23.ゲームの終わりと現実の未来
私達は5日の行程を3日で到着した、王国正規軍に後を任せて、王都に戻った。
城で報告を終え、屋敷に戻った私達を迎えたのは、愛する家族。
兄様に泣きながら、ナンシーが駆け寄って抱きついた。そのナンシーを兄様が力強く抱きしめる。
いつも手が触れる時でさえ恥じらうナンシーの大胆な姿に、胸が熱くなる。
無事に兄様を連れ帰れて良かった。
私は、ゆっくりと両親に近づくと、両手を広げて私を待つ母様の腕の中に収まった。
「心配かけてごめんなさい。ただいま帰りました。母様、父様。」
「おかえりなさい。」
優しく抱きしめる母様の頬から溢れる涙が、私の頬を濡らし、父様の大きな温かい手が私の頭を撫でた。
やっと、全て終わった。
これで私達は、もうゲームに振り回される事は無い。
これから先は、私達だけの未来。
レイモンドの希望で、彼が即位する前に結婚式を執り行う事になった。即位式で、私に隣にたって欲しいそうだ。
兄様との合同結婚式の為、徹夜でドレスを縫い上げるレイモンドの為、私は、彼の足の間に腰を下ろし、後ろから抱きしめられている。
私の首筋に顔を埋める彼の息がくすぐったい。
いつ見ても面白いが、目の前では、生地が空に浮かび、糸が通された針がその生地を細かく縫っていく。その縫い目は、驚く程に細かく、美しい。
「レイモンド、今日はもう寝た方が良いんじゃない?」
「うん。」
彼の頭を撫でながら、声をかけると、少しくぐもったような声で返事をするが、眠そうだ。
「ほら、もう今日は、終わり。眠るまでいてあげるから、ベッドに行きましょう。」
立ち上がって、彼の手を引くと、素直に立ち上がる。目が閉じかけていて、いつもより幼くて、なんだか可愛らしい。
大人しくベッドに入る彼の頭を撫でると、ふわっと嬉しそうに笑った。
それが愛しくて、胸がドキンと高なった。
寝息をたてはじめた彼から手を離し、彼の顔をじっと見る。
本当に綺麗な顔ね。あ、睫毛長い。
疲れて、目の下にはうっすら隈があるものの、吹き出物ひとつ無い滑らかな肌。
私は、吸い寄せられるように、彼の唇に唇を触れさせていた。
自分で自分の行動が分からなくて、慌てて空間移動で、自分の部屋に戻ったが、胸のドキドキが止まらなかった。
その頃、レイモンドも、体を起こして、真っ赤な顔で唇を抑えていた。
秋風が吹き抜け、青空が高くて雲ひとつない日、私とナンシーはレイモンドが縫ったドレスを身にまとった。
「レイモンド様、本当に凄いですね。このドレスが魔法だけで縫ったなんて。」
「手で縫うより早いんですって。」
「はあ。お式の予定が急に早まりましたものね。」
「そうよね。」
それでもデザインにも拘ったドレスは、どちらもよく似合っている。
「ナンシー、素敵よ。姉様、これからも宜しく。兄様の事、よろしくお願いします。」
「こちらこそ。今日から本当にミレーニアが妹になるのね。夢みたいだわ。」
私達は2人で、両親に先導されて、並んで教会に向かう。正面には、私達を迎える、手を差し出す2人。
それぞれの手を取って前に進む。
そう言えば、ユーステアがゲームで目指すのは、真実の愛だと言っていた。そうね、これは、運命の恋だったんだわ。
肌寒さを感じる冬晴れの日。レイモンドの即位式が行われた。私は、彼の隣に、王妃として立っている。
そして、これからもそれは変わらない。
「よろしくね、私の、私だけの王妃。」
「はい。王様。」
「愛しているよ。」
「私も愛しています。」
2人でこの国を守っていこう。愛する家族を、国民を。
3年後、私達は、愛する息子に恵まれた。乳母は、その
前年に子供を生んだばかりの、レイモンドの従者、リンクの妻である、あのアイシアだ。
ヒロインの夢破れたアイシアは、リンクに絆されて結婚し、今は、子爵夫人として、幸せに暮らしている。
ナンシーも、アイシアも、そして、兄様、ラッセル。
王家の守護獣となったゲシュパルも。
誰も傷つくこと無く掴んだ未来。
「レイモンド、私、長生きするから。あなたも長生きするのよ。」
「ああ、100年でも、200年でも、君が望むだけ。」
「うん。」
私は、相変わらず魔法の詰まった物に囲まれて、今度こそ長生きをしよう。愛する少し変わった彼と。
完結しました。ここまでお読み頂きありがとうございます。




