祟り神①
「おかえり、アイラ」
「ただーいま、ちょっと可愛いネコちゃんがいたから遊んできちゃった」
「いつも、気がつくとどこかふらふらしてるし、そんなところだろうと思ってたよ」
「えー、そんなふらふらしてるかなあ」
毎回の事だが、自覚はないらしいアイラに、ため息がもれる。せめて一声かけてくれると助かるのだが。今回は道行く町の人に聞いた、たまに霧の中へ誘われるように人が居なくなるという話しを耳にはさみ、心配もしていた。
迷信の類いだとは思うが、シズクは町民の話に熱心に耳を傾けていた。どこか不安そうな顔をし時々、僕達が居なくなっていないか、キョロキョロと顔を見渡す。いつもなら肩に乗せているユラも今日は、シズクの両手に収まっている。
「なに? シズクちゃん。そばにいるから怖がらなくて、大丈夫だよー」
「怖がってなんて‥‥」
「ふふん、シズクちゃん可愛いー!」
笑顔でシズクに抱きつくアイラ、その拍子にユラがシズクの手の中から飛び出してしまった。
「ユラ! おいで」
普段より声量のあるシズクの声に、アイラはからかうのをやめて、よしよしと頭を撫でる。ユラもシズクの手の中へ戻り、安心した顔をした。
「怖いわけではないんですけど‥‥ちょっとこういうお話しは苦手で」
歩く速度を落とし、なるべくシズクのそばを離れないようにすすむ。少し歩くと宿らしき建物が見えてきた為、今日は早めに休もうと提案した。宿に入り店主に声をかける。
しかし宿に空きは無いらしく、他に泊まれるところはないか聞いてみたところ、この町にある宿はここだけだと告げられる。
仕方なく町の外で丁度良さそうな所を探し、湖のほとりで今日は一宿を取ることにした。ジメジメしているのもありアイラから、いの一番に不満が飛び出るかと思っていたがシズクを考えてか大人しくしている。
その夜、食事も済ませシズクが眠りに就いたのを確認しアイラと交互に仮眠をとった。アイラに揺り起こされ、交代を告げられる。アイラが横になるのを視界の端に見て、まだ意識のはっきりしない頭で湖を眺めた。
霧がかかりはっきりとは目視できないが、湖の上で何か黒い動くものを捉える。それは四足の生き物だろうか、ゆらゆらと動き湖に一度「バシャン」と音を立て動きを止め、こちらを向いているようにも見える。
その姿勢のまま横に足も動かさずに進んでいき、ついに姿を消してしまった。
あれは一体何だったのだろうか。あの生き物が人が消えていることに関わっているのではないかと、不安に思いながら考えている内に夜は明けていった。




