待機時間の後、歓迎式まで
鈴木視点です
俺、鈴木圭介は転生者・・・なのだろうか?
こっちに訊くなと言われそうだが、こっちもわからないんだ。相談ぐらいさせてほしい。
前世の記憶っぽいのが出たのは高校の入学式の途中。そこで前世?が嵌まってたゲームの攻略キャラが出てきたのだ。
そう、困ったことに前世の記憶らしきものが今のところギャルゲーしか出てこないのだ。
正直そんなの思い出して俺にどうしろと言うんだ。前世がいったい何をしてた人なのかもわからない。
・・・まあいい。記憶にある通りなら同じクラスになったギャルゲーの主人公・・・『木下修吾』くんとは同じクラスだし、俺が入学式に頭痛に見舞われたのを心配してくれてそこそこ仲良くなれた。
木下くんを見てれば面白いことが起こるかもしれないし、俺はそれを眺めながら普通に学校生活を送ろう。
時間は放課後で、場所は男子の学生寮。俺は学生の間借りることとなった部屋のなかにいた。
部屋は二人部屋で、一部屋八畳ほどのサイズで結構広々している。
俺が今日から通うこととなる王盛学園は寮のある学校で、ここの生徒は全員ここで三年間を共にする。
正直この学園の寮、めちゃくちゃデカイ。うちの学園は生徒は全員で千人以上は居て、そいつら全員寮生活を送れるほどの部屋数があり、途中で転校生とかが来ても大丈夫なように何部屋か空いてるらしい。マジデカイ。
寮自体は男女で違う建物らしいから、これぐらいのサイズがもうひとつあるということだ。どこにこんなことができる金があるんだ?
土地はまぁ、理解できる。学校も寮も田舎の山の中なのである程度安くできたのだろう。だが、これほどの建物はどう安く建ててもかなりいい値段がすると思うぞ。
ギャルゲーの設定に忠実なのはいいが、この学園、無茶してないか?・・・まぁいい、俺には関係ないことだ。
「・・・そっちも終わったか」
「ああ。早観くんも終わったんだ」
今さらかもしれないが二人部屋な以上俺以外にも人はいる。
彼は早観天恵。俺と同じクラスで、今日からルームメイトとなる男子だ。
早観くんは一言で言えばクールなイケメンだ。
切れ長の目、黒く艶やかな黒髪、スッときれいに伸びた背筋。ここまでイケメンだと嫉妬の心もわかないレベルのイケメンだ。
すこし言葉足らずなところもあるが、それがクールに見える・・・けど。
(・・・ほんとはただの口下手なんだろうな、これ)
なんかそういう感じがする。なんだろ、これも前世記憶が思い出した結果なのだろうか。なんとなく、人の目の動きや挙動が気になる。今までこんなことなかった。・・・ほんとに俺の前世は何をやってたんだ。
「(・・・だからって、どうすりゃいいかなんてわからないし)意外と簡単に片付け終わったな」
「・・・鞄を二つしか持ち込めないからな」
この学生寮に入寮する際の規則として、学校指定の鞄とあともうひとつだけしか持ち込めないというものがある。ただし、入寮したあと物を買うのはありらしい。ゲームではそうだった。
「しかしこの寮、てか学校、大きいな。土地とかはまぁ、もしかしたら安いのかもしれないけど、広さ半端ないぞ。明日学校で迷子にならないか心配だよ」
「・・・ここは、確か元々は学園長の土地だったらしい」
「あ、そうなの?じゃあタダか。・・・そういえば、最後に遅れてきた姫園さん?彼女、学校で迷子になってたらしいぞ。なんでも、飼ってた猫が鞄のなかに入ってて教室で開けると同時に脱走したそうだ。で、おいかけっこしてたら・・・」
「・・・迷子になったと」
「そういうこと。・・・ま、普通に考えて鞄に猫が入ってるなんて思わないよね」
「・・・そういえば、あの猫どうなるんだ?」
「確か学校の先生が預かるって聞いたぞ。一応この学生寮、ペット禁止だし。・・・てか、ペットOKの学生寮とか聞いたことねーぞ」
「ふっ、・・・確かにな」
あ、ちょっと笑った?人見知りはするけどコミュ症じゃないようだな。こちらから話題を振るとちゃんと返してくれるし相づちも打ってくれた。話すのが好きとか嫌い以前に話すことそのものが少なくって馴れてないパターンかな。・・・だから、何で俺はそんなことがわかるんだよ。
『・・・あー、あー、一年生諸君。これから、君たちの歓迎会があるので、私服に着替えて一階食堂に来なさい』
「へー、歓迎会なんてあるんだ」
『・・・来なかったやつはどうなるか・・・、わかってるな?』
「・・・え!こわ!なにされんの!?」
