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第四十八話 我侭親子

お待たせしました。

本編です。

PV数やブックマークにポイントがものすごい事に・・・

本当にありがとうございます。

これからも頑張って書かせていただきたいと思います。

次の日はやってきた。


人の気も知らないで。


波乱の幕開けだ・・・・


ボクは今日、生き延びられるのだろうか。


あのドラゴンに立ち向かった時のような絶望感が漂う・・・


朝の迎賓館の前には、ボク・師匠・エリー・エルミアそして沢山のメイド達がいた。


そこへ「カオル様ー!」と、能天気な声が聞こえてくる。


声の主はフロリア・ル・ネージュ。


ここ、エルヴィント帝国の皇帝アーシュラ・ル・ネージュのご息女だ。


走ってくるフロリアに合わせて、騎士達が警護を勤めている。


大変ですね・・・ご苦労様です。


その中にレオンハルトの姿が。


ボクを見つけると気味の悪い視線を向けてきた。


師匠を盾にしてそれを避ける。


はぁ・・・本当に変な人だ。


やがて、フロリアが息を切らせてボクの前へやってくる。


「カオル様・・・・お会いしたかったです」


そう言ってボクに抱き付くフロリア。


いや・・・昨日とキャラが違いませんか!?


慌てるボクを無視して、フロリアはギュッと力を込めて抱き締める。


師匠が「ゴホン!」と大きく咳払いをし、慌ててフロリアがボクを離す。


師匠に目を向けると、苦虫を噛み潰したような渋い顔をしていた。


はぁ・・・あとで大変だ。


「ああ、カオル様・・・・私の王子様・・・・」


フロリアはまったく周囲の視線を気にせず、恋する乙女の顔をしていた。


あの・・・ボク、王子様じゃないですよ?


本当にこの国の人は、おかしい人多いな・・・・


出会って数分で、ボクはぐったりとうなだれた。


人の気も知らないでフロリアはグイグイ話し出す。


「あ、ヴァルカン様。こちら、お母様からの手紙です。」


そう言って師匠に羊皮紙を渡す。


師匠が疲れた顔をしてそれを開けると・・・・・


驚いた顔をし、落胆とした表情を見せた。


どうしたんだろう?


こそっと羊皮紙を覗きこむ。


それは師匠とエリーとエルミアの召喚状だった。


え?


どういうこと?


師匠の顔を見詰める。


ぐったりとした顔をして「やられた・・・・」とつぶやいた。


「どういうことでしょうか?」


ボクが聞くと「カムーン王国のエリーシャ女王からの親書(しんしょ)だ。エルヴィント帝国の皇帝陛下に、カムーン国親善大使として友好の意を伝えろとの事だ。」と説明してくれた。


なにそれ・・・・


いつのまに師匠が親善(しんぜん)大使(たいし)に?


ボクが呆気にとられていると「エリー、エルミア2人は私と共に来てもらう。私のお付きと判断されたらしい。」2人に向けてそう話す。


「なにそれ!?」エリーが驚いて聞き返す。


エルミアは無表情のままだ。


師匠は2人の顔を見詰め「完全に、皇帝陛下にしてやられたということだ。あの女狐(めぎつね)め・・・・やってくれる」娘のフロリアの前で女狐呼ばわりしていた。


相当怒ってらっしゃいますね・・・


本当にこの国は、変態と策士の国なんですね。


師匠はエリーとフロリアを連れて、イヤイヤながら登城して行った。


ああ、ボクの心の()り所が・・・


がっくりうなだれるボクをよそに、フロリアは嬉しそうな顔をしてボクの腕に抱きついた。


昨日のキャラは、どこへ行ってしまったのですか?


むしろ、昨日のが演技で今のが()ですか?


「それでは、どちらに行きましょう?」


やけくそ気味にそう言うと「私は、お城と魔術学院以外に外出できません。今日、こうして迎賓館へお迎えに上がれたのも初めての事です」と重い話をしだした。


えっと・・・可愛そうな子なんだね・・・・


そうか、グイグイ来るから忘れてたけど、皇女なんだもんね。


勝手にどこか行く事なんて、出来ないよね・・・


傍にいるレオンハルトに聞いてみる。


「レオンハルトさん、お城の中ならどこへ行ってもいいのでしょうか?」


ボクが聞くと「黒巫女様が俺様の名前を!!親父!お袋!!俺様にもついに春が!!」と叫んでいた。


ああ、本当に変態だ。


キモイキモイキモイ・・・


呪詛を振りまきながら、傍にいる別の騎士に聞く。


「はい、城内ならば大丈夫でしょう。」


丁寧に教えてくれた。


うん、この人は普通の猫耳おじさんだ。


よかったよかった。


ボクは帯剣こそしていないが、いつもの戦闘服を着ている。


さすがに3日連続ドレスじゃなくてよかった。


コルセットに殺されるかと思ったんじゃよ・・・・


フロリアに向き直り話し出す。


「ねぇ、フロリア・・・・様。」


ボクが呼びかけると「カオル様。リアとお呼びください。私とカオル様の仲ではありませんか。」と言われた。


どんな仲ですか?


