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17 次への道程

 雅雄は次の日一日を使って【名もなき町】周辺を探索する。ここも半分チュートリアルなステージのようで、出てくるモンスターは森の中と大差ない。相変わらず経験値1のモンスターばかりで、得られるお金がわずかに増えた程度か。


「この街道を北に行けば【ブレイバーズシティ】だよ」


「ありがとうございます!」


 NPCからの情報で、次は名のある町があるということがわかった。きっと、次からが本番なのだ。


「よし、もうちょっとだな……!」


 【名もなき町】の武器屋にある武器防具はそこそこ値が張るので雅雄の持ち金では買うことができない。しかしこの周囲のモンスターを倒して得られる経験値やお金はかなり少ない。【名もなき町】に留まってお金を稼ぐより、次の町に移動した方がいいだろう。雅雄は未だにLv.1なのだ。


 今日の残った時間で街道方面に出てくるモンスターを確認し、明日には【ブレイバーズシティ】を目指そう。そして明後日、態勢を整えて【ブレイバーズシティ】周辺にあると思われるダンジョンに挑戦する。五日でそれなりのダンジョンに行けるなら、悪くないペースだ。


 他のプレイヤーたちの状況はどうなのだろうか。そういえば雅雄は一度も他のプレイヤーに出会ったことがない。


「時間が合わないからかな……?」


 部活や委員会に所属していない雅雄は、授業が終わると同時に直帰してログインしている。部活、委員会活動が終わり、夕食を食べてからログインしていると思われる他の参加者と会わないというのも無理もないことだ。また、早くもゲームオーバーとなってしまったプレイヤーもいるのだろうと推測される。


 雅雄は深く考えることなくいったん宿屋で休憩した後、探索に戻った。




 翌日、雅雄は予定通り街道を進む。街道は森の中の道より遙かに長いが、出てくる敵は森のモンスターに毛が生えた程度である。森のモンスターよりは確実に手強いものの、せいぜいレベルは5まで。レベルは1のままだが、三日間で経験を積んで強くなっている雅雄の敵ではない。むしろ敵が弱すぎて経験値が入らないのがストレスである。


 行程は順調で、雅雄は危なげなく鉈で雑魚敵を倒しながら【ブレイバーズシティ】に近づいていった。


 「【ブレイバーズシティ】まであと1キルメイル」という看板が見えたところで、雅雄は立ち止まる。


 そこにいたのはツボミだった。〈銅の剣〉を背負い、〈革の服〉で身を覆っている。【名もなき町】の武器屋で購入したのだろう。見習い騎士、といった体の格好だ。学校での改造制服の方が派手なので、なんだか地味目に見える。普通逆だろうに。


「やあ。君もこのゲームに参加してたんだね。……ていうか何? その格好?」


 ツボミは吹き出しそうになるのを抑える仕草をする。


「……村で買ったんだよ。これしかなかったんだ」


 今思えば、あの村で武器防具を買うのは悪手だったのかもしれない。村で装備を買うのを我慢して【名もなき町】に到着していれば、雅雄も同じくらいの装備を揃えることができた。だが村で装備を揃えていないと、シノのイベントをクリアできず死んでいた可能性が高い。


「村……? ああ、あの森の向こうには村があるんだ。でも、そんな装備しか置いてないんじゃ行く必要なかったみたいだね」


 ツボミの言葉を聞いて雅雄は首を傾げる。


「え……? 普通、あの村からスタートなんじゃないの?」


「ボクは【名もなき町】からだったけど?」


 ツボミはこともなげに言う。ステータス表示を見れば、ツボミはLv.11である。雅雄より10もレベルが高い。町と村で出てくるモンスターは大差ないのに、どうしてこんなに差がついているのだろう。雅雄の知らない攻略情報を、みんな知っているのか。


 内心の動揺を隠すように雅雄は、威勢よく負け惜しみを吐き出す。


「そんなの、すぐ追いつくから関係ないよ」


 実際問題、進度でいえば同じなのだ。ツボミは街道で雅雄に追いつかれたのである。ハイレベルなモンスターが出ると思われる次の町では雅雄の方が低レベルな分、レベルが上がるのは早いだろう。シノからもらったレアアイテム〈身代わりのお守り〉の分だけリードしているともいえる。そんなに悲観することはない。


 雅雄は心の中で自分に言い聞かせるが、疑問は消えない。レベルが十違うというのは大きすぎる。すぐレベルが上がるゲームでもないのに。


 雅雄の顔色を見て何を疑問に思ったか理解したのだろう、ツボミは教えてくれる。


「ボクは最初からLv.11だったよ。人によって開始時のレベルが違うみたいだね」


 雅雄は何も返さずに青い顔でツボミを追い抜き、早足で進み始める。ツボミものんびりと雅雄の後方を歩き始めた。


「ついてこないでよ!」


 雅雄はヒステリックに怒鳴るが、ツボミは苦笑いして肩をすくめる。


「仕方がないだろう? 目的地は同じなんだから」


 どうして雅雄はこんなに動揺しているのだろう。自分に問うてみれば、答えは明白だ。メガミならともかく、雅雄はまさかツボミに負けているとは思っていなかったのである。ツボミなんか外見ばかりを気にしてちょっと背伸びしているだけのガキなはずなのに、雅雄は普通にそれ以下だった。かなりのショックだ。


 結局〈ブレイバーズシティ〉まで雅雄とツボミは一緒に歩くことになった。終盤にLv.10を超えるモンスターも出て、ツボミに倒してもらったため結果オーライではあるのだが、見下していた相手に助けられるなんて非常に情けない。こんな調子で大丈夫なのだろうか。

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