あれから二週間後《斉藤Side》
少し時間が飛びます
入学式から二週間近くたった。
あれから特に事件だとかは起こってない。学園の勉強は今までと比べ物にならないレベルで上がったがなんとかついてこれる。強いて変わったことと言えば・・・。
「おっはよー!舞ちゃん!美琴ちゃん!」
「二人とも、おはよう!」
「魅歌ちゃん、思季ちゃん、おはよう」
「おはようございます、二人とも」
私と美琴ちゃんに新しい友達ができました。
あれから、私はヒロインの姫園魅歌ちゃんと友人キャラの館川思季ちゃんと仲良くなった。大したことはしていない。魅歌ちゃんは初日、学校案内を受けてないので私が彼女に案内してあげると申し出たら彼女が了承してくれた。それ以来なにかと話すようになった。思季ちゃんは魅歌ちゃんと仲良くしてたら一緒に仲良くなった。
この事を美琴ちゃんに話すと、なぜか呆れたような顔をされた。
『・・・あなたって、昔から変わらないわね』
・・・おそらく美琴ちゃんは私のやってることをお節介を焼いているだけだと思ってる。それは一部しか合ってない。けど、実は美琴ちゃんには・・・いや、誰にも言えないが彼女に優しくする理由はそれだけではない。
ひとつは、私は彼女が転生者かどうかということを探ってるのだ。
いつかも言ったかもしれないが彼女が私のように前世記憶を持ち、私たちに危害を加えないかはとても重要なことだ。今のところ、普通の女子高生・・・より天然なところがあるが転生者という感じがしない。
だが、途中で記憶が戻り、ヒドインになるかもしれない。その場合でも以前の彼女を知ってるか知らないかで対処に差が出る。
もうひとつの理由、それは個人的な彼女への詫びだ。
これは誰にもわからないだろうが、彼女が入学式どころか教室に集まり自己紹介が終わっても来なかった理由に、私が昔、しでかしたことに起因する。
ゲームでは入学式の前に彼女の飼い猫が脱走し、学校の中を走り回った結果、攻略対象の一人と出会う。その攻略対象が美琴ちゃんの婚約者・『早観仙景』。私と彼は昔いろいろとあり、今は美琴ちゃんとは婚約関係が結んでない。今は違う学校に通い、海外に留学していると美琴ちゃんが教えてくれた。
『とはいえ、世間的には婚約者と勘違いされてるけどね。とりあえず今は婚約者候補・・・ていう感じよ』
とのこと。この調子でいくとゲーム通りに彼と婚約を結ぶだろう。まぁ、今度は大丈夫だろう。
・・・話を戻そう。とにかく、昔の私の行動で彼女が大幅に遅刻したことの遠因になったかもしれない。そう思うと彼女を放っておくのは気が引けたのだ。
今では私と美琴ちゃんとの四人で行動することが多くなった。もう既にLINEもメールアドレスも交換済みだ。
そして今は昼休み。昼食を食べた後、魅歌ちゃんを除いた三人でゆったりしゃべってる。話題はどの部活に入るかだ。
「ところでさぁ、二人はどこの部に入るの?」
「ん?一応、空手部だけど」
「華道部にしようかと・・・、どうかしまして?」
「いや・・・、せっかく仲良くなったんだからみんな一緒の部活とかやってみたいなぁって」
「・・・無理じゃない?私と美琴ちゃんは文系と運動系で違うし。魅歌ちゃんは確か、幼馴染みくんの入った部活にマネージャーとして入るっていってたし。」
「そーだけどさぁ・・・」
この学校は一応兼部は認められている。
だがその場合、運動系にひとつ、文系をひとつだけらしい。
それと違うクラスの魅歌ちゃんの幼馴染み、美作優詞くんも乙女ゲーの攻略キャラの一人だ。
確か両親が友人同士で家も隣で、お互い異性では一番仲がいいのだが、彼の方はヒロインのことが好きでもうそろそろ一歩を踏み出したいと思ってる。
この学園にもヒロインと一緒に通うために入学しちゃうぐらいに好きなのだ。そんなテンプレな幼馴染みキャラだ。
記憶があっていれば部活を幼馴染みくんのサッカー部のマネージャーになると好感度が一気に上がりやすくなるはず。
・・・ていうことは、ヒロインちゃんは幼馴染みくん狙い?いや、彼女が転生者じゃないならただの偶然なんだけど。だけど・・・。
「・・・魅歌ちゃんって幼馴染みくんのことが好きなのかな」
「お!やっぱり気になる!?ていうかぜったい好きだよね!いや~怪しいと思ってたんだよ。今どきサッカー部のマネージャー?って。でも本人は嬉しそうだったし、なんかやる気だったしさ~」
思季ちゃんが言ってることもそうだが、私が気になったことはそれだけじゃない。
ヒロインちゃんは驚くほど他の攻略対象に対してなにもしてないのだ。
ここ一ヶ月、仲良くなるため一緒にいたせいか行く先々で他の攻略対象とのイベントもヒロインちゃんに起こった。そして起こった後、普通に行動して無難に終わらしている。
私の知ってる限り、幼馴染みと隠しキャラの二人、海外留学に行った美琴ちゃんの元婚約者以外の六人は既にもう会ってるのだ。でも幼馴染みくん以外なにもアクションをしてない。
・・・まあいいや。それってこれからは大した問題は起こらないってことでしょ。幼馴染みくんならライバルキャラはいないし一応事件はあるけど、・・・まぁなんとかなるでしょ。そもそもまだなにも起こってないし。
「しかし、あの二人なら『桜の下の伝説』とか必要ないかもね~」
「・・・なにそれ?」
「あれ、知らない?いや、あたしさぁ学校の伝説とか噂話とか好きなんだけどぉ・・・」
それはゲームで知ってる。知らないのはその桜のなんとかだよ。
「それでうちの学校の怪談について調べてたりとかしてたら、『桜の下の伝説』ことを知ったんだけどね。なんでも、うちの旧校舎の裏庭にある桜の下で結ばれると、それが永遠になるって!」
「・・・ああ。やっぱりそういうのって、どこの学校でもあるのね」
「なんかテンプレだよね~」
「なにさ、その反応!あんたたちそれでもうら若き乙女か!」
さすがは乙女ゲーの世界。私の知らない恋愛がらみの話が存在する。前世の記憶を探ってもそれっぽいのはあるけど今の話ははじめて聞いた。
「・・・昼休みにすまない。姫園はいるか?」
「あ!遠藤先生、こんにちわ!魅歌・・・えっと、姫園さんはまだ、帰ってないですけど・・・どうかしました?」
いつのまにか、私たちの近くに遠藤先生がいた。手には何かの書類を持ってる。
「ああ、姫園の入部の件でちょっとな・・・。いないなら、姫園に「先生先生!」・・・なんだ、館川」
「先生は、裏庭の桜の伝説って知ってますか?」
「・・・知ってる。桜の下に女の死体が埋まってるていうやつだろ」
「違います、先生!そんなどっかで聞いた怖い話じゃないですよ!桜の下で結ばれると永遠になれるっていうほうで「だからそれだよ」・・・へ?」
「お前の言ってる伝説と、私の話は元々は同じ話だ」
・・・どういうこと?先生の怪談と思季ちゃんの話が元々は同じ?