昨日会ったばっかりですよね!?


ああ、こういうところアーシェラにそっくりだ。


「ゴホン」と咳払いをして「り、リア。それじゃぁお城を案内してくれない?ボク、お城とか謁見で1回行っただけでほとんど初めてなんだ」そう告げるとリアは嬉しそうにした。


「それはもちろんですわ!ああ、カオル様の初めてを私が・・・・」


キラキラと遠くを見るような目をしていた。


あれ・・・なんか、たまに見る師匠と同じ雰囲気が・・・・・


気のせいかな?


「それじゃぁ、お城に行きましょうか。騎士さんお先に行きますね」


そう言って、リアを抱きかかえる。


「キャッ!」


驚いたリアが声をあげたが、気付かないフリをして飛翔術を発動させる。


意識が遠くに行っているレオンハルトと騎士達を置いて、お城へ飛んで行く。


いちいち歩いて、めんどくさい挨拶するのもいやだしね。


「ねぇリア」


リアに話しかける。


驚いていたリアだが、空を飛んでいる事にとてもはしゃいでいた。


お城の上空で停止する。


「リア?」


もう一度呼びかけると、こちらに顔を向ける。


「ああ・・・私の王子様・・・・」


そう言って顔を近づけてきたので、顔を振ってなんとか回避した。


だから、王子様じゃないってば・・・


もう一度呼ぶ。


「リーアー?」


すると「・・・・!?な、なんでしょうか?」やっと正気(しょうき)に戻ったようだ。


「どこに行けばいい?」


そう聞くと、お城の東側にそびえ立つ塔を指差した。


最上階部分にはバルコニーがあり、そこへ降り立つ。


上空からも見ていたが、とても眺めがいい。


青白い壁に、青い屋根が特徴的なこの帝都。


遠くには海も見える。


なるほど、岩塩の産地かと思ったけど海水から塩を作っているのか。


良い国だな。


馬車に乗っていて気付かなかったけど、防壁に囲まれて巨大な防壁都市だ。


そりゃ50万人もいるんだ。


これだけ大きいのもわかるね。


リアをそっとバルコニーに下ろす。


名残惜しそうに離れると、嬉しそうな顔を見せてくれた。


普通にしていれば可愛い子だよね。


「カオル様。私、初めて空を飛びました。」


頬を赤くしたリアがそう話す。


「気持ち良かったでしょ?ボクも好きなんだ」


そう答えると、耳まで真っ赤になっていた。


ん?


何か変な聞き方したかな?


まぁいいか・・・


バルコニーの手すりに掴まり、城下を見下ろす。


壮観(そうかん)だ。


多くの人々が暮らす場所。


ここからは距離があり、その喧騒(けんそう)は聞き取れないがみな生き生きとしていた。


「良い国だね」


そう言うと「はい。私も自慢に思います」と返してくれる。


ボクは気になっていた事を聞いてみる。


「リアはずっとお城に住んでいるの?」


そう聞くと「はい。私は皇女ですから・・・」寂しそうにそう答えた。


やっぱり皇女だと大変なんだろうな。


自由に外に出れないのか。


「リアは外へ行きたい?」


聞きづらい事だけど聞いてみた。


しばらく沈黙し「はい・・・」と小さな声で話した。


ボクとは違うんだね・・・・


ボクは、ずっと家から出れなかった。


同級生や、周りの大人の視線が恐くて・・・ずっと家に引き篭もっていた。


今は・・・・大丈夫だけど。


「ごめんね、変な事を聞いて。」


ボクが謝罪をすると「いいえ。いいんです」と笑顔を向けてくれた。


嬉しくなり、微笑み返す。


しばらくバルコニーから景色を眺めていた。







リアの案内で塔の中へ。


この塔は普段からあまり使われておらず、今は倉庫として利用しているようだ。


クルクルと回るように螺旋(らせん)階段を降りて行く。


要所要所に部屋があるのだが、扉も無く室内は雑踏(ざっとう)としていた。


ある部屋を覗いた時に、キラリと光る物を見つける。


リアを呼びとめ近づいてみると、大きな黒い鉄の板だ。


なんだろこれ?


リアに聞いてみる。


「ねぇリア、これなんだかわかる?」


リアは「黒曜石(こくようせき)の鉄板ですね。」と教えてくれた。


えっと・・・・


「黒曜石って火山岩だよね?それが鉄板・・・・?」


首をかしげているボクにリアが優しく説明してくれる。


「はい。黒曜石を錬金術で加工し、鉄に変える事が出来るそうです。」


ほほー!


すごいな錬金術!


初めて聞いたよ。


「リアは本当に博識だね。尊敬しちゃうよ」


ボクはニッコリ笑ってリアを見詰めると、リアは顔を真っ赤にしてモジモジした。


それにしても黒曜石か・・・う~ん・・・・欲しいな。


聞いてみよう。


「ねぇ、リア。これってもらえたりしない?」


思い切って聞いてみる。


「ええ、ここには使われていない物しか置いてありませんから大丈夫かと。お母様には私から話しておきますね」


快く承諾してくれた。


言ってみるもんだ!


