現場入り
ガタン! ゴトン! ガタン!ゴトン!
ちくしょー! もっと優しく運転しやがれ!
此処は軽トラックの荷台。
そうさ、オレはあのチャラ男に買われたのさ。
あの野郎オレを何だと思ってやがるのか? オレを無造作に荷台に放り込んだのさ。
しかもだ、何なんだコイツの運転は? 軽トラックでドリフトなんかしやがって!
そうさ、此処は田舎道さ。交通量も少ないさ。しかしだ、一応公道なんだぞ!
荷台のオレの身にもなってみろってんだ!
そうさ、オレはキリ刃さ。ドリルのキリ刃さ。だが、オレにはオレのプライドってもんがある。もう少し丁重に扱って貰いたい。
軽トラックがある家の前で止まった。
車庫には山のように資材が積まれていた。
どうやらリフォームの物件らしい。
現場は二階か?
チャラ男はオレが入ったビニール袋を持ち、二階に上がった。
なるほど、増築工事か。
この家の二階は建物の半分がベランダになっている。
このベランダ部分に部屋を作る訳だ。屋根は元々あったらしい。
おぅ、帰ったか。どれ?見してみ?
チャラ男はオレを手渡した。
オレを持つその手はゴツゴツとした年季の入った手だ。
オレを見つめるその目は職人のソレだった。
キリ刃の切っ先を見つめて
ん、悪くねー。
コイツがオヤジさんか。悪くねーだと?
フン、仕事ぶりを見れば分かる。オレはその辺のキリ刃じゃないのさ。
オヤジさんがドリルを取り出す。
カチッ
オレはドリルにセットされた。




