第二十二話 捕獲
セルグは、例の宿屋に足を運んでいた。
あの男によると、“元締め”は伝道師みたいな恰好をしているらしい。
「これは、セルグさん。」
「如何されました?」
「まさか、お泊りになられる訳ではないでしょうし…。」
と、小太りな中年男性であるオーナーが、声を掛けてきた。
「…、客に“ビショップ”はいないか?」
「確か、金色の杖を持っている筈なんだが。」
と尋ねるセルグに、
「あぁ、その人なら、2~3分前に出て行かれましたよ。」
「お連れの方が迎えに来られて…。」
と、答えたのである。
「何?!」
(こちらの動きを把握されていたのか?)
(逃がしたらまずそうだな。)
と思い、表通りに向かったセルグが、自身の腕輪から[パネル画面]を出現させて、どこかに連絡を入れたようだ。
数秒後、その画面に、“黒猫の面”を被っている者が映った。
それは、鼻から上だけが隠されている〝半面〟で、口元は露わになっている。
また、お面の、耳/額/目/鼻には、金色で模様が描かれていた。
黒髪ショートの、その男性が、
「セルグか…。珍しいな。」
「何用だ?」
と、聞いてきたので、
「すまないが、数人で構わないから“隠密隊”を動かしてくれねぇか?“影”。」
と頼んだのである。
[影]と呼ばれた相手が、
「ふ…む?緊急事態か?」
と、窺う。
「ああ、俺の直感が正しければ、今回の件は、後々、厄介なことになり兼ねん。」
「早めに潰しておくのが賢明だ。」
と返すセルグに、
「分かった、良いだろう。」
「5人ほど、放ってやる。」
と、応じたのであった…。
オープン馬車で、南門から首都の外へと脱出したソイツらは、反時計回りに北上している。
痩せ型で、頭髪が薄い、白ローブ姿の、初老の男が、
「どうやら、上手くいったようですね。」
と安堵の表情を浮かべた。
手綱を捌いている別の男も、
「ここまで来れば、もう安全でしょう。」
と、〝ニンマリ〟する。
こっちは、旅人のような服装にキャップといった格好だ。
初老の方が、
「意外と楽勝でしたね。」
と呟いた。
次の瞬間。
ズドォオンッ!
と、左車輪が爆撃されてしまったのだ。
その衝撃で、馬車が派手に横転する。
うつ伏せになって、
「うぐッ。」
「一体、何が?」
と困惑したビショップの眼前に、男性3人と女性2人の【アサシン】が現れたのだった…。
城の地下に在るという[拷問室]の、別々の独房で、彼らは取り調べを受けることになった。
伝道師は、一号室の、椅子に縛り付けられている。
その右隣の石壁からは、
「ぎゃああああぁぁぁぁッ!!」
「も、もう勘弁してくれよッ!」
「さっきから何度も言ってるように、俺は、あの“ビショップ”に雇われただけなんだってば!」
「だから、詳しい話は、その爺さんにッ!ひぎゃあぁあッ!!」
といった声が漏れ聞こえてきていた。
が。
〝ピタッ〟と騒ぎが収まり、辺りが静まりかえる。
すると、一号室の鉄扉が、
ギィイッ!
と、錆びた音を鳴らしながら開いたのだ。
洒落た黒軍服を着ている“影”と共に、部屋に入ってきたセルグが、
「さて、始めようか。」
〝ニィ~〟と口元を緩める。
それに対して、
「ひ、ひぃいッ!!」
と顔を引きつらせる伝道師であった―。




