第四十九話 グローリエル
午後になり、リアに案内をお願いして城の中を見せてもらった。
師匠達は、相変わらずアーシェラ様とあの部屋に缶詰にされていたけど。
大丈夫だろうか・・・・
帰ってきたら膝枕でもしてあげよう。
ボクにとってはご褒美だけど。
城内はとても広く、メイド達が掃除をしていたり、遠くの訓練場では近衛騎士団が訓練をしている声が聞こえていた。
それにしても、本当に広いなココ・・・
リアの案内で城内を見て周る。
遊技場・客室・食堂・礼拝堂・庭園・謁見を行った大広間
どこもとても綺麗で、壁には肖像画が掛かっていたり豪華な家具が置かれていた。
リアと大広間で話す。
「すごく広い部屋だよね。」
ボクがそう言うと「はい。今はこの広い部屋に2人きりです」と意味あり気に答える。
いや、そういうムード的な事を言ってるわけではなくてね?
なんかこの子・・・・エルミアを積極的にした感じがする・・・・
そのうち婚約が!とか言い出すのだろうか?
うぅ・・・ボクまだ子供なのに・・・・・
そんな事を考えながら大広間を歩く。
いつの間にか目の前には玉座が。
考え事しながら歩いていたら、ここまで来てしまったのだろう。
玉座か・・・・・
きっと、アーシェラは沢山の想いを抱えて皇帝になったんだろう。
民の幸せ。
家臣の幸せ。
そして・・・家族の幸せ。
リアを見詰めていると「カオル様。座ってみますか?」と聞いてきた。
いやいや、ボクなんかが座っていい椅子じゃないでしょ。
苦笑いを浮かべ「うぅん。この椅子はアーシェラ様の物だから。それに、ボクには重すぎるよ」と伝えた。
リアはニコッと笑顔になり「そうですか」と少し残念そうに話した。
だいたいこの国は任命制でしょ?
そういえば、アーシェラの後はリアが継ぐわけじゃないんだよね?
聞いてみよう。
「ねぇリア。リアは皇帝を継ぐわけじゃ無いんでしょ?」
ボクが聞くと「はい。私は継げません。次代は狐耳族を抜いた、4種族から選ばれるでしょう」と教えてくれた。
ふむふむ。
同じ種族で2期連続では皇帝になれないのか。
じゃぁリアはどうするんだろう?
「リアは・・・・」
そこで言えなくなった。
考えてみたら、自分の母親が亡くなった後の話しをするなんて失礼すぎる。
う~ん。
ボクは本当に配慮が足らないな・・・・
気をつけないと。
ボクが途中で黙ったからか、リアが不思議そうな顔をして見詰めていた。
ボクは優しく微笑んで、リアの頭を撫でる。
って、またついクセで!?
「ご、ごめん!」
慌てて手を離す。
リアはビックリした後、少し悲しそうな顔をした。
ああ、本当にごめんよ。
玉座に背を向け、大広間を出ようと歩き出す。
すると、今まさに見ていた玉座から話しかけられる。
「おやおや、剣聖の弟子が来たと聞いたから楽しみにしてたっていうのに、なんだいガキじゃないか」
激しく失礼な言葉が聞こえ振り返る。
そこには、玉座で足組みをし片肘ついた姿の女性がいた。
金色の長い髪に、赤い目。
本人にまったく似合っていないケバイ化粧。
胸からおへそまで裂けたミニスカートの赤いゴスロリ服に、黒のニーソックスを穿いている。
なんだこのエルフ・・・・・というか、
「そこはアーシェラ様だけの玉座です。今すぐ降りなさい。」
睨みつけて、低い声色でそう告げる。
ボクの言葉を聞いたエルフは妖しく笑い、玉座から立ち上がった。
「なんだい、いっぱしの口を利くじゃないか。へぇ、あたいとやろうってのかい?」
赤い目が鋭くこちらを見詰め、睨み合う2人。
「あ、あの!」
ボクに声をかけるリアを背に隠し、対峙する。
ボクの後ろに隠れ、黙ってしまった。
それでいい。
こんな害悪のある目を、リアに見せるわけにはいかない。
「いいねぇ・・・顔だけが良い少女かと思ったら、そんな顔もできるんだねぇ」
相変わらず妖しい目を向けたまま、こちらを見据える。
「で、失礼なアナタはどこのだれですか」
にらみつけたままそう言うと「あたいはグローリエル。そういうおじょうちゃんは?」と聞き返してきた。
「ボクはカオルだ。」
端的にそう告げた。
グローリエル・・・・聞いた事無い名前だ。
どうでもいいか。
この赤い目・・・・鋭すぎてキライだ。
「フフフ・・・じゃぁカオル。勝負・・・するんだろうね!」
手に持つステッキのような物を地面に突き立て、威嚇してくる。
リアの母、アーシェラの玉座に勝手に座ったんだ。
粛清したって問題ないだろう。
「わかりました・・・・」
そう言い、リアを玉座の裏へ避難させる。
「カオル様・・・」
寂しそうな顔をするリア。
そっと頬に手を添えて、おでこに口付ける。
顔を真っ赤にしたリアに「ちょっと待っててね」と優しくつぶやき、グローリエルのもとへ向かう。
アゥストリの時と同じように、大広間の中央で対峙する。
