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第四十五話 奴隷

昼食会の後、アーシェラの自室から出ると宮廷魔術師のアゥストリに声をかけられる。


「カオル殿!よろしければ、魔術学院に顔を見せに来てはいただけまいか?」


う~ん・・・・魔法の学校ってこと?


ボクが行くと何かあるのかな?


師匠の顔を見ると「行ってきなさい」と言われる。


「わかりました。お伺いさせていただきます」


と伝えると「では、明日の朝に迎賓館へ迎えを送ります」と言われ、スキップしながら去って行った。


いやいや、おじさんのスキップって・・・ある意味怖いですよ。


去って行くアゥストリを見ながらそんな事を思う。


お城の出口に近づき、アイテム箱からエリーとエルミアの剣を出す。


豪華なレイピアをエルミアに。


ボクの作った大剣と・・・・ボクの予備のショートソード(片手剣)をエリーに渡す。


エリーが気付き「カオル、これ私の片手剣じゃない。」と突き返してくる。


だって、あの鋳造品すぐ折れそうでなんかイヤなんだもの。


う~ん、何か策はないものか・・・・


エルミアの顔を見詰める。


ジーっと見詰めているとニコっと微笑んでくれた。


ふむふむ・・・・


エルミアの顔を見ていると、想像が膨らむんだよね。


よし、この作戦だ。


名づけて『金の斧作戦』!!


エリーに目を向け話し出す。


「エリー、あなたが落としたのはこの鋳造品の剣ですか?それとも、このショートソードですか?」


アイテム箱から鋳造品の剣を取り出して言う。


師匠とエルミアもそれを見ていた。


エリーは「これ」と鋳造品を指差して言う。


ボクはニッコリ笑って「なんて正直で可愛い人でしょう。それではこの剣を差し上げます。大事にするのですよ?」そう言ってボクの作ったショートソードを渡す。


ポカンとしていたエリーが「可愛いなんてそんな・・・もう!カオルったら!」と頬を赤く染めてモジモジしていた。


いや、そこじゃなくてボクの作ったショートソードに感動しようよ。


まぁいいか。


その様子を見ていた師匠とエルミアがボクに詰め寄る。


「カオル!エリーばかりずるいぞ!私にもくれるんじゃないのか!」


「カオル様、結納の品で結構です。今ください。」


と勢い良く話し出した。


いや、師匠はわかるけど、エルミアおかしくない!?


ボクは勢いに負けて「じゃぁ、本当に作っておきますので・・・・こ、今度・・・・」と言った。


だって刀持ちとレイピア持ちに、予備のショートソードあげても使わないでしょ?短剣でも作りますよ。


レギン親方の工房だって、ここから飛んで行けばあっという間に着くし。


2人はボクの言葉を聞いて「絶対だぞ!」「楽しみにお待ちしております」と返した。


あ・・・・エルミアの否定してないや・・・・・そのうち話そう。


城の出入り口へ行くと、レオンハルトが待っていた。


ヒマ人なのだろうか?


「お待ちしておりました!さぁ黒巫女様、帝都を案内いたします!俺様に任せれば通好みのあんなところやこんなところへ案内しますよ!」


なぜか自身満々に言われた。


なんなのこの人?


「えっと、師匠が帝都を案内してくださいますので、案内は必要ありません」


きっちりぶった切ってあげました。


うんうん、こういう人はバッサリいってあげたほうがいいよね。


しかし、レオンハルトは挫けない。


「では、我が家へご案内いたしましょう!父も母も既に黒巫女様を迎える準備は・・・あぶしっ!」


話しの途中で師匠が殴った。


うん、さすが師匠。


門番の騎士さんがギョッとした目で見ていたが、いつものことなのだろうかすぐに平然としていた。


レオンハルト・・・・アナタ近衛騎士団副長という上級職じゃなかったのですか・・・・


「カオルはやらんと言っただろうが!」


師匠が久しぶりに怒った。


めずらしい・・・ボク怒られたことないけど。


前に怒ったのは、イーム村の酒場で喧嘩を止めた時くらいかな?


しかし、怒られたレオンハルトは尚も食い下がる。


「俺様は(くじ)けないぞ!黒巫女様とデートするんだ!」


はい?


なんでボクがレオンハルトとデートしなきゃいけないの?


