それから
ましろは日に日に、配信時間が長くなっていった。
毎日のように長時間、ましろの配信を見に行くことが誠にはなんとなく恥ずかしくなっていく。
「だから」と、講義に出始めた。
あの日「浸ろう」と決めた日から10日も経っていない。
講義にまた行くようになり、また大学でアプリを勧めてくれた友人を見つけた。
「あの配信アプリなんだけど」誠が声を掛けると、友人は軽く嘯く。
「もう僕アレ辞めちゃったんだ。ほら、なんか課金凄くね?でも、さんきゅな」
そう言った友人は「次の講義、401号室だから」と、その場からそそくさと去って行く。
自分勝手な奴だと鼻で笑いたくもなった。
しかし感謝もしていた。ましろとフユに会えたから。
ましろの配信はいつも見られなくなるが、アルバイトも始めようと思った。
フユとましろに感謝のために、課金をしたくなったから。自由に使えるお金が欲しくなったのだ。
それに誠が行かなくとも、彼女自身の頑張りのお陰でファンも増えていき教会は賑わいを見せ始めていた。
まだ面接を受けたアルバイト先からの返事が来ていなかった誠。
その日の配信も、足を運んでいた。
「なんかねあのフレーム?可愛いなってみんなで話していたんだ」
ましろが困ったような上目遣いで出迎えた誠に話す。
「だって、一週間でポイントが5000とかなんだよ。ましろじゃ無理だもん」
彼女は首を傾げた。
逡巡する誠。
コインの為のお金は今は無い。でも、バイトが決まって給料が入ればなんとかなる。
スマホの使用料と一緒に引き落としてもらえば良いじゃないか。
彼は一万円分のコインを買った。
12000PTがスマホにチャージ。
まっこんとー>【大好き】
3000PT分のスタンプ、最もポイントの高いスタンプをましろに送った。
フユ>お、まこっちゃんスゲー
フユ>ましろちょっとで悪いけど
そう言ったフユも1000PT分のスタンプをすぐさまに送信していた。
「え、待って待って。皆ダメだよ」
ましろの声は上ずっている。両手をバイバイのようにして断っているようだ。
口角を上げながら。
その後、二人以外のファンが500や30とのスタンプを送る。
「やった、やった。ましろあのフレームゲットしちゃった。皆のお陰」
先程よりさらに高くなった声。
「配布されたら、早速お礼のためにサムネにフレーム付けちゃうんだ」
彼女から飛んでいるハートがどんどん増えていった。
それから数日後。
誠のアルバイトも決まった。
そんな中ファンが増えたお陰かフレームのお陰か《注目》欄にも載ったらしい。
溢れんばかりの人。
「おかえり」や「はじめまして」と、ましろは弾ける笑顔で迎える。
ましろちゃん可愛いー
注目おめでとう
コメントがどんどんと流れていく。
誠は「疲れたな」と呟いた。
配信に入室してすぐに「またね」と入力送信した。
きっと彼女はオレが出て行ったことに気づいていないだろうな。
チャット画面の流れが速すたし、出迎えに忙しそうだったから。
それにタイミングが合わないのか、ここ最近フユとも話せなくなっていた。
それでも、やはり配信一カ月記念にはお祝いに行きたかった。
ましろが「あと少しでAクラスに行ける」という、おねだりを聞いても。
すぐに彼女はAクラスになる。
「どうしよう。Aクラス決まってもう充分なのに。そうだ、1カ月記念だからSクラスに……って、流石に無理だよね。ここからのポイントも高いし、ましろはお歌も上手に歌えないし、楽器も出来ないから」
ましろの声はまるで泣き出しそうに聞こえた。
誠は余っていたポイントを全て使い切ってしまおう。
今のましろの声を聞いて決めた。
やはり、フユもオレと同じように思っているんだな。
ましろをSクラスにするためのスタンプ合戦を尻目に、フユがひっそりと退出したことを告げる表記が流れたのを見たからだ。