俺たちは慌てて着替えて部屋をあとにした。・・・さて、ゲーム通りならここでイベントが起こるはずだが。
食堂は寮のなかで一番大きい部屋だ。
学校の半数の生徒・・・五百人前後がほぼ同時に使うため、どうしても大きくなったのだろう。たぶん普通の体育館並みに広い。食事はビュッフェスタイルで、各自自分の好きな料理を好きなだけ食べる感じだ。
食堂に向かう廊下では様々な男子生徒がいるが、俺が思い出したのはギャルゲーなので知ってるやつは少ない。主人公の木下くんとその友人キャラの小手川勇気、あと将来風紀委員長になる須藤ぐらいだ。・・・ぐらいしかいないのだ。これはちょっとおかしい。
ギャルゲーといっても本当に女の子しかいない訳じゃない。脇を固めるキャラとして個性的な男キャラもいるのだ。中には、攻略のためのキーパーソンとなる男もいる。
それが今のところ主人公を除いて二人しか見ていない。
もちろん、本当に新入生全員がいるとは限らない。物語の後半辺りで出てくるやつもいる。ここにいなくて、部屋にいるのかもしれない。だが、こういうイベントに積極的なやつもいないとなるとかなり気がかりだ。
そして、その代わりというように知らないやつが多い。しかも一人一人がかなり個性的だ。遠くからでも確認できそうな個性的な髪型をしたやつ、同世代とは思えない見た目のやつ、早観くんレベルのイケメンたち。こんなやつらゲームで見たことないぞ。
・・・別にいっか。ギャルゲー通りに事を進める必要なんてないし。きっと知らないところでなにかあったんだろ。もしくはどっかで会うかもしれないし。
そんなことを考えている食堂に着く。さっき案内されたときと違い、青いビニールシートが大量に敷かれてた。・・・やっぱり起こるんだ、イベント。
さっき来たときとは違う食堂に全員驚きながら入る。全員入りきった瞬間、大きい音を上げて扉は閉まり、そして一人の上級生が食堂の端まで届きそうな大きい声で教えてくれた。
「よく集まったな、新入生諸君!これから、諸君の入学を祝い、先輩たちから伝統のパイ投げで祝わせてもらう!」
「なんですかその伝統!」「意味わかんね!」「もしかして、『センパイ』と『パイ投げ』かけてるんじゃ・・・」「言ってる場合か!」「なにこれ!こんなイベント知らねーんだけど!」
そう、これはギャルゲーのイベント、『新入生歓迎会』である。普通の題名なのにやってることはハチャメチャで一部のファンに人気だったシーンだ。どのヒロインになにも関係ない。一回だけ選択肢が出るが物語にはなんの影響もない。なのにスチルで一番時間をかけたのはこのイベントらしい。たぶん製作スタッフの完全な遊びだ。
「問答無用!総員、かかれぇい!」
「ちょ!ちょ待っぶ!」「うわっ!ほんとに始まばふぁ!」「おい!俺の眼鏡がどっか行ったんだけど!」「いって!意外とこのパイ生地、意外と固い!」「あ、これけっこーイケる」
いや~、ゲームのスチルでも見たけど阿鼻叫喚の地獄絵図、て感じだな。イケメンもブサイクもも平等にクリームまみれになっても見苦しくなってる。俺?もうすでにクリームまみれだよ。
・・・なんか、こういうイベントが起こると本当にゲームの世界なんだなぁ、て思う。だって、他の高校じゃ絶対ないだろうし。
なんて、ボーッとしていると先輩方に集中砲火を食らう。慌てて顔をガードしながら走り回る。
そのとき、とても小さい声が聞こえた。
「なんだこれ・・・。ゲームにこんなのあったけ?」
俺はその言葉を聴き、反射的に足を止めて振り向こうとして・・・パイを真っ正面から受け止めてしまった。慌てて顔をぬぐうが二発、三発と食らい・・・、結局誰が言ったのか確かめることはできなかった。
・鈴木 圭介
転生者。転生した世界を自分の知っているギャルゲーだと思ってる。
前世がなにをやってたか不明。ただ、ゲームの記憶を思い出してから微妙に何かが違う気がする。
今世は前世記憶とかなしに一番成績がいいクラスになれたり、親の方針でいろいろと習い事をさせられてたりと結構スペックが高い。
ゲームイベントにてきとーに関わって楽しい思い出が増えたらいいなと思ってる。。
ギャルゲー
《桜色に染まる道で》
・王道的なギャルゲー。主人公は最長三年間の学園生活でいろんなイベント巻き込まれ、個性的で魅力的なヒロインたちや友人たちと青春を謳歌する。
攻略対象は隠れキャラを含めて10名。全員女の子。




