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第五十一話 プレゼント

翌朝、ものの見事に寝坊した。


というか、3時間も寝ていない。


朝まで説得するのに大変だったのだ。


「リアとはどういう関係なのだ」とか「2人でなにをしたのか」とか「私達だってカオルとイチャイチャしたい!」とか・・・


いや、イチャイチャなんてしたことないでしょ?


家族として、抱き付いたりキスしたりはしてますけど。


イチャイチャなんてそんな・・・・恋人同士ですることなんてボクにはまだ早いですよ!


まだ12歳なんですからね!


まったく・・・・師匠の変態がみんなに移ったんじゃないだろうか。


普段無表情のエルミアすら、なんか婚儀がどうのこうの言ってくるし。


もうわけがわからないよ!


みんな大好き!


・・・・・・・・・・あれ?


ああ、寝ぼけてるのかな。


全然寝て無いし。


とりあえず、まだ寝ているみんなに書置きをして出かけよう。


元々1人でやるつもりだったしね。


気付かれちゃったらサプライズにならないし。


メイドさん達に挨拶をして、迎賓館から飛翔術を使い飛び立つ。


向かう先はオナイユの街、鍛冶ギルドにあるレギン親方の工房だ。


昨日手に入れた黒曜石の鉄板で、師匠とエルミアにプレゼントを作る為に。


馬車で半日の距離も、飛翔術を使えば1時間もかからない。


まぁ、ボクが飛翔術に慣れて速度が上がったからなんだけどね。


家の周りの山を、ビュンビュン飛び周るのが楽しくてね。


街中を飛ぶとみんなが驚いてしまうので、街の手前で地面に降りる。


外套のフードを目深(めぶか)に被り、門番の騎士に挨拶をする。


「こんにちは」


そう話しかけると「おう!こんにちは!」と明るく挨拶を返してくれた。


うん、誰だかわからないようだ。


大通りを歩き、食べ物を売っている出店で買い物をする。


ふっくらとしたパンにスープやカエルの串焼きを買い込み、レギン親方のもとへ。


工房の扉をノックし中へ入る。


「こんにちは、レギン親方はいらっしゃいますか~」


フードを取り、元気よく挨拶をすると弟子のニールが迎えてくれた。


「いらっしゃいカオルさん」


尖った猫耳がピコピコ動く。


うん、好青年ですね。


レギン親方に背中をよくバンバン叩かれていますけど。


ボクが大通りで買った料理を渡すと、嬉しそうに微笑んでくれた。


「レギン親方!カオルさんがいらっしゃいましたよ!」


工房の奥へ向けて呼びかけると、ドスンドスンと音を鳴らしてレギン親方がやってくる。


「おう、じょうちゃんいらっしゃい!」


普段と変わらぬ様子でボクを迎い入れてくれた。


炉を使わせて欲しいと伝えると「おうおう!好きに使いな!」と承諾してくれた。


頭を下げてお礼を言い、いつものように一番奥の炉へ。


部屋で着替えてエプロンをつける。


さて、どんな短剣を作ろうかな♪


アイテム箱から黒曜石の鉄板を取り出し、小分けにしようと槌を振るいそこで気づく。


あれ?なんかすっごく固くて、小分けにできないんだけど・・・・


何度か槌を打ちつけるものの、傷ひとつつかない。


う~ん・・・・小分けにしないと炉に入れられない・・・・


どうしよう?


