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43 リアルアタック

 次の日、いつも通り遅刻ギリギリに雅雄が通学路を歩いていると、学校近くの交差点でメガミが待っていた。


「雅雄君、おはよう!」


「あ、メガミ……。おはよう」


「えっと、昨日のことは覚えてる……?」


 不安そうにメガミは雅雄の顔を覗き込む。どうも雅雄はゲームオーバーになって記憶を失っていないかと心配されているようだ。雅雄は苦笑いしながらうなずく。


「うん……。どうにか逃げ切れたから……」


 メガミはホッと胸を撫で下ろした。


「そうなんだね! よかったぁ……。ごめんね、途中で気絶しちゃって……」


「いやいや、メガミはよくやってくれたよ。あんなの、僕には無理だからさ……」


 雅雄はLv.99となったメガミの姿を思い出す。あそこまでのオーバーライドができるのはメガミだけだろう。絶対に雅雄では勝てないと、改めて思い知った。


「それで、レア武装はゲットできたの?」


「……いや、逃げるだけで精一杯だったよ」


 メガミに訊かれ、雅雄は一瞬黙った後、首を振った。何故だろう。本当は〈ブルー・ヘヴン〉を手に入れているのに。


 嘘をつく意味なんて全くない。何せ無職の雅雄は〈ブルー・ヘヴン〉を装備することができないのだ。当初話をした通りに引き渡せば、メガミはそれなりの対価を支払ってくれるだろう。使えないレア装備よりお金とそこそこの装備をもらった方が得なはずだ。


 ちなみに〈ブルー・ヘヴン〉を静香に渡すという選択肢はない。メガミのパーティーを殺せなかった時点で、静香的には作戦失敗だ。〈ブルー・ヘヴン〉を渡したらその場で斬られるという展開さえありえる。何をされるかわからないので、しばらく静香を避けなければなるまい。


「そっか。仕方ないよね。誰も死ななかったってだけでも、運が良かったと思わないと」


 メガミはあっさり雅雄の嘘を信じた。引き返すなら今しかない。でも、雅雄は言い出せない。雅雄は何食わぬ顔をしてメガミと会話し続けるのみである。


「あ、うん、そうだね……」


「それじゃあ私、ちょっと生徒会室に行かなきゃいけないから! 雅雄君、また教室でね~!」


 校門まで来たところで、手を振りながら駆け足でメガミは去っていく。雅雄は小さく手を振ってメガミを見送った。




 雅雄は一人で自分の教室に入る。また今日も退屈な一日が始まる。そんなことを考えながらぼんやり自分の席を目指して歩いていると、雅雄の背後でガラガラガラ! という酷く耳障りな音とともに、勢いよく教室のドアが開いた。


「平間雅雄ォッッッ!」


「えっ……? うわあああっ!」


 とっさに避けられたのは奇跡としか言いようがない。ドアの向こうにいたのはツボミで、ツボミは雅雄に向かって突進しながら手に持っている木刀を振り降ろしていた。空振りしたツボミの木刀は教卓の上に置いてあった花瓶を粉砕する。


 ガシャンと耳障りな音が響いた。周囲で女子が悲鳴を上げる。男子は「バカ、やめろ!」などとツボミに声を掛けるが、木刀を持ったツボミには近づけない。


「平間雅雄……! 絶対に許さない!」


「ど、どうして……?」


 ゾンビ双頭竜に殺されて記憶を失っているものだと思っていたのに。雅雄は問い掛けるがツボミは答えない。「死ね!」と一言発してまた突進してくる。


 おそらくゾンビ双頭竜はツボミにレベルドレイン以外の攻撃を行わなかったのだ。思い返してみれば、ゾンビ双頭竜は昨日その場で回頭してツボミを補足するということは行っていたが、追いかけるまではしていなかった。ゾンビ双頭竜はレベルドレインだけを撃ち出す固定砲台になっていたのである。


 きっと、一度メガミに倒されているからに違いない。ラスボスとしての役目を終えた双頭竜は、レベルドレイン用オブジェクトとして新たな人生を歩み始めていたのだ。


 職業に就いているとステータス上昇によってスキルを獲得していくが、ステータスがそのスキルを覚える数値より最初から高いと、スキルを獲得できない。スキル獲得のためあえてレベルを下げたい場合に、ゾンビ双頭竜の世話になれということなのだろう。


 ツボミはきっとレベルドレインを受け続けてLv.1まで下げられた後、どうにか脱出してきたのだ。宝箱のハイレベル装備を奪ってトッププレイヤーに躍り出るはずが、雅雄と同じLv.1に転落してしまった。そうして怒り心頭のツボミは、雅雄をリアルで襲撃した。


「ボクを盾にしやがって!」


 雅雄は滅茶苦茶に振り回されるツボミの木刀から全力で逃げる。あんなのでしばかれたら骨折してもおかしくない。雅雄はツボミに背中を向けてダッシュするが、机に足を引っかけて転倒した。慌てて起き上がり、また逃げようとするが雅雄は窓際に追い詰められていた。


「もう、逃がさないよ……!」


(メガミ……! 静香ちゃん……! 誰か……助けてよ……!)


 憤怒の形相でツボミは迫る。雅雄は半泣きで助けを求めてキョロキョロと辺りを見回すが、メガミも静香もいない。万事休すだ。


「死ねェっ!」


 本気で殺す気で、ツボミは木刀を振り降ろす。

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