雷神、ルディ様万歳!!! 安全第一、ヨシ!!!」」」


 百名に膨れ上がったホワイト軍団の、狂信的な咆哮が山岳に響き渡る。


 辺境伯ゼーフェルトは、歓声をあげる兵たち、そしてルディの背後で完全に懐柔されている超熱線魔術師エルザや、敵の猟兵であったはずのセシルをも見やり、背筋にぞっとするような「冷たい戦慄」を覚えていた。


「ロベルト子爵は、我々を逃がすために自ら『しんがり』を買って出て、壮絶な名誉の戦死を遂げました。彼の遺志と残存兵は、財務文官テレーゼの承認のもと、我が隊が引き継いでおります」


(……この少年は、ただの神童などではない。この若さにして、一兵の損失も出さずに敵精鋭を完封し、あまつさえ壊滅したはずの隣領ロベルトの兵や財務能力、さらにはオルテンシアの猟兵まで一瞬で自らの配下に収めてしまった。下手をすれば、我が辺境伯家すら呑み込みかねない、底知れぬ怪物だ……!)


 辺境伯の老獪な政治的直感が、ルディを「野放しにしてはならない最凶のハザード」と特定していた。


 敵に回しては決してならない。だが、あまりに有能すぎて自陣営からも浮きかねないこの怪物を、どうにかして強固な「鎖」で縛り付け、手懐け、そして監視しなければならない。


(……我が陣営に確実に縛り付けておくため、あやつに最も重く、逃れられない「手綱(監査役)」を与えねばなるまい。幸い、ロベルトの領地を管理する後見の立場を承認してやれば、あやつは男爵家の四男から実質的な大領主へと跳ね上がる。……ならば、そこに私の庶子である、あの「エリーゼ」を婚約者としてあてがい、辺境伯家の血の楔を打ち込むか)


 ルディへの畏怖を覆い隠すように不敵な笑みを浮かべた辺境伯は、脳内で次なる政治的策略をめぐらせていた。


 送り込まれる予定の、辺境伯公認の美しき監視者エリーゼという、ルディの後宮セーフティネットにおける「最大の政治的ハザード」。


 ルディのガントチャートは、ロベルト領を「安全な出発点本拠地」として掌握する完璧なマイルストーンを灯しつつも、避けては通れない次なる厄介なハザード(政略結婚・スパイ)の気配を孕みながら、確固たるホワイトな覇道を力強く突き進み始めたのだった。




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