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倭都タケル=吾のまほろば=  作者: 川端 茂
第四章
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出雲の王討伐の難題にコウスは苦しみ、三人の従臣は

 その恵枇の国主を討って命からがら抜け出したら、続いて出雲タケルも討てとは……。

 オウスを殺した償いをせよ、西国で運よく命拾いしても、出雲で死ねと聞こえ空しい脱力感が襲う。


 わずか四人で大国に潜入するのは、虫が火の中へ飛び込むようなもの。先ほど従臣になったばかりの三人には、何の罪もない。


 翌朝は夜半から降り続く雨がやまず、宮廷の中庭は水溜まりやぬかるみで光っている。空を仰いでも雲が切れる気配がなく、針間津から出航する昼餉の後も、降っているだろう。


 コウスは王との会談を終えた後、すぐに従臣三人を部屋へ呼んだ。従臣は一体、この下命は何なのか、成功する目途はあるのかを問い質してきた。


「ハリマ王が皇子に御下命された、出雲タケルを討てとは、前からご存じのことですか。」


「とんでもない。あの部屋で、初めて仰せられた突然のご下命だ。吾は愕然とし、身体中がすくんで、座っているのさえ苦しかった。急いで部屋に呼んだのは、何も知らない出雲国へ入ることが出来ても、国王に近付くことは出来ぬ。何か良い知恵はないかと、集まってもらった。」


 ひとりで悶々と考え悩むより、四人で頭を突き合わせて策を練ろうとコウスは考えた。だが当てもなく策を出し合っても、混乱が増すだけだろう。

 出雲に入り込む策、国王に近付く策、そして討つ策を、分けて考えれば何か出るかもしれない。


「ご下命が出た以上は、何らかの作戦を立てねばならない。何でも良い、どんな小さなことでも良い。出雲へ潜り込む方法、疑われずに動く方法、国王に近付くための方法、どんな卑怯な手でもだましでも良いので、国王を討つ手段。この四つを分けて、思いつくまま出して貰いたい。」


 威勢の良かった弓隊は、途轍もない事態に巻き込まれた不運を悲しんでか、黙り込んで頭を上げない。コウスは三人の怒り、恨みを受け止め、自分から案を出そうと、懸命に考えた。


「燃え盛る火の中に飛び込めと、突然の命令だ。三人に何の罪もないのに、この仕打ちは辛過ぎる。吾は皇子なので、辛くてもご下命に従う運命だ。そうだ、ひとつ考えが浮かんだ。西国へ向かっている間に嗅助を五人ほど出雲へ走らせ、国の見取りや兵力、宮廷の内部、国王の性格、民の日常を調べさせる。それを集めて皆で手掛かりを見つけ、案を出し合ったらどうだろう。」


 出雲国を調べた上で作戦を練る案だ。敵の情勢を知り、強みや弱みを掴めば、何らかの突破口が見つかる可能性はある。急な思い付きではあったが、大事な案件だと自分を褒めたが、三人はどう受け取っただろう。

 真ん中に座っていた年長のケイシが顔を上げ、二度三度うなずいてコウスに両手を突いた。


「敵を知り己を知れば百戦危うからずと申します。不運を嘆くより嗅助が探った情報から、出雲タケルを討ち取る手段を、及ばずながら考えたいと存じます。少しですが拙者に光明が差しました。さすがコウス皇子は頼もしい御方、信じて付いて行きます。」


 涙ぐんではいるが、ケイシは覚悟を決めたようだ。マナキ、マヤムも両手を突いて深く頭を下げた。まだ決心は見えないが、恐れや逃げ腰から一歩だけ前に進んだと、コウスは安堵した。


「よく言ってくれた、かたじけない。では最初の策だ。嗅助を使って、遅れても己実津までの十五日間に出雲国を調べ上げて報告するよう、すぐ手配する。この出雲の件は、王と四人だけの内密作戦だ。絶対に他言も、素振りを見せることさえも禁ずる。」


 コウスは王に、出雲国や国王を調査したいと申し出て、許しを得て自室に嗅助を六人呼び寄せた。


 会議屋に針間の嗅助が集まった。作戦や目的は伝えず、十五日後の報告期限で出雲国の見取りを作ること、宮廷の内部と兵力を探ること、国王の性格や強み、弱みを調べること、民の日常、交易状態を見聞きすることを命じた。報告先は未羽津であることを告げた。


 時がないので嗅助には、軽い食事を与えて放った。コウスの指示の的確さに感心しながら、横で聞いていた王は、嗅助が去るのを見届けてコウスに聞いた。


「そこまで出雲を調べて、何をしようと考えておる。出雲国の見取りは儂も持っておるので、必要なら渡しても良いぞ。」


「まだ何も策はございません。まず出雲国を知らければ作戦が立ちませんので、嗅助をお借り致しました。見取りはぜひ戴きとうございますが、出雲討伐は手前共と、お役人四人しか存じない内密作戦とお察ししており、他の者に見られては一大事です。勝手ではございますが、討伐を成し遂げて帰る途中の、未羽津で戴けないでしょうか。」


 先ほどまで降っていた雨が止み、西の空から雲が切れて昼間より少し明るくなった。

 日はまだ水平線の上にある夕刻。出立準備があるので早目に膳と酒肴が用意され、壮行会・激励会を兼ねた夕餉が宮廷の大広間で行われた。


 征西隊だけではなく、ハリマ王と妃のアオナヒメ、王の息子四人、側近や役人、そして兵の代表者も参加して、百五十人を優に超える大宴会の様相になった。まず王が立ち上がり、場内を見回して力強く発声する。

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