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十五階層のフロアボスはくさい

ステファノ君がゆっくりとドアを開けつつ、剣を構えたまま部屋へと入っていく。

同じように剣を構えた王子が続き、杖を構えた俺とアルノーが後に続いた。



天井まである重そうなドアをくぐり、中に入るとフロアボスが背中を向けて立っていた。

頭は天井に付きそうなほどに高く、横幅は俺たち四人が横に並んでも通せんぼできなさそうにでかい。

そしてくさい。にごった沼みたいなにおいがする。



「くっさっ」

「シー!」


思わず口に出てしまったのを、横に立つアルノーにわき腹をつつかれつつ注意されてしまった。

敵は背中を向けているので、先制攻撃のチャンスだもんな。


頭からは水かきの付いたヒレのようなものが出ていて、身体は藻のようなもので覆われていてぬめぬめしている。

ゲーム画面で見てもなかなかグロテスクで『乙女げーの敵・・・・・・とはっ』って思ったものだけど、こうしてリアルで目の前に現れると本当に気持ち悪い。

ちなみに、尻尾の先のヒレ部分が弱点で、氷魔法が弱点になってるんだよね。


そう!本当は十五階層行く前に俺とヒロインの出会いイベントがあって、「氷弱点の敵を攻略するのにディレーラ君の力を貸して!」っつってヒロインと俺とで挑むボスなんだよね!

そんで、迷宮を進む間の会話の選択肢と好感度によって戦闘後に「これからも必要があったら呼んでくれよ」って俺が言えば次からも探索パートナーに俺が選択できるようになるし、「なんとか倒せたな。これからもお互いがんばろうぜ」って俺が言ったらもう探索パートナーに選べないし恋愛パートの攻略対象からも外れる事になる。


昨日のなぜか敵ゼロ状態か〜ら〜の〜、クラス全員で朝活行動って流れになってしまってそのへんのシナリオは全部パァになってしまった。

まぁ、俺はヒロイン無視して卒業後冒険者目指すつもりだからバッチコイな状況なんだけどね!?


そっと忍び足で近づき、先頭を歩くステファノ君がハンドサインを出した。

3,2,1,GO!


「ふっ!」


声を出さないように、ステファノ君が気合を入れて剣を横に振りかぶる。ボスの足の腱を狙った攻撃だ。俺も、魔法の先生から『でかい獲物をヤル時はまず足を止めろ』と言われているから、セオリー通りの攻撃方法だ。

奇襲攻撃なので詠唱で声を出す必要がある俺とアルノーは一旦後ろで待機。なので、ステファノ君と殿下の動きがよく見えるわけなんだが。


ステファノ君はセオリー通りに足を狙って切りかかった。でも、殿下はしっぽの先を狙って剣を振っているんだよね。しっぽは早くはないけどニョロニョロ動くから狙いにくいと思うんだけど、なぜ?

大体、しっぽが弱点だと知っているのは俺が前世でこのゲームをやっていたから。 まぁ、卒業生の兄や姉が居るヤツはこっそり弱点とかを教えてもらっている可能性はあるんだけど、そうだとすれば殿下の護衛であるステファノ君にそれを伝えていないのはおかしいんだよな。


「ボスがこっちに気がついた! ディレーラ、僕らも行くよ!」

「おう!」


水が滴っているボスだが、弱点は氷だ。見た目的には炎系の魔法が効きそうだが、氷なのだ。

見た目は炎系が効きそうなのが、ゲーム的には引っ掛けなんだが……


「氷の矢!」


アルノーの突き出した手の先に五本の氷の矢が現れて、ボスに向かって飛んでいく。嘘でしょ? なんで?