ボクが考えるよりも早く、3人が話す。


「カオルは私の嫁だ!」


「カオルは私の物よ!勝手な事言わないでくれる!」


「カオル様は私が(めと)るのです。これ以上いい加減な事を言うと火炙りにしますよ」


うん・・・・みんなおかしいよ?


特にエルミア、怒ると怖いんだね・・・・気をつけよう・・・・・


さすがに3人に怒られると心が折れたのか、レオンハルトが黙る。


はぁ・・・よくわからない人だ。


師匠達もだけど。


しばらく沈黙が続く。


ボクはここでピンと(ひらめ)いた。


「それではこうしましょう。師匠を倒せたらデートをします」


ボクの提案に驚いたのか、4人がビックリした顔でボクを見る。


ふふふ・・・・仕返しです。


さっきボクも同じような事されたからね。


師匠は驚いていたが、ニヤリと笑って「いいだろう」と答えた。


レオンハルトは少し考えてから「わかった!」と急に元気になった。


そしてエリーがなぜかノリノリで「私も参加するわ!」と言った。


なぜエリーまで・・・・ああ、大剣試したいのかな?


新武器だもんね。


エルミアが考えて「わ、私も・・・」と言ったので、そっと手を繋ぎ「エルミアは傍にいて」と囁くと顔を赤くしてコクンとうなづいた。


だってあぶないじゃん。


師匠なら手加減してくれるだろうけど。


その後、近衛騎士団の訓練場へ行く。


訓練場はお城の中に併設され、数多くの近衛騎士達が訓練をしていた。


聖騎士団と違うのは、武器がレイピアな事と戦闘服が真っ青な騎士服だということだろう。


前の戦闘でも見た装備だ。


しかし、なんで同じ武器にするんだろう?


レイピアなんてすぐ折れちゃいそうなのに・・・


そういえば師匠が言ってたっけ。


「聖騎士団は魔物から人を守るのが仕事で、近衛騎士団は人から人を守るのが仕事だ」って。


なるほど、それなら近衛騎士団が仰々(ぎょうぎょう)しい武器を持たない理由がよくわかる。


訓練をしていた騎士が、訓練場に入ってきたボク達に気付き近づいてくる。


「副長!どうしたんですか?今日は非番のはずでは?それに・・・・」


そこでボク達に目を向ける。


不思議な組み合わせだろう。


剣聖にボクに冒険者にお姫様だもんね。


はたから見たらおかしな集団だよね。


「おう!今から俺様が男を見せるんだ!黒巫女様の為にな!」


と息巻いていた。


いや、ボクのためじゃなくて私利私欲でしょ?


