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2/2

最近は強いキャラが流行りらしい

燃え尽きた村の前。


勇者コータローは、呆然と立っていた。


俺は隣の卵を見る。


「さて」


『はい』


「勇者はこれからどうするものなの?」


『一般的には旅に出ます』


「旅か」


俺はうなずく。


「じゃあ旅だな」


「え、今?」


『勇者は装備が必要です』


「装備?」


『剣です』


「剣って?」


『たいていは岩から抜きます』


「もうそれ、めちゃくちゃ使われたネタじゃん」


『王道です』


「俺には広げようがない」


少し考える。


「……鋤でいいじゃん」


『農具ですが』


「斧だって工具じゃん」


『それはそうですが』


空中に光る文字が浮かぶ。


【装備生成】


光の中から現れたのは――


立派な鋤だった。


コータローはそれを見て固まる。


「……俺、勇者だよな?」


「はい」


「なんで鋤?」


俺は胸を張った。


「個性」


コータローは鋤を肩に担ぎ呟く。


「……年貢に苦しむ勇者が、仲間と共に命を懸けて悪代官に立ち向かう」


アイが静かに言う。


『百姓一揆ルートですね』


俺は首をかしげた。


「魔王どこいった」


アイが静かに言う。


『作者の思いつきで設定が変更されています』


「そういうことある?」


『あります』


「なるほど」


俺はうなずく。


「そうかー、仲間がいるな」


コータローが顔を上げた。


「仲間?」


「どこにいるの?」


コータローがゆっくりこちらを見る。


俺は腕を組む。


「じゃあ探しに行こう」


「軽い旅立ちだな」


コータローはため息をつき、歩き出した。


――しばらくして。


森の奥から悲鳴が聞こえる。


「きゃああ!」


コータローが立ち止まる。


「なんだ?」


木々の隙間の向こう。


小さな集落が見えた。


細い耳の人たちが、魔物に追い回されている。


俺が言う。


「エルフの村だな」


コータローが振り返る。


「……今決めた?」


アイが答える。


『はい』


コータローは鋤を握り直した。


「とりあえず助ければいいんだな?」


俺はうなずく。


「たぶん仲間イベントだ」


コータローは鋤を構えた。


「うおおお!」


魔物に向かって走る。


そして――


ボコ。


鋤で魔物の頭を叩いた。


「ギャッ」


一瞬の沈黙。


俺がつぶやく。


「……え」


もう一回。


ボコ。


「……だっさぁ!」


「え?」


俺は両手を振った。


「カットカット!」


「戦闘中止!」


空中に文字が浮かぶ。


【戦闘 一時停止】


魔物たちが動きを止める。


一匹がその場に座った。


エルフも木に寄りかかる。


「……え、鋤ってこうなの?」


『基本、叩きます』


「嘘だろ。地味すぎだろ」


そのとき。


魔物の一匹が手を挙げた。


「質問いいですか」


「え?」


「この戦闘、やり直しですか?」


俺は腕を組む。


「うーん」


「こっちも気持ち作ってきてるんで」


エルフも頷く。


「正直、鋤は予想外でした」


「俺もです」


アイが淡々と言う。


『戦闘再開しますか?』


俺は少し考えた。


「なんかこう、他の作品だとさ」


コータローと魔物たちがこっちを見る。


「バトルシーン、カッコよくない?」


「どうしろと」


『武器変更しますか』


「いや、コロコロ変えるのもメンドイ」


俺は鋤を見る。


「こう言う戦闘が地味なときってどう盛り上げるの?」


少し沈黙。


エルフが手を挙げた。


「昔の仲間が助けに来るとか」


「なるほど」


『ダークヒーロー使いますか』


「あいつも鋤とか鍬なんだろ」


『否定はできません』


俺は腕を組んで考える。


「こう……派手にしたいんだよ。わかるかなー」


しばらく悩む。


「あ!」


全員がこっちを見る。


「あいつ実はサイボーグで、両腕のガトリングガンで蹂躙とか」


『SFです。ジャンル違いです』


「SFだってファンタジーだ!」


『違います』


「絶対“F”をファンタジーの略だと思ってるよな。あの作者」


「ねー」


魔物とエルフが少し離れたところでヒソヒソ話す。


俺は手を叩いた。


「よし、続行!」


空に文字が浮かぶ。


【ダークヒーロー 生成】


森の奥から轟音。


ドドドドドドドド!