こういう時は本職さんに聞いてみよう。


黒曜石の鉄板を持って工房の入り口へ、カウンターを机にしてレギン親方とニールが食事をしていた。


「あの、すみません」


ボクが話しかけると「おうじょうちゃん、いつもすまねぇな!いただいてるぜ」と、食事のお礼を言われた。


うん、カエルの串焼き美味しいでしょう?エルミアは食べてくれなかったけど。


おずおずと黒曜石の鉄板を見せる。


「なんでぇこりゃ・・・」


黒曜石の鉄板を見たレギン親方が、不思議そうな顔をしていた。


「小分けにしようとしたんですけど、固くてどうしようもないんです。何か方法をご存知ではないですか?」


レギン親方とニールの顔を見詰めそう聞く。


「う~ん・・・おれぁ初めてみるからなぁ・・・ニールはどうだ?」


レギン親方に聞かれニールが話す。


「ボクも知りません。というか、本当に金属なんですか?」


ニールがそう言い、レギン親方が指で弾くと「キーン」と金属の音を奏でた。


「金属みてぇだな・・・・しっかし、じょうちゃんこんな物どこで手に入れたんだ?」


不思議そうな顔をしたレギン親方。


ボクは「エルヴィント帝国の王宮でいただいたんです」と答える。


レギン親方とニールはお互いの顔を見やり、驚いていた。


「じょうちゃん・・・やっぱすげぇな・・・・・」


「ええ・・・」


そんな事を言われる。


いや、凄いとかどうでもいいんで小分けにする方法を・・・


3人で悩んでいると「あ!シルさんに聞いたらいいかがですか?」とニールが発案する。


「そうだな!あいつは帝都で鍛冶師してたんだ、きっと知ってるかもしれねぇぞ?」


とレギン親方も賛同した。


そうか、シルさん!ダマスカス鋼の練鍛師(れんたんし)をしてたんだ。


何か知ってるかもしれない。


2人にお礼を言い、外套を羽織ってシルさんの金物屋へ向かう。


フードを被り大通りを歩くと、ボクが開いたクレープの屋台は未だに大人気で長い列を作っていた。


う~ん・・・みなさん食べ過ぎないようにしてくださいね?


太りますよ?


長蛇の列を抜けて、隣の金物屋さんに入る。


「こんにちは!」


元気に声をかけると、奥の番台でシルさんが暇そうに頬杖をついていた。


シルさんと目が合うと「ん」とだけ言う。


ああ、フード被ってるからボクだってわからないのか。


フードを取ると「おお、カオルか!わりぃな、気付かなかった」と明るい表情をしてくれた。


最初は職人(しょくにん)気質(かたぎ)の気難しい人かと思っていたけど、あの一件以来兄のレギン親方と変わらず話しやすい人だった。


「今日はお願いがありまして」と話し始める。


シルさんは番台から降り、ボクのもとへやってきた。


「お願いってなんだ?」


アイテム箱から黒曜石の鉄板を取り出し、シルさんに見せる。


「実はこれを加工したいのですが、固くてどうしようもないのです。どうにかできませんか?」


黒曜石の鉄板をしぶしぶと見詰めるシルさん。


様々な角度から見詰め「ふむ・・・こりゃぁ見たことねぇが・・・・」そう言い指で弾く。


「キーン」という金属音を奏で黒曜石の鉄板が震える。


やがてボクを見やり語り出す。


「こいつは普通の金属じゃねぇ。おそらく、ダマスカス鋼のように魔力を込められたもんだ。」


と言う。


ほほー・・・


じゃぁ、ダマスカス鋼も魔力を込めて作られるのですね。


やり方がわからないと、どうしようもないけど。


「だが・・・カオルならできるんじゃねぇか?聞いてるぜ?兄貴が見たこともねぇ防具を作ってたってな」


と、意味ありげにボクを見詰める。


う~ん・・・あのミスリルの防具のことかな?


あれ、ボクが作ったわけじゃないんだよね。


でも、そうか・・・精霊さんにお願いすれば作れるかもしれないのか。


なんとなくヒントになったかな。


「ありがとうございます、シルさん。もしかしたら出来るかもしれません」


シルさんにお礼を言い工房に戻る。


外套をしまい、炉の前に座りると黒曜石の鉄板をジッと見詰める。


ふむぅ・・・・


あの時どうしてたんだっけ?


ああ、そうだ。


炉に火を入れて、ボーっと見詰めていたんだっけ・・・


どれどれ・・・・


炉に火を入れて見詰める。


しばらく火を見詰めていると、淡い光の塊が集まってくる。


お!


精霊さんだ!


