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第六十八話 絶望

ここはどこ・・・・?


気が付くと、暗闇の中にボクは(たたず)んでいた。


聞こえる音は何も無い。


無音の空間。


ボクは、なぜこんなところにいるのだろう?


覚えているのは、師匠達が迎えに来て慌てて本を片付けていた事。


そして、突然黒い本が輝き出し『白い手』に引きずり込まれた。


あの『白い手』には見覚えがある・・・


ずっと夢だと思っていたけれど、実家に戻った時にボクを貫いた手だ。


白い髪の少女・・・・


ボクを見て笑っていた。


黒い本は白い髪の少女と関係があるのか?


だとしたら、ここはいったい・・・・


真っ暗闇を見詰めているとやがて声が聞こえた。


「うふふふ・・・・」


幼い女性の笑い声。


抑揚(よくよう)の無い無機質な声が、どこからともなく聞こえてくる。


「誰だ!」


そう叫ぶが、女性の声は尚も笑い続ける。


いったいなんなんだ!?


ボクはどうしてこんなところに?


何の思惑があってこんなことを?


あまりにもわけがわからない状況に困惑していると、幼い女性が話し掛けてきた。


「ねぇ、カオル?あなたは・・・・まだまだ青いわ」


無機質な声がそう語る。


くそ!


青いってなんのことだ!


誰なんだ!?


歯がゆい気持ちを抑え、辺りを見回すが暗闇に人影は無い。


「青いわ・・・・だからもっと赤く熟れるまで、私が見ていてあげる」


なにが見ていてあげるだ!


「おまえはだれだ!」


そう叫ぶが、答えは返って来ない。


真っ暗な空間は、じょじょにボクを心細くする。


だめだ・・・呑み込まれるな・・・・


意思を強く持たないと・・・


力強く拳を握る。


恐怖に打ち勝つように。


「うふふふ・・・・」


少女の声は、そんなボクをあざ笑うかのように高らかに笑う。


その時、ポゥっと明かりがいくつも(とも)る。


いったいなにが・・・


挫けそうな心に喝を入れて、じっとその(あか)りを見詰めていると、やがてそれは人の姿を映し出す。


「ししょ・・・う・・・・?」


いくつもの灯りは、師匠やエリーやエルミアの姿を照らし出しこちらへ近づいてくる。


助けに来てくれた・・?


みんなに近づこうと歩き出したところで、師匠と目が合う。


そこにはいつもの優しく美しい青い瞳は無く、ボクが恐れる『濁った目』がにたぁと笑って向けられていた。


「な・・・ん・・で」


あまりの恐怖に動けない。


なんで・・・なんで師匠があの目を・・・・


あの薄汚い最低な人達と同じ『濁った目』を・・・


ボクの大切な人が・・・


「なんで!!」


悲しいからか、恐怖からか、いつのまにかボクは大粒の涙を流していた。


妖しく笑い『濁った目』をした師匠やエリーやエルミアがボクに向かって近づいてくる。


1歩1歩ゆっくりと、まるで何かに操られているような不思議な足取りで。


恐怖で強張った体を動かすことが出来ず『濁った目』から逃げることができない。


そこへ「ふふふふ・・・・」と少女の笑い声が響き渡る。


なんなんだ・・・


これはいったい・・・なんなんだ!?


ここはどこ!?


なんで師匠達があの目をしているの!?


なんで!?


ねぇなんで!?


どうして・・・・・・


ボクは・・・・・


こんなにも・・・・弱いの・・・・・・


「なん・・・で・・・・」


嫌だよ・・・ボクを1人にしないでよ・・・


師匠・・・ボクの家族でしょ・・・


答えてよ!!


「師匠!エリー!エルミア!ボクだよ!カオルだよ!」


やっとの思いで叫ぶが、ボクの声を聞いても師匠達は妖しく笑い歩みを止めない。


「なんで!!」


ボクに触れられるほど近くに来ると、師匠は『濁った目』でこちらを見下ろし、その両手で力いっぱいにボクの首を締めた。


「ぐ・・が・・・・」


息が出来ない程強く締められ意識が朦朧(もうろう)とする。


いつのまにか、後ろにいたエリーやエルミアがその手を伸ばしてボクの身体を蹂躙(じゅうりん)していた。


なん・・・で・・・・・


「ししょ・・・う・・・」


締められながらも、なんとか声を漏れ出すが、師匠は妖しい笑みを崩さない。


こん・・・な・・・の・・・・みんな・・・・じゃ・・・・な・・・・い・・・


「うふふふ・・・」


薄れる意識の中、少女の笑い声が大きく木霊(こだま)した。


ご意見・ご想などいただけると嬉しいです。

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