「あたいが誰か知らないみたいだねぇ・・・まぁその方が楽しめるけど」
妖しい表情のグローリエルがそう言う。
なんというか、言葉の節々(ふしぶし)に威圧的なものを感じるんだけど・・・
というか・・・・ボクなんでこんなにイライラしてるんだろう。
自分が自分じゃないみたいだ。
ストレスかな・・・・
まぁそんなことはどうでもいいか。
今は目の前にいるこの無法者を倒す事に集中しよう。
「それで、勝負はどうするんですか?ボクは帯剣できませんが」
ここは城内、しかも皇帝陛下が座する謁見の場だ。
当然帯剣することが出来ない。
アイテム箱に入ってるから、いつでも取り出せるけどね。
ボクの言葉を聞いて「カオルは魔術師なんだろ?魔法勝負といこうじゃないか」と嬉しそうに答えた。
なんか・・・・アゥストリの時と同じ結果になる予感がする・・・・・
いや、アゥストリより全然強そうなんだけどね。
なんて言ったらいいんだろう・・・・小者臭というか・・・
いや、油断しちゃだめだ。
特に今回この人は、勝手に玉座に座るという大罪を犯したんだ。
なんとしてでも勝たないといけない。
対峙したボクが構えると、グローリエルがステッキを構える。
「いきます!」
そう言い、風を纏い一気に間合いを詰める。
顔を目掛けて右腕を振り上げ殴りつけると、障壁に阻まれる。
く・・・障壁を張れるのか・・・・
連続して2、3回蹴りを入れてその反動で距離をとる。
ふぅ・・・
一息つくと「おっどろいた。カオル、あんた速いねぇ」と、笑みを浮かべた。
とどいてないんだから意味は無いけどね。
やっぱり魔法の撃ち合いになるのか・・・・
ボクが再び構えると、グローリエルが魔法を放ってきた。
火球だ。
師匠が使うような『ファイアーボール』が、一直線にボクへ向かって飛んでくる。
障壁を展開し、それを防ぐと雷をイメージし発動させる。
「『イカヅチ!』」
グローリエルの上空から雷を落とすが、これも障壁に防がれる。
う~ん・・・・どうしよう?
悩んでいると「あははは!やっぱあんた楽しいわ!」とアッケラカンと笑っていた。
むぅ・・・・
遠くでダメなら・・・・近づくまで!
風を纏い一気にグローリエルに近づく。
グローリエルは炎の壁を作り、それを防ごうとする。
風を纏ったまま自分中心に丸い障壁を展開し、炎の壁へ激突する。
驚いたグローリエルは3つの火球を滞空させ、さらにボクへ向かい放つ。
炎の壁を突き抜けたボクは、そのまま最大級の雷の線をイメージ。
「『トニトルス!』」
威力を抑え拡散した雷の線は、直径1mほどの太い線となり火球もろともグローリエルを飲み込む。
どうせ障壁で阻まれるのは織り込み済みだ。
数秒の隙を作り、再び魔法をイメージ。
風を・・・・
グローリエルの下方から吹き荒れる大きな竜巻を!
「『シュトゥム!!』」
魔法が発動し、障壁ごと雷線に焼かれたグローリエルに追撃の竜巻が襲う。
だが、まだ攻撃の手は止めない。
再び風を纏い、一足飛びにグローリエルに近づく。
右腕に力を込めて、障壁に体当たりをするとやっと障壁が砕ける。
すかさず左腕を伸ばし、グローリエルの首を力いっぱい絞める。
苦悶の表情を浮かべたグローリエルが、掠れた声で「こう・・・さ・・ん」と答えたので、手を離してあげた。
魔法を使いすぎて、少しクラクラする。
というか、強すぎだよ。
アゥストリの何倍も強いし、何者ですか?
玉座の後ろから隠れて見ていたリアが駆け寄ってくる。
「カオル様!」
ボクに飛びつき、ギュッと抱き締められた。
慌てて抱き留める。
いや、疲れてるので体当たりはちょっとやめてください・・・
実は足元フラフラなんですよ?
そっと離れ、グローリエルを見やる。
グローリエルは膝をつき「ゴホッゴホッ」と、咳をしていた。
ああ、思いっきり絞めちゃったからね。
すみません。
夢中で力加減が・・・・
その時「ゴホン!」と盛大な咳払いが。
恐る恐る目を向けると、アーシェラと師匠達がこちらを見ていた。
うわぁ・・・・
そうか、魔法使ったから音で・・・・
師匠が怒ってるよ・・・どうしよう・・・・
ボクがそんな事を考えていると、いつのまにか立ち直ったグローリエルに抱き締められた。
「わっ!?」
思わず声を出してしまった。
というか、なに!?
どうなってるの!?
慌てふためくボクを置いて、グローリエルが話し出す。
「カオル!あんた強いな!あたい初めて負けちまったよ!」
なぜか嬉しそうな顔をした。
いや、そんなことはどうでもいいので離して下さい!
下着つけてないから、胸が顔に直当たりなんですよ!
やめて!ボクを社会的に抹殺しないで!
大騒ぎのグローリエルを余所に周囲の目は冷たかった・・・・・
ご意見・ご想などいただけると嬉しいです。




