第6.5話「(閑話)“Witch” and “Magical girl”」
「魔女」と「魔法少女」
明治35年2月。
(原文:津田秋太郎、訳:今田幸次郎)
私、津田秋太郎は、連合王国内ホヘールズにおいて、民族独立を掲げる一派との紛争鎮圧を観戦武官として視察する機会を得た。そこで信じがたいものを見たのでここに報告する。
なお、当事者への聞き取りは軍機を理由に代表者1名にしか許されなかった為、正確性に欠ける点は留意のこと。
民族独立主義者は30名程の集団であった。武器は刃物が主で2名だけ拳銃所持者がいた。軍はこれを包囲し、説得を試み、最終手段として武力鎮圧を行うと推察できた。
だが、ここで状況が一変する。集団の中で1名が全身に毛の生えた『怪物』に変化し、集団内で暴れ出した。拳銃所持者がこれを鎮圧しようと発砲し、命中したが傷を負わなかった。
これを受けて軍は通信を行った。内容は知る由もないが、ほどなく増援要請であったものと推察される。1時間程で『魔女』及び『魔法少女』と呼ばれる女と女児、合わせて5名が箒に乗って飛来した。
魔女達の増援を待つ間、軍は包囲を続け、『怪物』は民族独立主義者集団を襲い、攻撃を受けた者も同じく『怪物』に変わり、怪物の数は5体となった。また、攻撃から逃げようとした民族独立主義者は包囲する軍へ投降し、それ以上は増えようがなかった。
魔法少女と思われる5人の中では1番幼い女児(おそらくは10歳前後と推察される)がまず、呪文(観戦位置が遠く聞き取れないが口が動いたのでそう判断)を唱え水で攻撃を行った。だが、これも有効打にはならず、攻撃を受けた怪物1体が魔法少女に襲いかかろうとした。だが、若い女が打撃で応戦し格闘戦となった。若い女は非常に怪力で最後は軍用自動車を『怪物』に投げつけ、これを撃破した。
圧巻だったのはもう1人の女だった。残った4体を1撃で屠ったのだ。まずは女児2名が、射線上にいた包囲部隊の軍人を退避させ、凄まじい風が起こった。次の瞬間には『怪物』はバラバラに切断されていた。
さらに驚くべきは死体はその場に残らず、灰のように風に舞って散った。残ったのは『魔石』と呼ばれる親指の爪程の球だった。
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事件収拾後、風を起こした『魔女』に質問を許されたので次にまとめる。
・あなた方は何なのか?
『「魔女」・「魔法少女」と呼ばれる存在である』
・5名だけか?
『詳しくは言えないが「連合王国」内で80名以上いる』
・「魔女」と「魔法少女」の違いは?
『年齢と能力。成人以上、かつ複数の魔女が認めて「魔女」となる。それ以外はたとえ老女でも「魔法少女」と呼ぶ。「少女」に「未熟」という意味を含むから』
・どのような女性が「魔法少女」になるのか?
『それは我々にも完全には分からない。だが、信仰に身を置く女性に多い。連合王国では一般の女性100人に1人見つかるかどうかだが、修道女では20人に1人ほどの割合になる。理由は未だ不明である』
・どうやって判別するのか?
『簡単だ。魔石に触れれば「身体強化」がたちまち起こり、拳銃やナイフで攻撃されても怪我をしなくなる。飛行もできるようになる。他の魔法は個人の資質によるが』
・あの怪物は何だ?
『我々は「怪物」と呼んでいる。詳しくはわからない。少なくとも中世以前から欧州各地に出る。倒すと「魔石」を残す。これが「魔女」と「魔法少女」が魔法を生む媒介となる』
・という事は、欧州各地にあなた方のような存在がいるのか?
『当然である。「美の国」では「マリー=アントアネット」や「ジャン=ヌ=ダルク」が有名だ。東洋人に伝わるかわからないが。だが、我が「連合王国」程、数は多くない』
・宗教的なものか?
『よくわかったな。我が教会系は「魔法」を犯罪に使った者のみ処罰し、ローマは全面的に恐れた。だから「魔女狩り」が行われた。中世で「あの聖母」が魔法少女だったとして、「神の子」も「奇跡」を起こした以上、女性かもしれない。そんな信仰が広まった。そうなると男性上位で作られた制度が根幹から揺らぐ。だから徹底的に行ったのさ。
そして、「魔法」「それを使う私たち」「怪物」は国家の極秘とされた』
聞き取りを終えたのち、私、津田秋太郎は、この視察に関する全ての記憶を消された。ゆえに現在の私には、本報告書の内容が事実であったとの確証はない。
だが逆説的ではあるものの、記憶を消すという処置を受けた以上、私は何らかの国家機密に触れたと考えるのが最も論理的である。
それでも、なお疑問は残る。
なぜ、本報告書の基となったメモが検閲も没収も受けず、私の胸ポケットに残されていたのか。
その理由を示すものがあるとすれば、メモの末尾に残された、私のものではない筆跡だけである。
『東洋にも、私達の仲間が増えますように。ジュリアス』




