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TSエルフの異世界奮闘記  作者: yukke
第二章 グランクロス国 ~王都に渦巻く陰謀~
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第九話 胸騒ぎ

 その後俺は、案内に来た兵士に連れられて、俺が今日泊まる宿に辿り着いた。質素なものだな。まぁ、贅沢は言ってられねぇ。


「部屋もこんなもんか……」


 入って左手の壁にベッドが置いてあって、反対側にちょっとした机か。こっちの世界では、これが普通なのか?


「あ~全く、今日も疲れた……」


 そして俺は、ベッドサイドに腰掛けると、そのまま仰向けに寝転がる。ここに来るまでに、空賊と戦ったりしたからなぁ。

 それにしても、俺がこんなに危険な存在だったとは、正直思わなかったわ。これからどうしたものか……更正するしか手はないのか?


『諦めなって……あんたの中のは、あんた自身の心次第で、打ち消せたり、増大したりするの。あんたが更正すれば、そいつはあんたの中では生きられなくなって、消滅するわ』


 妖精が、俺の顔の上でフワフワと飛びやがって……。


「そりゃ分かったけどよ。だけどな……はい、分かりました。それなら今日から私は、女として生きていくわ……なんて出来るかよ」


『様になってるじゃない』


 そっちか、こら! 俺が今再現した女っぽい仕草に、反応してんじゃねぇよ!


「うるせぇな。とにかく、俺はそう簡単には……」


『その前にさ……窓から覗かれてるわよ』


「あっ……?」


 本当だ。妖精に言われて、仰向けのまま頭の方にある窓を見ると、1つ目に翼が生えたなにかが、空を飛んでいた。なんだあれは?


『ちょっと、早くなんとかした方が良いわよ』


「そう言われてもな……飛び道具はねぇし、蹴ろうとしても、この位置じゃあ避けられるぞ。それに、ただ観察するだけなら良いが、襲ってくる気なら、このまま泳がせても良いけどな」


『あのね、これは盗撮か……それかあんたを観察して、動きがあれば、対処しようとしてるんでしょうが』


 すると俺の言葉に、妖精がそう言ってきた。

 つまりなにか……これは、さっき言っていたソフィを狙っている奴等が、これを飛ばしているのか? 考えすぎじゃねぇか?


「う~ん、だけどそれは考えすぎじゃ……」


 ちょっと待て……今上で、誰かが動いた音がしたぞ。この宿は2階建てで、俺の部屋はその2階だ。つまり、この上は屋根であってだな、誰かいるとしたら、そりゃ悪い事をしようとしている人間だろうな。

 モンスターという可能性もあるが、聞いた話だと、街にモンスターは入れないらしい。結界が張ってあるとか、なんとか……。


 まぁつまり……この窓の外で飛んでるやつは、俺の盗撮なんかじゃなさそうだ。監視してやがる。ジュストの部下の可能性もあるけれど……どうしたものか。


「夕食もまだだしなぁ……とりあえず飯食いがてら、相手の反応でも見るか」


 もしもそのまま着いてくるようなら、かなり俺の行動を見ていやがるな。こっそり逃げられないように、俺の1つ1つの動作を、全てチェックしている事になる。

 それはつまり、俺の姿を見失いたくないという事……ということは、増援扱いされている。囚人扱いじゃない。


 ジュスト達による囚人扱いならば、この宿全体を見て、俺が宿から逃げないように、兵も付けるだろうな。ただ、兵は付けられていないから、客人に近い扱いだな。


 そうなると、俺が監視される理由は、増援としてある場所に来て欲しくないから……だな。


「やれやれ、相手は今日動くつもりか……どうやって、予知を攻略するつもりかは分からないが、相手は攻略する術を持ってるんだな」


 そうじゃないと、聖女を攫おうとはしてこないだろう。


 それが、相手の特異力によるものか、単純に作戦なのか……まぁ、とりあえず飯を食ってからにするか……腹減ったわ。


 そして、俺は晩飯を食うべく、その部屋を出て、食堂に向かおうとしたが……この宿、食堂がなかったぞ。外に食いに行くしかなかったな……。


 すると案の定、その目玉のやつも着いて来たよ。やっぱり……これは確定だな。


 ―― ―― ――


『それで~? どうするの?』


「どうすると言われてもなぁ……」


 急いだ方が良いのだろうが、監視されてんだよな……俺は。動いたら相手にバレる。


 飯を食い終わった後、宿に戻った俺は、自室に戻るとベッドで頭を抱えた。


 ジュストに連絡しようにも、それも見られてしまう。う~む……。


『あなた……自分の特異力の事、分かってないでしょう?』


 すると、妖精の奴が突然、俺に向かってそう言ってきた。何が言いたいよ?


