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見回してみるのだけど誰もいない。
―おいしっスか?
また声がした。
どうやら、後ろの男からのよう。
―ええ、まあ
不意を突かれ、マヌケな返答になってしまった。
―いっスねえ
―い、いえ、たいしたものは入ってないんですけど
普通に答えてしまってるけど、はたして、いいんだろうか。
―白メシにふりかけ、玉子焼き、ウインナー、ほうれん草のごま和え、あとは、金時豆とたくわん、っスか
―え、当たってます
―へへっ
―すごい、すごいです
―いえいえ
―こっち見てないですよね、なのに、なんでですか?
―わずかなにおいと咀嚼音、っスかねえ
―へえ、ほんとすごいです
―いえいえ
―職業柄、ですか?
―まあ、そんなとこっスねえ
ときどき出てくる軽い受け答えが、殺し屋には似つかわしくない。
殺し屋らしくない男に、けれど私は、普通に感心してしまった。