その中にいつもの風の精霊を見つける。


手を差し伸べると、そこに乗ってくれた。


「いらっしゃい。お願いがあるんだけどいい?」


ボクが話しかけると、コクンとうなづいてくれた。


嬉しくなり精霊に微笑みかける。


黒曜石の鉄板を見せ「これを加工したいんだ。だけどやり方がわからなくて・・・・」そう言うと精霊はニコッと笑顔になって、クルクル回り出した。


左腕にある腕輪の蒼い魔宝石が光ると、呼び出してもいないのにアイテム箱が現れる。


その中からファルシオンが飛び出し、ボクの手の中へ。


ファルシオンは風を纏う。


すごい・・・勝手に動いてる・・・・


黒曜石の鉄板へ音も無くファルシオンが食い込むと、そのまま切断された。


ファルシオンがアイテム箱へ消え、アイテム箱も消える。


5つに小分けされた黒曜石の鉄板。


その1つを、熱せられた炉の中へ投入する。


真っ赤になるまで熱せられた塊を、やっとこで掴んで引きずり出す。


槌を塊に振り上げると、槌全体を風が包み込む。


構わずそのまま打ちつけると、火花が飛ぶ。


精霊達は尚もクルクル回る。


火花が飛び散る中、舞うように・・・・


楽しそうに・・・・


笑い合い・・・・


手を取り合い・・・・


クルクルと・・・・


ボクも嬉しくなり笑顔になる。


精霊達と・・・


楽しそうに笑いながら・・・


舞うように・・・・美しく・・・・










気がついた時、ボクは工房の床でレジーナに抱き留められていた。


あれ?どうしたんだっけ・・・


というか、レジーナひさしぶり・・・・


焦点が定まらない・・・・


「カオル?」


レジーナがそう話しかける。


焦点が定まらない中「レジーナ?」と答える。


なんだろう・・・頭がクラクラする。


魔法を使いすぎた時みたいだ。


心配そうに見詰めるレジーナ。


「カオル起きた?大丈夫?」


レジーナにそう言われ、じょじょに意識がはっきりとしてきた。


「うん、ごめん・・・ボク・・・・・倒れてた?」


ボクの言葉を聞いて、安心した表情を見せるレジーナ。


そこへレギン親方の罵声が飛ぶ。


「じょうちゃん!前にあれだけ言っただろ!おめぇさんは物作りに命賭けすぎなんだよ!!もう金輪際1人で作業させねぇからな!心配するこっちの身にもなれってんだばっきゃろぉ!」


ものすごく怒られた。


けど、なんでだろう・・・凄く嬉しい。


涙が頬を伝い流れる。


「レギン親方・・・すみませんでした。それと・・・・ありがとうございます」


心配してくれたことに感謝を伝える。


レギン親方は照れてしまったのか「い、いいんだよ!これからぁ気をつけりゃそれで・・・」とモジモジしていた。


毛むくじゃらのおじさんがモジモジとか・・・・


なんかちょっとかわいい。


レジーナに目を向ける。


「それで、なんでレジーナが?」


ボクがそう言うと「おらぁ、じょうちゃんの知り合いしらねぇからよ。泊まってる宿屋へニールを使いに出したらこの子が来たんだよ」と、説明してくれた。


なるほど・・・


「ごめんね、レジーナ。本当にありがとう」


感謝を伝える。


「いいのよ!仕事サボル言い訳になるし♪最近忙しくて休み無いのよ・・・・なんか、食堂の2号店を帝都に出すらしくてさ。ホントやんなっちゃう」


()くし立てる様に話すレジーナ。


なるほど、さすがやり手の宿屋主人だ。


通りで金貨13枚もくれるわけだね・・・・


多過ぎると思ってたんだ。


「ところでよ、じょうちゃん。」


レギン親方が間に入ってくる。


「なんでしょうか?」


ボクはレギン親方に目を向けると「またとんでもねぇもん作り出したな」と、5本の短剣を見せてくれた。


テーブルの上には黒い5本の短剣がある。


ああ、出来たんだ・・・・


起き上がり1本の短剣を手に取る。


黒い刀身はガラスのように透けて見え、部屋の明かりを受けて鋭く輝いていた。


そっと胸に抱いて精霊さんに感謝する。


ありがとう・・・・いつも・・・・本当にありがとう。


そう呟くと「じょうちゃんが店構えたら、おらぁ廃業だな!がははは!」と、レギン親方が大笑いした。


レジーナとボクもそれにつられて笑う。


床に変形した槌が転がっていた。


おそらく魔法に耐え切れなかったのだろう。


拾い上げてレギン親方に謝罪する。


「レギン親方すみません・・・槌を壊してしまって」


ボクがそう言うと「お・・・おおう・・すげぇな・・・こりゃ・・・・いや、槌は消耗品だしよ。そりゃあいいんだが、やっぱじょうちゃんはすげぇや!がはは」と答えてくれた。


そこへ、遠くからボクの名を呼ぶ声が聞こえる。


「カオルちゃ~~ん!」


ん?