はぁ・・・・まるで、男版『残念美人』だ・・・・


ボクはちょっと疲れてしまったので、隣を歩くエルミアと手を繋ぐ。


細く柔らかい手は、嫌がる事なくボクの手を包み込んでくれた。


落ち着く・・・


なんでこう、人に触れてると落ち着くんだろう・・・


優しい人に囲まれててよかった。


訓練場の一画を借り、師匠とレオンハルトの決闘が始まる。


師匠が負けるわけ無いけど。


使う武器は真剣だ。


怪我をしたらボクが治す。


レオンハルトは曲がりなりにも近衛騎士団副長だし、前の戦いで強い事も知っている。


誤って殺してしまうことはないだろう。


騎士に立会いをしてもらい、決闘が開始された。


「いくぜ!」


レオンハルトが勢いよくそう言うと剣を抜く。


今まで全然気にしてなかったけど、持っている剣がレイピアじゃない。


サーベルだ。


なるほど、アレならレイピアよりも丈夫で長いし、何より戦い方が突きから切り裂く事をメインに変えられる。


でも、武器を替えたくらいくらいで師匠にかなうわけ無いんだけどね。


師匠の戦いかたは臨機応変に変えられるが、基本は()(せん)だ。


相手が仕掛けてきた時に、それを崩して反撃するのが師匠の戦い方だ。


ボクは小さいし力も無いので、(せん)(せん)を狙うんだけどね。


攻撃してくるのを待てないっていうのが最大の理由だけど。


それでいつも師匠に負けるという・・・・どれだけ(こら)(しょう)が無いんだっていう。


まぁボクの話しはいいよね。


対峙し合う2人。


師匠は無行(むぎょう)(くらい)でワザと隙を見せる。


どう仕掛けてくるのかわからいないのか、レオンハルトは焦らずサーベルを下段に構えて隙をうかがう。


伊達(だて)に副長じゃないんだね。


無理して突撃して、瞬殺されると思ってたよ。


膠着(こうちゃく)状態(じょうたい)が長い・・・・・打ち合ったら一瞬で勝負がつきそうだ。


微動だにしない師匠を前に、レオンハルトは汗を流す。


興味本位で見ていた騎士達も、固唾(かたず)を飲んで見守っている。


先に動いたのは、やはりレオンハルトだった。


走り出し、下段に構えたサーベルを直線的に切りあげる。


師匠はバックステップでそれをかわすと切り戻してきたサーベルの背に刀を絡める。


そのままサーベルを刀で絡め取り『巻き上げ』を決める。


自身の手からサーベルが消えた事に驚愕としたレオンハルト。


レオンハルトの後方の地面にサーベルが突き刺さる。


その首元に師匠が刀を当て試合終了。


「くっ・・・参りました」


レオンハルトが悔しそうに負けを認めると、満足そうな顔をする師匠。


応援していた騎士達から驚嘆(きょうたん)の声が漏れる。


師匠がボクの所へ歩いて来たので「お疲れ様でした」と声をかける。


頭をそっと撫でて笑顔を見せてくれた。


うん、やっぱり師匠は強い。


勝てる気が全然しないや・・・・


となりで見ていたエリーが「やっぱり無理ね・・・・勝てる気がしないわ」と、ボクと同じ感想を口にした。


エルミアは相変わらず無表情だ。


興味無いのかな?


いや、ただ感想が無いだけか。


レオンハルトがサーベルを拾い戻ってくる。


「剣聖殿。お願いがあります。」


神妙(しんみょう)な顔をしてレオンハルトが言う。


こんな顔は初めて見た。


「なんだ」


と師匠も真面目な顔に戻り、レオンハルトに振り向く。


「剣を・・・・教えてはいただけないでしょうか」


低く、しっかりとした声でそう話す。


師匠は黙り考えているようだ。


やがて「教える事は構わない。だが、皇帝陛下の・・・いや、剣騎(けんき)の許可を取って来い。私はこの国の人間ではないからな」と答える。


剣騎ってなんじゃろな?


真面目モードだから、邪魔をしないように後で聞いてみよう。


レオンハルトは少し黙って「・・・・わかりました。必ず」と約束をした。


なんだろう・・・やっぱり男は強くありたいのかな?


ボクも・・・大切な人を守れるくらい強くなりたいし・・・・・


そうだよね。


師匠とレオンハルトに近づく。


2人に手をかざし「『浄化』」をかけると、汗や土埃で汚れた衣服がキレイになる。


ボクが師匠にニコッと笑い掛けると、笑顔で返してくれた。


うん、役得だよね♪


タダで美人さんの笑顔を見れるんだもの。


師匠に抱き付こうとしたら、レオンハルトに手を握られる。


くっ!ボクのお楽しみが!!


「黒巫女様!そんなにも俺様のことを!!」


と、目をキラキラさせてボクを見詰めていた。


いや、師匠のついでですからね?


これっぽっちもアナタの事なんて思っていませんから!


いいから手を離して下さい。


キモイキモイキモイ!


呪詛(じゅそ)を込めた目で見つめ、()ややかな笑顔で返すと、師匠が助けてくれた。


ありがとうございます!師匠!!ステキ!!


レオンハルトから手が離れ、師匠に抱きつく。


う~ん・・・良い匂いが・・・・やっぱりバラの匂い袋持ってるのですね?


後で身体検査です。


オシオキしてないし!


とりあえず、今は師匠を堪能しよう。


にゅふふ・・・


ボクが満足そうに師匠に抱き付いていると、エリーが師匠に話しかける。


「ねぇ剣聖様。私ももっと強くなりたいわ」


エリーは師匠を見詰めてそう言った。


師匠はボクから目を上げエリーを見据える。


「ああ、いつでも鍛えてやる。カオルのため・・・・だろう?」


師匠がそう言うと「ちっちがうわよ!私は純粋にその・・・・強くなりたいのよ!」


ツンデレ全開にしていた。


うんうん。


エリーはこうでないと。


ツンデレ1名はいりまーす!


