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この感情の名は

 帰って行く副所長を見送った私は、自分の気持ちを整理する時間を得る。



 副所長が私に、仕事の部下以上の優しさで察してくれているのは分かった。


 そして、私は副所長の存在に救われて、エドワードには感じなかった感情を副所長に持っていた。



 正直、これが愛なのか、愛だとすれば、異性として愛しているのか、人として愛しているのかが分からない。


 幼い時から、自分の意思とは関係なく婚約者がいたせいか、異性に対して友人以上の感情を持たないようにしていたから、この感情を何て呼んだらいいのか分からなかった。



 公園から帰って来た次の日の朝刊に、違法魔法道具使用の記事が出た。


 首都の記者の多くが、違法改造された魔法道具を使って撮った写真を使い、記事を書いていたらしい。


 そして、エドワードの記事を書いたゴシップ誌も、違法魔法道具を使用していたと書かれている。


 自分が関わっている捜査に関しての記事で、エドワードの記事を書いたゴシップ誌の事が書かれているのに、私はぼんやりと見る事しか出来ない。



 起きて、朝食を食べて、庭に出て、庭師と話して、読書をして、メイドと話して、昼食を食べて、両親からの手紙を読んで、返事を書いて、夜食を食べて、お風呂に入って、寝る。


 日常を送りながら、自分の気持ちの整理をする。



 私は考えて考え込んだ末、ある結論を得る。


 それは、自分の感情でさえ理解できないのに、他人の感情が分かるはずがないというものだ。



 思考を放棄したような気もするけれど、副所長に私の事をどう思っているのか、そして、私が副所長の事をどう思っているのか、話をすれば、私のこの感情の名前が分かる気がした。



「お嬢様、お客様がお見えです」



 公園に行ってから二日が経った日、メイドが私を呼びにくる。


 準備を済ませていた私は、鏡に映る自分を見る。


 不安そうな顔の下には、副所長に貰ったネックレスが輝いている。



 大丈夫よ、シャーロット。

 この感情にどんな名前が付いても、私はそれを受け入れるだけ。

 

 不安を消すようにニッコリと笑うと、私は副所長が待つ部屋へと急いだ。

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