私たちは思わぬ話に頭の中が?マークで一杯になっていく。
「・・・え?先生それはどういう「ただいま~、みんな」
「ごめん、ちょっと混んでて・・・、あれ?遠藤先生?どうかしたんですか?」
「・・・ちょうどいい、姫園。お前が出したマネージャーとしての入部の件だが・・・」
「え!な、なにか、ダメでしたか?」
「ダメ、と言うかなんというか・・・」
魅歌ちゃんが帰ってきたことで怪談について中断される。
しかしなんだろう・・・、先生がなんだか言いにくそういしている。
「・・・うちの学校、今年度からマネージャーの募集を止めたんだ」
「「・・・え?」」
・・・あのあと、遠藤先生に話をうかがうと去年、どこの部かは教えてくれなかったが女子マネージャーに対するセクハラが発覚。その煽りを受けて今はどこの部もマネージャの募集を中止することとなったらしい。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・まぁ、仕方ないんじゃない?募集してないんだし。それに、マネージャーだけが青春ってわけじゃないし」
「そうよ、それに幼馴染みくんになら同じ学校なんだからいくらでも会えるでしょう」
「・・・別にユウくんは関係ないし」
「とてもそうは思えないけど。・・・ほら、舞もなにか言ってやりなさいよ」
「・・・え!?ああうん、その」
「・・・何であなたもショックを受けてるのよ」
ショックも受けるよ。だってこんな展開、ゲームになかったのだから。
・・・ほんとになんなの、この展開?ヒロインが好きな子と近づくためにこんな試練があるなんて。ゲーム通りにことが進めば、きっとすぐにでも二人だけの世界になってあっという間にエンディング一直線だったのに。
思えば、違和感は他にもあった。ゲーム通りなら同じクラスの幼馴染みが現実では隣のクラスになり、今度はまるで二人の仲を引き裂くように一緒の部活には入れないようになった。まるでゲームに出てくる悪役のいやがらせのように・・・。
いや待て私。悪役と言ったが前世のゲームにはライバルはいても悪役はいなかった。なら別に悪役とかは関係ないじゃない。・・・本当にそう?ただの偶然にしてはタイミングが悪すぎる気がする。でもこんなことをして喜ぶ人がいるのかしら。そもそも去年の事件が原因なんだから、こんな出来事を起こせるとは思えない・・・。
・・・頭が痛くなってきた。いくら考えても答えが出そうにないし、これ以上は無駄な気がしてきた。それより今は魅歌ちゃんのこれからだ。
「・・・・・・・・・・・・」
完璧に落ち込んでる。余程、幼馴染みくんと同じ部活に入れないのがショックだったようだ。
「・・・まぁ、そんな落ち込まないでよ。ほら、見た感じ美作は魅歌一筋って感じなんだし」
「そうよ。今さら他の女が付け入る隙があるとは思えないし、大丈夫でしょ」
「そうそう。何だったら、裏庭の桜に美作連れていく?そこで告白すれば永遠に結ばれるらしいよ」
「だいぶ話を削ったね。・・・でも二人ならそんなことしなくたって「・・・裏庭の桜?」
あれ、魅歌ちゃんが食いついた。
「あれ、そういえば魅歌には話してなかったね。なんか、うちに学校にある旧校舎の裏庭に桜の木があるんだけど、そこで結ばれるとそれは永遠になるって」
「・・・そういえば、遠藤先生が気になることを言ってたわね」
「ああ、あれ!そういえばどういうことなんだろうね、あの話とこの話が同じ話だなんて」
「え!それどんな話!?」
「いや~、それがよくわかんなくってさ~・・・。あ!だったら放課後、遠藤先生に聞いてみようよ!あたしたち付き合うよ!?」
・・・その後、私と美琴ちゃん達は放課後、遠藤先生にところに行くことでこの話は終わった。
後に私はこの事を後悔することとなる。このときに何とかしておけばあんなことにはならなかったのではないのかと・・・。
これが、私が最初に関わることとなる事件の始まりだった。