「ありがとう!」


嬉しくなってリアを抱き締める。


「ボン!」と、音がするかと思うくらい真っ赤になったリアは、ボクの腕の中で固まっていた。


あ・・・つい、いつものクセが・・・・


「ご、ごめんね・・・」


慌てて離して謝罪する。


「い、いえ。むしろもっと・・・」


顔を赤くした2人はモジモジとしていた。


気を取り直して、アイテム箱を出す。


その様子を見ていたリアが「やはり、カオル様は高位の魔術師なのですね」と言っていた。


「珍しいものでもないみたいだけどね」と答える。


アイテム箱は、魔術師はみんな持ってるみたいだし。


黒曜石の鉄板を持ち上げてアイテム箱にしまう。


3枚ほどあったので全てしまった。


フフフ・・・・これで短剣でも作ろう。


黒い刀身・・・・カッコイイかも・・・・・


中二っぽい?


いや、そこがいいんですよ!


返り血とか気にならないし♪


そうだ。


「リアは武器とか持った事ある?」


なんとなく気になった。


皇女様だから、狩りに行く事もあるかもしれないし。


いや、イメージだけど・・・


貴族とか王族って、暇つぶし・・・いや軍事訓練?で狩りとかするって本で読んだし。


「いえ、私は手にしたことはございません」


ふむふむ


「そっか~」


そうだよね。


そんな小さくて細い手だもんね。


持てって言う方が無理があるか。


「じゃぁ、もう1つ質問。黒い装飾品って、不吉だ。とか、そういう意味合いってあるのかな?」


武器がだめなら防具だ!


「いえ、好んで付ける方もいらっしゃいますし、そういった話は聞いた事がございません」


ほほー!


じゃぁ防具に決定ですね♪


ああ、作るのが楽しみだな。


螺旋階段に戻り、リアと2人降りて行く。


途中リアがころびそうになったので、手を引いてあげた。


本当に小さくて細い手だ。


顔を赤くしたリアが、なんだかボーっとしていた。


う~ん・・・どうしたんだろう?


「ねぇリア、大丈夫?」


ボクが聞くと「はい、王子様・・・・」と妖しい目で答えた。


王子様じゃないんですが・・・・


「リア?ボク、王子様じゃないよ?」


いい加減よくわからないので聞いてみる。


慌てた様子で「え!?あの・・・その・・・か、カオル様と言い間違えただけです」顔を赤くしたままうつむいてしまった。


そうなのかな?


なんだか違う気がするけど、突っ込んだらいけない気がする。


よし、聞かなかった事にしよう。


「そっか!」


そう言い笑顔で終わらせた。


なにせ、今年のスローガンは『めんどくさい時は笑顔でかわそう』だからね!


塔を出て中庭へ降りると、慌てた様子の騎士達がボク達に近づいてきた。


「フロリア様、いままでどちらに!?」


ああ、そうかいきなり飛んでっちゃったもんね。


ボクは猫耳おじさんの騎士に「すみません、気持ちよさそうだったので空を飛んでしまいました。今まで、塔のバルコニーでお話をしておりました」と謝罪をした。


猫耳おじさんはボクに向き直り「そうでしたか・・・・いや、大事無くよかったです。」と答えてくれた。


よかった、大事にならなくて。


う~ん、思慮(しりょ)が足りなかったですね。


反省。


その後は、リアに連れられて昼食を取る事に。


案内された部屋には、師匠達が疲れた顔をして座っていた。


「どうしたんですか?」


ボクがそう声をかけると「あの女狐は相変わらず手ごわい。カオル、万が一の時はすぐに逃げるのだぞ」と言って机に伏せた。


珍しい・・・・師匠がこんなに疲れているなんて。


エリーはもう生ける屍状態だった。


エルミアはいつも通り無表情だったので、話しを聞いてみた。


「エルミア、なにがあったの?」


ボクが聞くと「アーシェラ様が思いのほか手強かったのです」と簡素(かんそ)に説明してくれた。


うん・・・きっと激しい舌戦(ぜっせん)を繰り広げたのでしょう・・・・


お疲れ様です。


ほどなくして料理が運び込まれ、そこへアーシェラ様がやってきた。


そしてボクはなぜか、アーシェラ様とリアに挟まれる形で座らされる。


配置おかしくない?


普通に考えれば、ボクは師匠の隣だと思うんだけど・・・・


「あの・・・」


ボクが聞こうとすると「カオルはそこの席じゃ」とアーシェラに先を越される。


う・・・・何も言えなく・・・・・


まぁいいけどね。


その後の食事は終始無言だった。


初めてだ。


誰も話さない食事なんて・・・・


いや、マナー的には正解なのかもしれないけど。


なんというか、味気(あじけ)ない感じ?


料理はとてもおいしいんだけどね。


帰ったら大変そうだなぁ・・・


師匠大丈夫かな・・・


(おごそ)かな雰囲気の中、昼食は終了した。


あ、デザートは美味しかったです。


コーヒーのプティングでしたが、今度作ってみようと思います。


ご意見・ご想などいただけると嬉しいです。

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