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男子なう  作者: U1
4/4

面倒な人と一緒なんです。

ベッドに倒れ込むと、ぎしりとスプリングが音を立てた。


荷物も片付けたし、今日はもうやることがない。強いて言うなら、食堂に行って夕飯を食べたい。そういえば、同室者との挨拶もまだだ。


「…めんどうだな…」


もういい。挨拶よりも先に寝よう。それで、夕飯時になったら起きて勝手に食堂に行こう。

睦月さんに教えてもらったので、食堂くらいだったら一人で行ける。

小さい頃からめんどくさがりやなのだ。そのことで困ったことが無いので今のところ直すつもりは無い。


もういい、と決めてしまったら早い。

私は落ちるように眠った。




「…い、」

「ん…」

「おい。テメェ誰だ!」


ぐらり、ぐらり。

身体が揺らされる。負けるか。やられる前に、やれ。


「涼兄覚悟!!」

「ぐほっ!?」


倒れた。あれ、いつもより弱い。どうしたんだろう。

でも、チャンスだ。

今日こそ連敗という汚名を返上するため、倒す。


倒れたところをさらに馬乗りになり、とどめの一撃を顔にぶちこむ、……寸前でその拳は止まった。


「どなたですか?」

「早くどきやがれ!!」




「ごめんなさい。寝ぼけてました。」

「……」

「ホントごめんなさい」


なんて失態を犯してしまったんだろう。罪のない人を、しかも初対面の人に攻撃してしまうとは。


私は怒りで言葉もないのか、沈黙をやぶらない同室者をちらりと見た。

色を抜きすぎて灰色になった髪を、うるふかっと?にしている。覗く耳には数個のピアスがついている。あんなにつけて耳が腐ったりしないのだろうか。

全体的に厳つい彼は、ややたばこの臭いがすることからも不良の立場であると見ていいだろう。


こんなお坊ちゃん学校にもいるのか、不良って。

ていうか、たばこの臭いつけたまま帰ってこないでほしいな。たばこは、私が嫌いな物のワーストスリーに見事ランクインしている。正直今も、ちょっときつい。顔をゆがめてしまいそうなくらいに。


「あの、」

「…テメェ、涼さんの知り合い………いとこか?」

「はい?っと、はい。そうですけど」


まだ怒っているのか、と聞こうとした言葉は遮られた。急な発言に驚く。そしてその内容の関連性のなさにさらに驚いた。ていうか何で知っているんだろう。


「涼の知り合いですか?」

「……呼び捨てにしあう仲か…」

「いえ。いつもは涼兄って呼んでますけど」

「あの涼さんをか!?」

「ちなみに、涼兄はさん付けされるの嫌いですよ」

「そうなのか!?」


夏休みにぼやいているのを聞いたことがある。眉毛繋がった人を連想させるかららしい。


「…こいつに近づいたら、涼さん、いや涼先輩にも近づけるな…」


恐らくぼそっと呟いた独り言だったのだろう。けれども、私の耳は平均より良い。しっかり最後まで聞こえた。

その呟きで大体分かった。

この人は多分、涼兄のファンなんだろう。風紀委員長をやっているという涼兄は、結構人気らしい。伯父さん情報である。

頼りがいがあって肉体的にも強い彼は、色々な意味でもてるのだろう。そう。色々な意味で。

この人がどういう意味で涼兄が好きなのかは分からないが、とりあえず宣言しよう。


もし、涼兄が彼氏?を連れて帰ってきても、私は平静に応えてみせる。


一人決意をしている間に、不良さんも思考の海から戻ってきた。それを見計らって私が座りながら少し頭を下げる。


「自己紹介が遅れました。俺は一年の如月光です」

「おう。俺は一年の霜月新だ」

「あらたって珍しい名前ですね」

「男でひかりほどでもねえだろ」

「ああ、確かに」


女なので気がつかなかった。元だが。

自己紹介をえて、同室者は新という同級生だということが判明した。せっかく同室なのだから、気安く新君と呼ばせてもらおう。

そう思っていると、新君が私の方に顔を向けながら立ち上がった。


「お前、メシどうする?」


本当に私を利用して涼兄に近づくつもりなのか、テメェがお前にランクアップしていた。

それに気を取られて返事が一瞬遅れた。新君の顔が訝しげなものになる。


「あ、食べます」

「そうじゃねえよ。食堂行くのかっつってんだ」

「え、行きます」

「じゃあ一緒に行こうぜ」


ちょっと驚いた。こういう不良の人って、連れだって行動することをよしとしないと思っていた。

そこまでして涼兄に近づきたいのか。だったら風紀委員に入れば、……この格好じゃ無理か。


「はい。……あの、何か?」


立ち上がりながら新先輩に顔を向けて、私は首をかしげた。

新先輩はテーブルに手をつきながら未だにこっちを見ている。睨んでいるとも観察しているともとれる視線は、受けて気持ちの良い物ではない。


「何でもねぇよ。おら、行くぞ」


何でも無いって。何でも無くないだろう。

だが、はっきり言われてしまった手前、これ以上追求するつもりもない。


なんだか、めんどくさそうな人だ。



「そういえば、」

「あん?」

「涼兄たばこ嫌いですよ」

「何ぃ!?」


まあ嘘ではないが本当でもない。別に嫌いだとか名言してた訳ではなかった気がする。

新君は慌ててポケットのたばこを自室に置いていった。

私を利用して涼兄に近づこうとしているんだから、禁煙くらいしろ。

5/10新の年齢変えました。

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