15 決着
「よし、もうちょっとだ……!」
「雅雄! まだ! まだ終わってないがね~!」
三匹の血まみれになった岩スライムは動き出した。岩スライムたちはぴょんぴょん跳ねて一ヶ所に固まる。スライムは溶け合って一つとなり、新たなモンスターになった。『フュージョン!』の文字がポップし、ステータス表示は『ビッグ岩スライム Lv.9』に変化。バランスボール大の岩塊となる。
「こ、これは……!」
雅雄は背を向けて逃げ出したいという衝動に駆られるが、すんでの所で踏みとどまった。勝つしかない。勝ってアイテムを手に入れれば、きっと他のプレイヤーより一歩リードできる。
雅雄はポーションを飲みつつ身構えて、ビッグ岩スライムを凝視する。こいつがどんな攻撃を仕掛けてくるかなんて、わかりきっている。体当たり一択だ。問題は、体当たりを避けられるかどうか。
ビッグ岩スライムは焚き火から飛び出すいが栗のような勢いで雅雄に体当たりを仕掛けてくる。雅雄は間一髪のところで横に避けた。雅雄の背後に立っている大木にビッグ岩スライムは激突する。樽一個分くらいの太さがある大木は、めきめきと音を立てて倒れた。
(あんなの喰らったらひとたまりもない……!)
雅雄は倒れてしまった大木を見て真っ青になる。敵の通過地点に鉈を出すという技は使えそうにない。腕ごと持っていかれそうだ。
ならば、地道にHPを削っていくしかないだろう。幸い、敵の思考ルーチンに変化はないようである。体当たりを全て避け、着地したところを攻撃する。あまりダメージを与えられている感触はないが、とにかく敵のHPが尽きるまで繰り返す他ない。
レベルが低いうちはこういう戦い方が基本になる。集中力を切らせて負けるのでは話にならない。あと一息だ。
「雅雄! もう一踏ん張りよ~! がんばって~! 『リトル・アクセラレート』!」
ビッグ岩スライムとの戦いが佳境に入る中、シノはスピード強化の補助魔法を雅雄に掛ける。これでもう少しやれそうだ。
「ありがとう!」
雅雄は木を盾にして走り回り、攪乱しつつじわじわ反撃していく。雅雄は十数回同じ動作を繰り返し、ようやくビッグ岩スライムの体表にヒビを入れることができた。ここを集中攻撃すればきっと勝てる。
「私も雅雄に負けてられんよ~! えいっ!」
シノも近くの石ころを拾って投げつけるという方法で攻撃に参加する。投石でも、少しはダメージを与えられるようだ。しかし、シノの攻撃を受けたことでビッグ岩スライムは標的を変えた。
「グガァッ!」
「ヒエッ……!」
ビッグ岩スライムはシノに飛びかかり、シノはその場にしゃがみ込んで辛うじてビッグ岩スライムを避ける。
「シノ、逃げるんだ……!」
「こ、腰が抜けてた、立てないんよ……!」
シノはその場で震える。ビッグ岩スライムはシノの方を向く。これはまずい。
「すぐ助けるよ!」
間に合ってくれ。雅雄は必死に走りながら、考える。ビッグ岩スライムの意識をこちらに向ければ再びターゲットを雅雄に戻してくれるかもしれない。
「当たってくれ……!」
一か八か、祈るような気持ちで雅雄はナイフをビッグ岩スライムに投擲した。これが当たらなければ、シノが死んでしまう。絶対に外せない。当たれ……! 絶対当たれ! 必死の祈りが通じて何かの技が発動したのか、ナイフは虹色のエフェクトを発生させながら直進する。
「グギャアアアアッ!」
雅雄の思いが通じたのだろう、ナイフは吸い込まれるようにビッグ岩スライムの体表に入った亀裂に突き刺さった。怒り狂ったビッグ岩スライムは雅雄の方に突進してくるが、雅雄は補助魔法でスピードアップしている。雅雄は難なく突進を避け、後ろをとった。きっとこれが、最初で最後のチャンスである。
「これで終わりだ……!」
雅雄はビッグ岩スライムに組みつき、刺さっているナイフの上からさらに鉈を突き入れる。耐用限界を超えたらしく、ナイフはポリゴンが弾けるようなエフェクトとともに消滅した。雅雄は鉈をぐりぐりと動かしてビッグ岩スライムに内部からダメージを与え、とどめを刺す。
「ガアアアッ!」
断末魔の悲鳴とともにビッグ岩スライムは消滅する。ちょっと少な目に思えるくらいの経験値とお金が入ってきて、戦闘は終わった。