「氷柱よ敵を地面に縫い付けよ!」


俺は、両腕を前へ突き出して詠唱し、唱え終わると同時に腕をバンザイするように振り上げる。すると、ボスの足元から三本ほど氷の柱が突き上げるように生えて体を地面に縫い付けた。

ボスはジタバタと暴れて体を貫通して地面に張り付けている氷柱を折ろうとするが、三本いっぺんに折れて堪るか。


「いいぞ! アルノー、ディレーラ!」

「ステファノ! 今のうちに切り刻むぞ!」

「はっ!」


ボスが、それでも比較的自由に動く右手をブンブン振り回して前衛二人を遠ざけようとするが、それをひらりと躱しながらコツコツとダメージを入れていく。さっすが、攻略対象二人はかっこいいな!


「ディレーラ、僕らも援護! ぼうっとしてないで魔法魔法!」

「お、おう!」


「氷の鞭!」


アルノーの手先からニョロリとした氷の蛇みたいな縄みたいな物が飛び出してボスのしっぽに絡みつく。くっついたところからパキパキと音を立てながら氷が広がっていく。おぉ。

負けてられない。甘いもの食べすぎて増えた魔力を見せつけるときだな!


「氷礫! 氷弾! 氷の矢!」


右手! 左手! 右手! と交互に魔法を射出していく。 魔力的にはまだ余裕がある。何故かいきなり弱点を狙う殿下と、何故か迷いなく弱点属性である氷の魔法を使うアルノー。そして前世知識で弱点を知っている俺でゴリゴリ削っているのでなんとか行けそうな気がしてきた。


五階層、十階層のボスを飛ばしていきなり十五階層のボスに挑んでいるので、きついだろう事は覚悟していた。

ゲームでは大体レベル15ぐらいで初挑戦するボスなんだよな。

今の俺たちはステータスが見られるわけじゃないから、レベルいくつなのかは判らない。だけど経験値が圧倒的に足りてないことは確実だよね。

入学式からまだ三日目だし、迷宮初挑戦だった昨日は接敵無しだったんだからレベルなんか上がらないわけでさ。ステータスを表示できたとして全員レベル1か、昨日朝活していた俺だけレベル2とかそんなもんだろう。


ゲームでは二人パーティで対するけど、今は四人パーティで対峙できているのはだいぶでかい。前衛二人に後衛二人でバランスも良い。ただし、回復役が居ない。


ステファノ君は力強く、大きく振ってガッツリ切り込んで行くスタイル。一撃がでかいくてダメージもでかいがスキもでかい。今も突き刺さった剣を抜くのに手間取って、上からボスのしっぽが襲いかかってくるじゃん!


「ステファノ君、上! 氷の矢!」


注意を叫びつつしっぽに向けて氷の矢を放つ。 うまいことあたって、しっぽを弾いた! よっしゃ!


「すまん」


剣を抜いたステファノ君は一言こちらに声をかけてバックステップで距離を取る。それと入れ替わるように殿下が飛び込んで細い剣で素早く何度も切り込んでいく。 殿下はスピードタイプだな。 手数の多さで削るタイプだ。


俺とアルノーで魔法をガンガン打ち込んで動きを止めつつ体力を削り、アルフォンス殿下とステファノ君で物理的に削っていく。その連携で、ジリジリとぬらぬらしててくさいボスを削りきり、最後はゆっくりドシャーっと倒れていくのを見守った。


「うぇえ。 なんか臭い水草みたいなのが飛び散ってきた」

「皆、怪我はないか? 無理せず回復薬を使えよ」

「つっかれたぁ〜」

「殿下、もうすぐ就業時間になります」


結局、十五階層のフロアボスを倒すだけで俺たちの今日の朝活は終わってしまった。

他のフロアに別れたクラスメイトたちはどんなだったんだろうな。 そんな事を話しながら、出てきた扉をくぐって、俺達は転移陣で一階層まで戻ったのだった。


戦闘シーン下手くそ選手権で勝てそうな気がします

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― 新着の感想 ―
[良い点] 作者さんの、別の作品からきました。 面白いです!! これからの更新も楽しみにしてます!!!
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