エリーに顔を向け微笑むと、顔を真っ赤にしたエリーはうつむいてしまった。


可愛いにょぉ・・・・


エリーはボクの作った防具を纏っているから、今はミニスカート姿だ。


元から可愛いから、可愛い仕草をするとなおさら可愛く見えるよね。


作って本当によかった。


レオンハルトに別れを告げて練習場を後にすると、騎士達がビシッとした敬礼で見送ってくれた。


う~ん・・・・変態が多いけど、やっぱりカッコイイなぁ・・・


変態だけど。


ドレスの裾を踏まないように、ゆっくりと歩く。


3人もボクの歩幅に合わせて歩いてくれる。


優しいよね。


ボク小さいし・・・・・・


小さいし・・・・ぶわっ


涙が溢れそうだよ!


本当に180cmに成長するんだろうか・・・・・


もう2年くらい身長がかわらないんですが・・・・


お父様、お母様、身長が伸びるように祈っててください。


お城を出て迎賓館へ帰る。


今日も豪華な夕食を出してくれた。


エリーが毒味をして、食事を開始した。


本当になんだか申し訳無い・・・・


エリーは特に気にした感じもないから聞けないけど。


食事をしながら訓練場で聞いた事を聞いてみた。


「師匠、剣騎ってなんですか?」


ボクが聞くと、食事の手を止めて説明してくれた。


「剣騎はな、剣聖と同じようなものだ。カムーン王国には騎士・剣士で優秀な成績を収めた者が剣聖として任命される。エルヴィント帝国では土地柄、騎士だけではなく力のある者が皇帝から剣騎として任命される。」


ふむふむ・・・


「土地柄というのは、魔境が多いから騎士や剣士に限らずっていう事ですか?冒険者でも?」


「ああそうだ。まぁ勲章を受け取り、誰からも認められるような者でなければ成れないがな。」


師匠はそう説明すると、食事を開始した。


ふむ・・・・


じゃぁ、魔境とかダンジョンを攻略しまくれば成れちゃうのか。


すごいな!


「ちなみに、剣騎になると何か良い事あるんですか?」


突っ込んだ質問をすると、モグモグと食べていたエリーが説明してくれた。


「あるわよ。何と言っても名誉ね!あとは国からお金が貰えるわ!一生安泰よ。過去の剣騎なんか、何人もの奴隷をはべらせてまるで後宮のように振舞っていたらしいわ」


エリーの説明に引っ掛かる。


奴隷・・・・


ボクは見た事がないけど、奴隷階級があるの・・・・?


エリーの言葉でうつむいたボクに、師匠がそっと話しかける。


「カオル。私は極力カオルに見せないようにしていたが、オナイユにも娼館がある。あそこにいる者は皆奴隷だ。」


そうなんだ・・・・


奴隷・・・・お金で人を買うという事・・・・


人の命をお金で・・・・


なんて悲しい事なんだろう。


ボクには必要性がわからない。


泣き出したボクの手を優しく握り、話しかけてくれる。


「奴隷に成る者にも、それなりの理由がある。借金を返せない者。悪事を働いた者。両親が奴隷だという理由で、生まれながらに奴隷の者もいる。私達にはどうする事もできない。全ての奴隷を買うか?そんな事は出来ないだろう。カオルが心を痛める気持ちもわかるが、どうする事も出来ないのが現状だ。」


優しく手を握り、そう話してくれた師匠。


ボクにだってわかる。


わかるけど・・・・悲しい。


涙を流すボクに「たとえ制度を変えたとしても、文化は根付いてしまっている。だからカオル。目に映る人だけでも・・・・私達が救えばいいと思わないか?」と微笑んでくれた。


目に映る人・・・・・


たとえ奴隷でも・・・・幸せにって事・・・?


出来るのだろうか・・・・


みんなに受けた優しさを、ボクが同じように与える事が・・・・・


纏まらない考えの中「はい・・・」とだけ返し、ボクはずっと悩み続けた。

















翌朝、晴れぬ気持ちを引きずって目を覚ます。


今日も4人で眠った。


師匠もエリーもエルミアも傍にいてくれる。


ボクはこんなにも優しい人に囲まれている。


でも・・・そうじゃない人だって大勢いるんだよね。


もし、師匠に出会わなければ?


もし、エリーやカルア、エルミアと出会わなければ?


もし、この世界に来なければ・・・・ボクはずっとあの家に1人でいたのかもしれない。


両親が残してくれたあの家で、ずっと誰にも会う事なく・・・・・


怖い。


もうボクは幸せを手にしてしまった。


師匠やみんなと出会い。


やさしさに触れて。


ボクを大切に、大事に思ってくれる人に囲まれて。


手放す事が怖い。


家族を失うのが、とても怖いよ。


溢れる涙を拭うことなく、隣で眠る師匠に抱きつく。


ねぇ師匠?


