12 初手、結論
やっと順番が来るまでしばらく待った。
すごい門だ。
高い高い壁をくり抜くようにある門の高さは俺の身長の倍以上。幅は、馬車がすれちがっても余裕があるくらい。
アリンさんから聞いてたとおり、警備の兵が数人いて、入ろうという人に、通行証を持っているかどうか、持っていなければ書類を、あるいはお帰りを、などと手続きをしていた。
「アリンさん!」
警備兵のひとりがやってくる。
「どうして列に。お先にどうぞ!」
「これが、王都遠征兵の証明だ」
アリンさんは首につけていた鎖の先の、小さな金属版を見せた。
「そんなものなくてもわかりますよ!」
「顔でわかると思ってもきちんと証明させろ。顔が似ている人間を通すようではだめだ」
「はい!」
警備兵がこっちを見る。
「彼は……?」
「危険を救ってもらった。特殊なスキルを持っている可能性があるから、調べたい。もう首には、スキル封印の首輪をつけているから、町中でおかしなことにはならないだろう」
「ちょっと失礼」
警備兵は俺の首輪を調べた。
「……はい、きちんと施錠されています!」
「通っていいか?」
「どうぞ!」
警備兵は、大げさな動きで中に入るようにうながした。
入る前から見えていたのは、たくさんの建物だ。
「すごいにぎわってますね」
ひええ、となるくらい、人がたくさんいるし、商店もたくさんならんでいた。
「こっちだ」
アリンさんは、壁にそった横道から俺を呼んでいた。
「路地はちょっと……」
「わけのわからないことを言ってるんじゃない」
人の声が離れていく。
高い壁を見ながら、人が全然歩いていない、さびしい道を進む。
近くに見える建物といえば、家というより、物置とか、倉庫みたいなみたいなものばかりだった。
「どこに行くんですか」
「兵舎だ」
「へいしゃ? なんですか?」
「兵隊の、住んでいるところだ」
アリンさんの言う通り、何度か道をまがったりしながら進んでいくと、立派な門をかまえた三階建ての、石造りの建物があった。
門番も二人いる。大男が槍を持っていて立っていた。
「アリン、いまもどった」
「おつかれさまです。お荷物は?」
「捨てた。あやうく、村でいけにえになるところだった」
「それはそれは」
「彼のスキルを見たい。場合によっては、しばらくここに閉じ……、滞在してもらうことになる」
いま、閉じこめる、って言おうとしなかった?
「アナは?」
「いらっしゃいます」
「すぐ見てもらいたい」
「かまわないと思いますよ」
「わかった」
なにかをわかっているアリンさんに連れられ、なにもわかっていない俺は門の中に入っていった。
庭園のような飾りつけはまったくなく、建物の灰色と、土の茶色という、ただただ色のすくない玄関前だった。
「なにがあるんですか?」
「中でお前のスキルを調べてもらう」
「そんなにすぐわかるものなんですか?」
「ああ」
扉を開け建物に入ると、すぐ広間になっていた。
そして
「……うおっ」
広間も石造りというか、灰色の壁と床で、簡素の極みだ。
だからど真ん中にあるものがめちゃくちゃ目立つ。
中央に、ガラスでつくられた小部屋のようなものがあって、中には女の子が座っていた。
十歳くらいだろうか。
赤と黄色の、色鮮やかな椅子に座って、机で本を開いていた。俺たちを見て本を閉じる。
白い肌と黒い髪。
つくられたもののようにきれいな女の子だった。
にっこり笑う。
「おかえりなさい、アリン」
「ただいま」
アリンさんがにこっ、と笑ったのでつい、ぎょっとしてしまった。
「げっ」
いや、声に出てしまった。
アリンさんが変な顔で俺を見る。
「彼女はアナ。他人のスキルを見ることができるスキル、の持ち主だ」
「アリンにしてはめずらしいのね。今日は、スキルを持ってない人じゃない」
「え?」
アリンさんが言う。
「え?」
俺も言う。
結論、出た。
俺、スキル、なし!




