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14 二人の冒険

 雅雄とシノはどんどん森の奥に入っていく。実のところ、雅雄はシノの父親を昨日すでに見つけていた。森の奥手で怪我をしているのか動けなくなっているおじさんがいたのである。そのときは装備が整っていなかったのでスルーしたが、今日は助ける。


「……それでニワトリをみんな譲っちゃって、埋め合わせのためにキノコ採ってくるって言い出して……。ほんと、困ったお父さんだがね~!」


「それは大変だね……」


「ほんとは私も村から出たいって思ってるんだけどね~! 私はちょっとだけなら魔力もあるし、冒険者もいいかな~、なんて」


 道中、何度かモンスターに出くわしたが、シノは回復の魔法を使える。雅雄が前衛を務めて問題なく倒せていた。


「でも、お父さんがこんな感じだから、放っておけないんよ~! 私、雅雄がうらやましい! 世界を旅してるんやろ~?」


「いやぁ、僕もまだこの周囲しか行ったことないよ」


 雅雄はシノとともに雑談しつつ、記憶を頼りにシノのお父さんと思われるおじさんを探す。場所がランダムに変わる設定かもしれないので、油断は禁物だ。雅雄は目を皿のようにして森を歩き、すぐにシノのお父さんを発見した。


 雅雄は周囲を見回し、モンスターがいないことを確認する。シノは父親の元に駆け寄る。


「お父さん!」


「おお、済まない、シノ。捜しに来てくれたのか……」


 一拍置いて雅雄もシノのお父さんのところに行き、尋ねる。


「大丈夫ですか?」


「実は足を挫いてしまいまして……」


 木にもたれかかって座り込んでいるおじさんは困った顔をして訴える。


「私が肩を貸すから、お父さん、立って……」


「さぁ、モンスターが出るといけないから早く……」


 シノがおじさんを助け起こし、雅雄が急ぐように促していると、おじさんが警告を発する。


「気をつけなさい! モンスターだ!」


「僕が倒します!」


「私も手伝う! お父さんには指一本触れさせないからね~!」


 雅雄は前に出て、シノはおじさんをその場にもう一度座らせる。現れたのは『岩スライム Lv.3』が三匹だった。雅雄たちは囲まれている。


(三匹はきついな……。でも、やるしかない……)


 すでに賽は投げられているのだ。クエストを放棄すればどんなペナルティがあるかわからないので、シノとおじさんを見捨てて逃げるという選択肢はない。雅雄は左手で鉈を構え、右手でナイフを抜く。


 岩スライムは文字通り軟体の体にごつごつとした岩をいくつも貼り付けたモンスターだ。ボーリングの球より一回り大きいくらいのサイズだが、三体もいるとなかなか圧迫感がある。


「グルルル……!」


 岩スライムたちは低くうなり声を上げながら、次々と雅雄に飛びかかってくる。その堅い体を活かした体当たりだ。雅雄はさっと身を躱して一体目を避けるが二体目、三体目が続けて飛来する。


「クッ……!」


 雅雄は二体目を鉈で弾き飛ばした。重い感触で左手が痺れる。三体目はさすがに防ぎきれないが、右手でナイフを使ってどうにか軌道を逸らし、直撃だけは避ける。HPゲージが削れ、12/20となった。どうにか防御してこれなのは、結構きつい。


「雅雄、今助けるからね~! 『リトル・ヒール』!」


 シノが回復の呪文を唱え、雅雄のHPは回復する。しかしシノにもMPは設定されており、回復呪文を使えるのはあと五回程度だ。


(鍋の蓋は買っておくべきだったのかな……)


 今さら後悔しても遅い。勝つしかないのだ。


 岩スライムたちの動きは単調で、順番に雅雄に体当たりを仕掛けてくるだけだ。しかし三匹がきっちりローテを守っていると、攻撃に切れ目がない。雅雄は回避と防御に徹しつつ、打開策を考える。このままだとジリ貧だ。


(こいつら……。僕しか狙ってない)


 そのうちに雅雄は気付いた。雅雄はシノやおじさんを守るように立っていたが、どうもその必要はなさそうだ。大きく動いていいなら、いくらでも手はある。


 一匹目の岩スライムが跳躍したところで雅雄は大きく身を躱す。そして二匹目が来たところを鉈で思い切りぶっ叩き、軌道を変えてやる。二匹目はちょうど雅雄に飛びかかろうとしていた三匹目と玉突き事故を起こし、体表の岩が剥がれるほどの大ダメージを受けて二体とも動きを止める。


「やった! うまくいった……!」


 雅雄の運動神経でうまく行くかは微妙だと思っていたが、ドンピシャリで当てることができた。やれる。雅雄は勝てる。


 即座に雅雄は動いた。ダッシュで一体目との距離を詰めたのだ。先ほどの玉突き作戦は賭けだったが、今回は確実である。どうせ一体目が跳躍する軌道は同じだ。ならばその軌道に鉈を振ればいい。


 鉈と岩スライムが激突し、鈍い音が響いた。重たい衝撃が手首を襲い、雅雄は鉈を取り落としそうになるのをどうにか堪える。


 新品の鉈はよく保ってくれた。正面から鉈に激突した岩スライムは跳躍した勢いをカウンターで自分に返され、体の半ばまで鉈が食い込む。岩スライムは真っ赤な血を流して悶えた。


 これで三体とも手負いである。思うように動けなくなれば、こちらのものだ。一体ずつ確実に仕留めればいい。


「よし、もうちょっとだ……!」


「雅雄! まだ! まだ終わってないがね~!」


 雅雄は歓喜の声をあげるが、シノの言葉通り、岩スライムが不気味に蠢動する。どうやら勝負はこれからのようだ。

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