ボクはこんなにも弱いんですよ・・・


だから・・・ずっと傍にいてください・・・・


ずっと、ずっっと家族でいさせてください・・・


ギュッと抱いて目を瞑ると、そのまま眠ってしまった。


優しい香りに包まれたまま。








それからしばらくしてゆさゆさと起こされる。


静かに目を開けるとエリーと目が合う。


どうやら寝過ごしてしまったようだ。


「カオル大丈夫?目が真っ赤よ?」


エリーにそう言われ、ゆっくりと起き上がると既にみんな起きていた。


「おはよう。ごめんね、起きるの遅くなっちゃった」


そう言うと「カオルが寝坊するなんて、初めてだな」と師匠が笑っていた。


ボクは師匠に微笑み返し、洗面所へ。


顔を洗い歯を磨く。


鏡に映る自分の顔は、泣き腫らしたように目元が腫れていた。


こんな顔でいたら、みんなに心配かけちゃうよね。


魔法をイメージして回復魔法をかける。


魔法が発動すると、腫れた目元はいつも通りに戻った。


うん。


奴隷制度は・・・・今はどうする事も出来無いけど、いつかボクに出来る事をしよう。


そう心に決意し、みんなのもとへ。


そこには迎賓館のメイドさん達がいた。


えっと・・・なんで?


50代の猫耳族のメイドさんが、妖しい目をこちらに向けてくる。


う・・・・あのコルセットの悪夢が蘇る。


なんかいやな予感・・・・・


案の定ボクは剥かれ、下着姿の上にコルセットを締められる。


だからルーンが見えちゃうんだってば!


必死に隠し、締められるコルセットと戦う。


メイドさんが扉から入って来ると、手には赤いドレスが・・・・


今日もこれですか!?


慌てるボクを余所に、お着替えタイムが始まった。


師匠達は楽しそうにその光景を見ている。


誰も助けてくれないのですね・・・


おもちゃの様に扱われ、今日も綺麗にセットされてしまった。


昨日の黒いドレスとは対照的な真紅のドレス。


相変わらず、すっごい高そうだ。


赤いショートヒールの靴に、髪はポニーテールにされてしまった。


薄い化粧を施され、姿見に映るその姿はどこからどう見ても女の子・・・・


バカナ・・・・


そういえば、メイド服の時もいつのまにか女装に慣れてしまっていた。


ああ、ボクこういう人なんだ・・・


もうとっくにドナドナされてしまっていたんですね・・・・師匠に。


笑顔の3人に近づき、それぞれ頬に口付ける。


少し離れ、くるっとターンしてスカートの裾を摘み会釈をする。


「おまたせしました、ご主人様」


メイド服でやった挨拶だ。


その場にいたメイドさんや師匠達は、一瞬呆けてそれから頬を赤く染めていた。


イタズラ大成功だ。


ニコッと笑って「それでは行きましょうか」と言い扉から外へ出て行く。


3人は遅れてついてくると、急にベタベタボクに触り出した。


いや、セクハラですよ?


嬉しいけど、セクハラなんです。


誰ですか!?お尻を撫で回しているのは!


やりすぎたかも・・・・


食堂へ行き、朝食を食べているとアゥストリの使いという人が来た。


ああ、そういえば魔術学院に来て欲しいとか言っていましたね。


食事も済み出掛けようとすると、今度はレオンハルトの使いという人がやってきた。


師匠に近衛騎士団の訓練をお願いしたいと言う。


師匠と顔を見合わせて、師匠はそちらに行く事になった。


エリーも師匠について訓練をすると言い、魔術学院へはボクとエルミアが行く事になった。


それぞれ迎賓館の前で別れ向かう事に。


寂しかったので、師匠とエリーに抱き付くと抱き締め返してくれた。


「カオル愛しているぞ」と師匠が言い「カオルは私の物なんだからね!か、帰ってきたらその・・・いいわね!」とツンデレ全開エリーさんが言う。


ボクはニコッと微笑み2人を見送る。


師匠とエリーの気持ちが純粋に嬉しかった。


エルミアと手を繋いで馬車に乗り込むと、御者が馬車を走らせる。


魔術学院へ向けて。


ご意見・ご想などいただけると嬉しいです。

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