『その特異力、私がここで暴れていた時に、使っていたものよ。プレゼントしたのよ』


「お前の特異力か……それで?」


『あ~もう……あんたの特異力は、何も爆炎を上げるだけじゃないのよ!』


「なんだと?」


『属性爆破と属性反射。それがあんたの……私が使っていた特異力なのよ!』


 それはつまりどういう事だっての。ファンタジーの事が分からない俺にも、分かるように言えよ。


『なんで首捻るのよ、もう!! あんた、ゲームとかやった事ないの?!』


「無いね」


 そこは素直に答えておこう。こんなので見栄張るもんじゃねぇしな。


『うぅ~! 爆発させて炎を上げるだけじゃないの! 炎じゃなくて、風だったり、氷だっり、土だったりね! それと同じように、その属性のものを反射させられるのよ!』


 おぉ……息を切らしてご苦労さん。

 つまり、爆発させて炎を上げるだけじゃないと……蹴って爆発しても、炎が上がるわけじゃなく、暴風が発生したり……とかか? 試してみるか。


「ん~それってつまりよぉ……」


『あっ、待って! イメージを変える必要があるから、そう簡単に……きゃわっ?!』


「うぉっ?!」


 おいおい、爆発させる時の要領で、風が吹き荒れるイメージを頭に浮かべ、床を思い切り踏みつぶすようにしてみたら、爆発する音が響き渡り、同時にもの凄い暴風が吹き荒れたぞ!


『嘘でしょう! 風の爆発を、そんな簡単にイメージ出来るなんて!』


 でもな……部屋でやるべきじゃなかったよ。思い切り天井にまで吹き飛ばされて、背中を打ち付けてしまったよ。


「いててて……もうちょい考えるべきだった」


 だけど、窓の外にいた変な目玉がいないぞ!

 あぁ、窓が割れてるし、さっきの暴風で遠くに吹き飛んだか。ということは……屋根の上の奴は、今ので慌ててるんじゃねぇか? それなら今の内だ!


 そして俺は、急いで割れた窓に向かい、そこから飛び出ると、窓枠を掴み、思い切り脚を外に振り上げ、遠心力を使って、一気に屋上に跳び上がった。


「なっ……!!」


「よ~し、お前!! ジュストの部下じゃねぇよな?!」


 だけど、脚を上に上げた状態で、下から飛び出て来た俺に向かって、そいつは小さな刃物みたいな物を、懐から取り出し、それを投げつけようとしてきた。


 おっと、そうはいかねぇよ。さっきの風の爆発で、吹き飛ばせば良いからな。それと、殺しにかかるという事は、こいつはジュストの部下じゃねぇだろうな。それなら容赦はしない。


「おらぁぁあ!!」


「ぐっ!! うわぁぁぁぁぁあ!!!!」


 やべぇ、ちょっと力が入りすぎていたか。

 飛んできたナイフに向かって蹴りつけ、さっきみたいに風の爆発を発生させたが、さっきよりも威力が強かった。ナイフが相手に向かって飛んで返ると同時に、相手も吹き飛んでしまい、向かいの家に突っ込んでしまった。


 あ~こりゃ騒ぎになるなぁ……だけど、それよりも何よりも、ジルとソフィの方が気になるわ。急がねぇと!


 そして俺は、急いで屋根から飛び降りると、その場から走り出し、教会へと向かう。

 せめてこれが、杞憂に終わってくれれば良いんだが……嫌な事に、相手の服装が黒で統一されていたのと、その目が、ジュストと同じ様な殺気に満ちた目だった。


 こんな気色悪い奴等の思い通りになったら、この国はどうなっちまうんだよ。そうなったら、俺はどうなってしまう? そんなの簡単だろうな、俺は魔王以上の存在にされてしまう。


 恐らくこいつらが、ジルやジュストの言っていた、黒い街の人間だろう……。


 ふざけるなよ、俺の事は俺が決める! お前等がコソコソと裏で動いて、操ろうとしてくんじゃねぇよ! そんな汚い奴等の計画は、俺が全部叩き潰してやる!

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