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龍の血を引く者  作者: また太び
4章 林間学校
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リヴァイアサンが見た最後の王の姿と故郷。

「なぁリア」


「なんでしょう、紅哉」



リアは誰もいない滝の下の川を泳いでいた。魚さながらの速さで泳ぐリアは生き生きとしていた。

そんなリアに尋ねたい事があって紅哉はリアを探していた。



「お前が要塞崩しでやられる時何を言いかけたんだ?」


「あぁ、あれですか。あれはニルの姿に驚いたのです」



リアは川から上がると、紅哉の近くに座る。

一瞬だけリアの胸に目が行ったが、紅哉はすぐに目を離した。今の紅哉の行動にリアは気付かなかったようだ。



「た、確かニルのあの姿って聖龍のころなんだろ?」


「ニルから話は聞いたようですね。ええ、その通りです。あの姿はニルが邪龍になる前の姿。知っていますか紅哉、私はこう見えて龍族の中では弱い方なのですよ?」


「え!?いや、お前の伝承って神も恐れた龍だろ?それが弱い方って…」


「神が恐れたのは私の力。冥界に繋がるゲートを開けること。私自体はそこまで強くありません。ニルから聞いていると思いますが、私は毎日寝て過ごしていましたから、龍とは余り喧嘩はせず、戦闘能力は低いのです」


「ニルもそんな事言っていたな。お前は寝てばっかりだって」


「私の他にミドオルガズという蛇龍がいるのですが、彼も寝てばかりでしたね。龍の里が滅びる時に目を覚まし、神を幾人も葬った強者ですけどね」


「確かでっかい龍なんだよな?」


「ええ。彼は私と同じくらい大きい。私のあの姿も元に比べれば小さいどころか、豆粒ですが、彼もそれほど大きかった。大きいというか、長い、の言葉が合っているでしょう」



リアはこういう1対1の時は結構饒舌だ。舞香がいるときは基本舞香に喋らせて、黙っているのが主義だが、実は結構おしゃべりなのかもしれない。



「ニルは龍の里では最強の龍戦士として君臨していましたが、グリンデルとの戦いで負けて以来すっかり弱くなってしまった。あの邪龍になってしまったのもある意味グリンデルの存在が大きい。我らの父バハムートは困っていた。龍の里の治安が悪くなっていくことに」


「バハムート……」


「ある龍が龍の里を出て行ったと里に噂が広がった。聖龍ならともかく、その龍は邪龍だった。バハムートはこの事態に焦りを覚えた」



リアは思い出を語るように単語単語を区切って話す。彼女は知っているのだろう、龍の里が滅びた理由を。



「龍の里に君臨する最強の龍戦士が集められた。それはバハムートを守護する聖龍でもある。でも、遅かった。遅かったのだ。一体の邪龍によって我らは龍の里を捨てることになった」



リアは紅哉に話しているというよりも、記憶を辿ってただ独り言を呟いているようにも見える。



「一体の邪龍は大勢の人間を殺した。それは瞬く間に神へ知れ渡り、その邪龍は殺され、ひっそりと暮らしていた龍の里にも影響を及ぼした。それは神の降臨。神は我ら龍の里に足を踏み入れた」


「なんでだ…?」


「龍が人間界に過度な影響を及ぼしたから、だと思います。そして門番の聖龍は神を龍の里に入れる事を拒んだ。そしてその行為を敵対と見なした神が」


「殺したのか……!」


「ええ。それからは総力戦だった。邪龍はここぞとばかりに暴れ、そして殺されていく。もちろん神も死んだ。バハムートは決断を下した。ここを放棄することを。表ではアジダハーカが聖龍に代わり、神を退ける。私もその時だけはアジダハーカと手を組んで神を撃退していた」


「ん?あいつって邪龍だろ?好き勝手暴れるんじゃないのか?」


「いえ、アジダハーカは賢い。邪龍をまとめるのも彼でした。ニルも彼には敵わず、敵対する事だけは避けていた。そしてバハムートは自分の宝庫に行き、宝玉を持ってきた。それは時代を超えるものらしい。バハムートは言った、これを使って逃げろと」


「なぁ、バハムートはどうしたんだ?」


「彼は天を覆い尽くす天使と神を相手に時間を稼ぎに表へ出た。彼の一撃は神すらも受け切る事が出来ない」



ニルが使ったあの技も相当威力が高かった。太陽の光すら呑み込むあの力を全力で放ったらどうなるのだろうか。



「ニルが使った聖なる審判もバハムートが使っていた技。しかし、あれを出来る龍族はいないはず。まぁそれは置いておきましょう」



リアはそう言って話を続けた。



「王の間に生き残った龍族みんなが集められた。そこでバハムートの右腕のインドラが宝玉を使う事を決意した。宝玉の光は王の間を満たし、次々と龍族が消えて行ったのを私はよく覚えている。次に目を覚ますとどこかの海に私はいた。知らない世界に、龍の里よりも汚い海に私は冷静さを欠いた。しかし、やることは変わらなかった。ただ私はその海で眠り続けた」



リアはここまでです、と言った。どうやらリアの物語はここで終わったらしい。



「私はですね。舞香のパートナーになれて幸せですよ。人間は面白い。そして世界は広い。私は本当に海の底で眠っていて何をしていたのでしょうね…」



リアはそう言って川へ飛び込んだ。人間の世界を見て、己が人間の姿で行動し、彼女にはどのように世界が見えたのだろうか。

海よりも大きいと言われた龍は、今やこうやって幸せそうに水を泳ぐ。

上から聞こえるニルの声もとても楽しそうだった。



「リア、もっとこの世界を楽しめよ!」


「ええ。そうしましょう。もっと世界を楽しむのはあと3年か、4年後でしょうね」


「それはどういうことだ?」


「私の口からは言えませんね。来たるべき時が来たら舞香が自分から話すのではないでしょうか。それまで兄として待っておくことですね」



リアは深く潜ると、上がってくることはなかった。つまり、これで会話は終わりということなのだろう。

紅哉は立ち上がって上に戻って行ったのであった。


最初に言っておきます。ファーヴニル、リヴァイアサンが神話で出てきますが、龍の里はそれよりも前。つまり遥か昔の地球に生きていたころの話です。上の小説でも書かれている通り、宝玉によって神話が描かれた時代に飛ばされた、という設定です。深くツッコミを入れてはいけませんよ?

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