両腕にガトリングガンを装備した男が現れた。


「うおおおおお!」


魔物たちが次々吹き飛ぶ。


木が折れ、

地面が抉れ、

煙が立ち上る。


エルフたちは口を開けて見ている。


コータローも固まる。


やがて静かになった。


ダークヒーローがゆっくり振り返る。


「待たせたな。俺も今日から――」


「はいもういいよ」


「え」


「強すぎ」


「まだ自己紹介が」


「終わった終わった」


空中に文字。


【ダークヒーロー 返品】


光に包まれ、男は消えた。


静かな森。


コータローが言う。


「……なんだったんだ今の」


俺は周囲を見回した。


「まあ……」


逃げ遅れて震えているエルフを指さす。


「生き残りのエルフで、使えそうなの仲間にしよう」


『順当なら魔法使いです』


エルフが顔を上げる。


「私は魔法使いではありません」


「特技はなに」


エルフは少し考える。


「……詩、かな」


「趣味じゃん」


コータローも頷く。


「役に立たないな」


エルフが少し傷ついた顔をする。


俺は腕を組んで考えた。


「あ」


全員がこっちを見る。


「この話ってさ、基本会話多いじゃん」


『そう言うスタイルですから』


「実況してもらおう」


「なんの役に」


俺はニヤッとした。


「甘いな。強いよ?」


「どういうことですか」


「敵は怯んだ!って言えば怯む」


沈黙。


「勇者は鋤で切った!って言えば切れる」


「いや切れないけど」


「どうせ文字だから分からない」


エルフの目が輝いた。


「つまり……」


一歩前に出る。


「実況によって盛り上げる役ですね!」


「そう」


「しかも言ったもん勝ち」


「それだ!」


エルフは胸を張った。


アイが空を見上げる。


『ジョブアビリティ設定』


空中に光る文字が浮かぶ。


【エルフ(熱狂系実況解説者)が仲間になった!】


「なんだその職業」


『新規ジョブです』


倒れてた魔物が気を効かせて立ちあがる。


エルフは深く息を吸った。


「ここでコータローの!鋤の一撃が魔物を切り裂いたあああ!!」


ザシュッ。


「ギャアア!」


コータローが固まる。


「え」


鋤を見る。


「切れた」


アイが説明する。


『実況が現実化しました』


俺は満足そうにうなずく。


「ほら強い」


エルフは完全にノッてきた。


「すかさずコータロー!華麗な連続攻撃いい!!」


ザシュッ!ザシュッ!


魔物たちが次々倒れる。


「出たああ!!奥義!必殺・ファイヤー・スパイラル鋤ブレイクだあああ!!」


魔物たちはまとめて吹き飛んだ。


「なんかすごいことになってきた」


やがて森は静かになった。


俺は周りを見る。


「さて」


『はい』


「そろそろ宿探そう」


エルフがすかさず叫ぶ。


「コータロー!今夜の宿を探しているぞおおお!!果たして見つかるのかあああ!」


偶然にも遠くの街道に、小さな宿屋の灯りが見えた。


「決まったああ!!」


コータローが歩き出す。


「でも金ないぞ」


俺は少し考えた。


エルフを見る。


エルフはうなずき、大きく息を吸う。


「あーっと!ここでヘソクリの金貨一枚が発見されたあああ!!」


チャリン。


「なんと!ラッキー収入だあああ!!宿代もこれで安心!!」


エルフが腕を振り上げる。


「そして勇者一行はああ!宿へ向かう!!」


「次回に続くぞおおお!!」

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