表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Pandora   作者: 夕の満月
第一章 旅人
21/44

虚構の怪物②

 しばらく馬車に揺られ、険しい峠道を越えた僕達の眼前には、空との境目が分からなくなるほどに果てしなく、浮かぶ雲を飲み込んでしまいそうな、青い海が広がっていた。

 大陸と海の境目では白い砂浜と、彼方に見える空色とは違い微かに緑がかった水面が顔を覗かせる。湖も大きかったのだろうが、霧で見通しが悪かったこともあり余計に海の広大さを強調しているように感じた。


「うわー、大きーい。ほらほら、シズクちゃんも!」


 揺り起こされたシズクは何かあったのかと驚き、周囲を見渡す。アイラの指差す方角へ首を向け、声を発することなく口を開きながら海を見つめる。しばらく眺め、珍しく興奮したように声をあげた。


「初めてみましたけど、綺麗ですね! 所々、太陽の光で白くて地面に空があるみたいです。」


「感想だけ聞くと、シズクの方がお姉さんみたいだね」


 一言余計だという意味を込めた、アイラからの視線が痛かったが、すぐにそんなことをしている暇はないといったふうに海へ視線を戻す。

 馬車を引く男も、騒ぐアイラ達を見て、嬉しそうに笑い声をあげる。 下り坂に入り海は森の木々に隠れ、昂った気持ちが落ち着いていくのを見計らっていたかのように男は声をかけてきた。


 もうそろそろ目的地の海辺の町につくようで、次は大陸の内部に向かうそうだ。行き先が一緒であるなら、そのまま乗って行くかい? と聞かれたがアイラが断りを入れ、次の町で降ろしてもらうと告げる。


 細かな振動が止まり荷馬車を引いていた馬が鼻を鳴らす。建物が並ぶその奥には再び海が見え目的の場所にたどり着いたのを知らせる。

 乗せてもらったお礼を言い、男に別れを告げた。海を近くで見たいという二人に同調し町の中を歩き進む。途中、お店に並ぶ貝殻のアクセサリーに興味を持ったシズクに気がつき買ってあげる。それを見たアイラが、見た目は似ているが謎のものを持ってきたので、いつもの様に返品を促す。


「私もシズクちゃんだよ、買っていい?」


「戻してきなさい‥‥」


 遂に意味の分からないことまで言い始めたアイラを置いて道を行く。海にたどり着くと遠目に釣りをしていたお爺さんが目に止まった。砂浜で遊ぶ二人を横目に、釣りが気になりお爺さんの近くに向かう。


「釣れてますか?」


「ん‥釣りに興味があるのかい?」

 

 釣りをやったことがないと伝えると、人生の半分は損してるからやりなさいと、近場で道具を貸してくれる店を紹介してくれた。すぐに店に向かい道具を借りる。戻ってくると、物珍しい目で見つめるアイラとシズクの視線を感じた。


「してみる?」


「良いんですか?」


「いいよ」


 一人分しか借りれなかったため名残惜しいが、シズクへと釣竿を手渡す。餌をつけてあげ、竿をしならせ海へ投げ込むシズクを見守る。しばらく波に揺られ何の反応もなく漂う。

 同じ様に見つめるアイラにも、次やってみる? と声をかけたが飽きたらしく断られてしまった。

 もう釣れないのではないかと諦めかけた時、竿が揺れ魚が掛かったのを知らせる。思い切り引っ張り掲げる竿、遅れて小さく可愛らしい魚が現れた。


「これは‥‥食べれます?」


「どうだろう‥戻した方がいいかもしれないね」


 少し残念そうな顔をして、魚を海に放し竿を渡してきた。


「次は、ナギさんどうぞ」


 受け取った竿に餌を付け直し海へ放る。


 最後まで、竿が動くことはなく道具の返却に向かう僕に、シズク先生に釣り方教えてもらったら? とアイラに言われながら初めての釣りに幕を閉じた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