第六十九話 ヴァルカン1人。
カオルが・・・・いない。
朝、カオルがグローリエルと共に魔術学院へ向かうことになり、かねてより相談していた私とエリーとエルミアの3人で訓練をするため別行動をした。
それは力を付ける為だ。
カオルは、今まで通常では考えられない程の高位の魔物と戦ってきた。
ドラゴンゴーレムや中級のドラゴン、そして・・・オルトロス。
私だってカムーン国の騎士だ。
いままでに多くの魔物と対峙してきたつもりだ。
だが、ドラゴンゴーレムやオルトロスなんて見たことも、まして戦った事なんてなかった。
伝承や伝説の生き物とさえ思っていた。
それを、半年もしない間に立て続けにカオルは退治したのだ。
ありえないなんてことはありえない。
カオルは、この先も多くの魔物と戦う運命にあるのだろう。
そこで、エリーとエルミアと相談して私達でカオルを守ろうと誓ったのだ。
そんな矢先、カオルを魔術学院に迎えに行ってあの事故が起きた。
初めは何が起きたのかわからなかった。
カオルが手にしていた本が突然光出したかと思ったら、カオルの姿が消えていた。
カオルがいた場所には1冊の黒い本。
それだけを残していなくなってしまった。
いったい何がどうなっているのか・・・・
私にはわからない。
今は、皇帝陛下にお願いして、あの黒い本について調べて貰っている。
正直、私自身で調べたいが畑違い過ぎてどうすることもできない。
エルミアとエリーは「もしかしたら教会で調べれば何かわかるかもしれない」と言い、今朝カルアのもとへ旅立った。
私はどうしたらいい?
何も出来ないことが歯がゆい。
今出来る事と言えば、こうしてカオルが残した黒い本に寄り添う事だけ・・・
なぁ・・・カオル?
君は今どこにいるんだい?
私はここにいるよ・・・
はやく、愛らしい笑顔を見せておくれ・・・・
私は・・・・カオルがいないと・・・・ダメなんだよ・・・・・
ヴァルカンは黒い本を抱き締め、1人涙した。
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