この声は・・・・


5本の短剣をしまい声のした方に目を向けると、工房の扉からカルアが入ってきた。


後ろには肩を上下に揺すり、息を切らせたニールがいる。


「カオルちゃん!」


ボクに飛びつきギュッと抱き締めるカルア。


うぅ・・・苦しいです・・・・


胸おっきいんだから、飛びついたら息ができないでしょ!?


というか、どうしてここに!?


ひとしきり抱きついたカルアが離れる。


「私が呼んだのよ。」


とレジーナ。


どういうこと?


ボクが首をかしげていると「宿屋に行ってレジーナさんを呼んだ後、カルアさんを連れてくるように言われたんですよ。ホント人使い荒いんだから・・・」と、疲れた顔でニールが話す。


ああ、そういうことですか。


「ニールさん、本当にありがとうございます」


頭を下げてお礼を言うと「いいんですよ。いつもごはん貰ってますし」と、にこやかに笑ってくれた。


うん、みんなとても良い人だ。


レギン親方に再度お礼を言って、工房を片付ける。


工房を出ると、辺りはすっかり暗くなっていた。


はぁ・・・今度からは気をつけなきゃ・・・・


そんなことを考えていると「カオル、それじゃ私戻るわね。」とレジーナ。


レジーナを見詰め「ありがとう」とお礼を言う。


「いいのよ!あ、それと今日は宿屋いっぱいだからカルアの所に泊めてもらってね」


と、それだけ言うと尻尾を揺らして帰って行った。


いや、飛んで戻れば帝都なんてすぐそこですよ・・・?


ボクがそう言おうとしたら「カオルちゃん?おねぇちゃんを1人にする気?」と、ボクの心を読んだのかカルアがそう言ってくる。


えっと・・・・書置きしてきたけど、ちょっとオナイユに行って来るとしか書いて無いし・・・・


どうしよう?


迷っていると、手をグイグイひかれて大通りへ。


食べ物を買い込み、そのままカルアの家へ連れ込まれてしまった。


夕食を食べて紅茶を飲む。


はぁ・・・・結局カルアの家に来ちゃったけど・・・・まぁいいか。


それにしても、こうやってのんびりできるのはいいなぁ・・・


暖炉前でソファに座り温まる。


なんだか眠ってしまいそうだ。


そこへ「それで、カオルちゃん。帰ってきたのに、おねぇちゃんに挨拶もせずあそこで何をしていたの?」ちょっと怒った顔をしたカルアが話しかけてきた。


えーっと・・・


まったりタイムが・・・・


はぁ・・・


「ちょっと武器を作りに・・・」


と言うと「ふぅ~ん・・・おねぇちゃんより武器ねぇ~・・・」頬を膨らませるカルア。


めんどくさいなぁと思いつつも、そんな仕草がカワイイな・・・と思った。


アイテム箱から5本の短剣を取り出す。


やっぱりこれって・・・・精霊さんの仕業かな・・・・・


それぞれ形の違う短剣。


おそらく、ボクがみんなにあげることを知っていたのだろう。


そのうちの1本を残し、アイテム箱にしまう。


カルアに目を向け「カルアさん。あまり怒ってると、コレ、あげませんよ?」と意地悪そうに言う。


「え!?なになに!?」と喜んでボクの傍へ来る。


ふふふ・・・ボクの策にはまりましたね?


カルアの手をとり、掌にそっと短剣を置く。


嬉しそうに受け取り、革の(シース)から抜き出すと・・・・


ガラスのように黒く、尖った刀身が現れる。


「キレイね・・・・・カオルちゃんこれは?」


うっとりと刀身を見詰めたカルアが聞いてくる。


「それは、『ミセリコルデ』と言います。刃はついていませんよ。治癒術師のカルアさんは、あまりおおっぴらに刃物持てないでしょ?本当はそれもどうかと思うんですけどね」


微笑みながらそう説明する。


『ミセリコルデ』・・・とどめの短剣とか慈悲の短剣って言われる物。


戦場で、治療も出来ず死に行く者を安らかに眠らせるための道具・・・・


そんな物の出番が無いことを願うけどね・・・


ボクが悲しい顔をしたのを見たのか、カルアがボクの頬にそっと手を当ててくる。


暖かいその手を目を瞑り感じる。


すごく・・・・落ち着く。


疲れていた為か、前日ほとんど寝ていたなかった為か、気がつけばそのまま眠ってしまった。








朝、目が覚めるとベットで眠っていた。


カルアが運んでくれたのだろう。


カルアは隣でぐっすり眠っている。


頭を撫で、ベットから抜け出す。


寒い・・・・


着けていた装備は外され、チェストの上に置いてあった。


今の自分は上下麻の下着姿。


それは寒いはずだ。


アイテム箱へ装備をしまい、服を取り出す。


・・・・・あれ?


そうか麻のチュニック洗わないと・・・・・


はぁ・・・仕方ない、メイド服着ますか。


メイド服に袖を通し、靴を履いてホワイトブリムを取り出す。


髪は・・・うん、ポニーテールにしてみよう。


櫛を取り出し、頭の後ろで結わいて姿見で確認する。


うん、どこからどうみても・・・めい・・・ど・・・・だ・・・・orz


もういい・・・・もういいんだよ・・・・・


もう開き直ろう・・・・


ボクは女みたいな男だと!!


・・・・・ムリデス・・・・ごめんなさい・・・・


ガックリうな垂れてキッチンへと向かい朝食を作る。


昨夜の残りがあるので、それを使い簡単に調理した。


コーンスープにハムエッグ、丸い白パンに紅茶を用意して準備完了。


カルアを起こしに行く。


寝室の扉をノックして中に入ると、カルアは案の定まだ寝ていた。


本当にボクの周りにいる人は、寝つきがいいのに寝起きは遅いよね?


ボクが甘やかしてるから?


まぁいいか。


別に苦じゃないし。


ベットに近づきカルアに声をかける。


「カルアさん、朝ですよ~起きてください」


肩をゆさゆさ揺らす。


「うぅん・・・」


カルアが身悶えると、なんというかものすごい破壊力が!


なんですかこの色気は!?


というか、動くたびに胸がバインバインと!?


あぶない!


戦争になってしまう!


衛生兵!衛生兵はどこだー!!


・・・・はっ!?


また妄想を・・・・軍事物なのは、レジーナ隊長に会ったから?まぁいいか。


「ゴホン!」


とりあえず起こしましょう。


「ねぇカルアさん。起きないと仕事に遅れちゃいますよ~」


両手でカルアの頬を挟みこむ。


少し冷たい手だから、起きるだろう。


しかし、予想に反して全然起きないカルア。


う~ん・・・・


靴を脱いでベットの上に乗り、カルアに跨る。


一度やってみたかったんだよね♪


「ご主人様!おーきーてー!」


カルアの上でぴょんぴょん飛び跳ねるとやっと起きてくれた。


「カオルちゃん・・・・おねぇちゃん痛い・・・・」


あああ、やりすぎた!?


慌ててうづくまるカルアに近づくと「ウソ~♪」と言って抱き締められる。


はぁ・・・心配して損した・・・・


でも暖かくて、すごい落ち着く。


抱き締められたまま目を瞑り、のんびりと温もりを感じる。


不意にぬくもりが消え、カルアにキスをされる。


ボクは慌てて目を見開く。


「んー!?」


目の前にはキレイなカルアの顔があった。


というかなんで!?


なにしてるの!?


しばらくすると「充電かんりょ~♪」と言い、ボクから離れて元気よく伸びをした。


そそくさとベットから降り、部屋を出て行くカルア。


「カオルちゃん、朝ごはん食べましょ♪」


元気にそう言い残し、ボクは部屋で呆れていた。


はぁ・・・まぁいいか・・・・家族だし。


ベットから降り靴を履いて洗面所へ向かう。


顔を洗うと少し気分がさっぱりした。


2人で朝食を取り、カルアを礼拝堂に送る。


「それじゃぁ、おねぇちゃんは今日もお仕事がんばってくるからね♪」


元気いっぱいに話すカルア。


「はい。ボクも帝都に戻りますね」


そう言うと、ギュっと抱き締められる。


「また来てくれないと、おねぇちゃん寂しくて泣いちゃうからね?」


耳元でそう囁かれ、顔を赤くしてしまった。


「またね♪」


そっと身体を離したカルアがそう言い、礼拝堂に入って行った。


腰に、ボクが渡した『ミセリコルデ』を(たずさ)えて。


街の外へ行き、飛翔術を発動させる。


空を飛びながら、カルアの笑顔を思い浮かべた。


家族って・・・やっぱり嬉しいな・・・・なんて思った。


ご意見・ご想などいただけると嬉しいです。

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